第40話:【二重唱】完成! 超戦略兵器『ダブルくっ殺バスター』
夜明けとともに、大地を覆い尽くす地鳴りが響き渡った。
国境の平原の向こうから現れたのは、神聖グランベルス帝国の本隊――十万の大軍勢だった。
無数の槍衾、黄金の旗印、そして帝都の宮廷魔導師たちが一斉に展開した戦略級儀式魔術陣。空が赤く染まり、隕石を落とさんばかりの魔力圧が平原を圧迫する。
「全軍、突撃ぃぃぃっ! 邪神の魔窟を滅ぼし、シルフィア様とヴァルキリア様を奪還せよ!!」
車椅子から白銀の馬へと乗り換えたユリウスが、聖剣を掲げて号令をかける。
十万の軍勢が、津波の如く押し寄せてきた。
それに対し――。
研究所の特設砲撃プラットフォームには、二門の砲身が並列に連結された、新たな決戦兵器が据え付けられていた。
形式番号『KC-Twin』――超戦略決戦兵器『ダブルくっ殺バスター』。
その二つのシートには、並んで座らされた二人の美姫――シルフィアとヴァルキリアの姿があった。
「ゼノ……! 本当に撃つ気なのか!? 相手は帝国軍十万なのだぞ!?」
シルフィアが青ざめて叫ぶ。
「撃つとも。ただし、安心したまえ。この砲は殺傷兵器ではない。『超高圧感情パルスによる広域武装解除兵器』だ。帝国兵の命を奪うことなく、彼らの武器、鎧、城壁、魔導具だけを綺麗に分解・無力化する設計になっている」
「武器の……無力化……?」
ヴァルキリアが、まだ涙目の残る顔を上げて呟いた。
「そうだ。誰も死なせないための砲撃だ。そのためには――君たち二人の心を一つにした、最高の『ハーモニー』が必要なのだよ」
俺は白衣を翻し、二人の前に一枚の写真と、小さな皿を差し出した。
「シルフィア君。君の誕生日のためにグランベルス公爵が手配した幻の紅茶葉、先ほどオーク兵たちが麦茶の代わりに全部沸かして飲みました」
「な……っ!? お父様の幻の紅茶があぁぁぁっ!?」
シルフィアの顔が怒りと悲しみで沸騰する。
「そしてヴァルキリア君。君が先ほどあんなに美味しそうに食べていたプリン・ア・ラ・モードの最後のサクランボ、バールック大佐が一口でパクリと平らげたよ」
「サクランボ……! 私が最後に一番楽しみに取っておいたサクランボがあぁぁぁっ!?」
ヴァルキリアの目角から再び大粒の涙が吹き出した。
「二人とも、怒りを! 羞恥を! プライドの叫びを、今ここに解き放ちたまえ!!」
シルフィアとヴァルキリアは顔を見合わせ、互いに頷き合った。
失われた紅茶の誇りと、奪われたサクランボの無念。
二人の魂が、奇跡的な共鳴を果たす!
「「オークの分際でぇぇぇっ! 私の誇り(サクランボ)を返せぇぇぇっ!! くっ……殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピ――ッ!!!!
【ツインPCE共鳴:500,000クック(極限調和Ω波)を検知!】
【ダブルくっ殺バスター――臨界発射!!】
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!
砲口から放たれたのは、平原を丸ごと飲み込むほどの、超極大の純白と黄金の二重螺旋光線だった。
光の奔流は、押し寄せる十万の帝国軍の頭上を一瞬で通過した。
――カラン、コロン……。
次の瞬間、戦場に響き渡ったのは、爆発音ではなかった。
十万の兵士たちの手から、聖剣が、槍が、弓が、そして身につけていた重装甲冑が、留め具を綺麗に外されて一斉に地面に転がり落ちる音だった。
「「「………………え?」」」
十万の帝国兵たちが、自分たちの身体を見下ろした。
怪我人は、一人もいない。
ただ――全員が鎧と武器を失い、シャツとステテコ一枚の無防備な姿で、平原に取り残されていた。
先頭にいたユリウスもまた、聖剣を失い、包帯パンツ一丁の姿で馬の上で固まっている。
「て、敵の超兵器が……我らの武器と鎧だけを……一瞬で消し去っただと……!?」
「戦えない……! パンツ一枚じゃ戦えないよぉぉぉっ!!」
戦意は完全に喪失した。
十万の大軍が、一滴の血も流すことなく、完全に無力化されたのだ。
「ガハハハハハハハハッ!!」
要塞の城壁の上で、バールック大佐が大戦斧を天へと突き上げた。
「大勝利だぁぁぁっ! 野郎ども、帝都へ進撃するぞ!!」
「「「うおおおおおおおおっ!!」」」
人類最強の帝国軍をパンツ一丁にして無力化したオーク軍は、ついに帝都ルミナリアへ向けて、堂々の大行進を開始したのだった。
(第4章・完/第5章・最終決戦へ続く)
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