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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第一章 ダンジョン管理AI(たぶん美少女)が俺の配信に現れた

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第9話 なんか学校で急に有名人になっていた

 隠しルート探索は、 最終的に大騒ぎになった。


 高純度魔力結晶。


 《蒼晶花》。


 見たこともない希少素材。


 さらには、 通常第三層へ出現しない《ブリザード・フェンリル》の討伐。


 配信は大炎上。


 SNSも大炎上。


 切り抜きも大量発生。


 結果、協会はめちゃくちゃ頭を抱えた。


「なんで第三層からA級素材が出るんですか……」


「なんで未確認ルートが存在するんですか……」


「なんでS級が地形変えてるんですか……」


 後から知ったことだが、監視していた職員が、ずっと遠い目をしていたらしい。


 最後の方なんて、完全に魂が抜けてたようだ。


 そんな協会の職員たちの混乱を他所に俺は大金を手にしていた。


 換金額がとにかくすごかった。


 素材だけで、普通に高校生が見る数字じゃなかった。


「うわ」


『今回の探索収益は高水準です』


「バイト辞められるかもしれん」


『推奨します』


 ナナは嬉しそうだった。


 シオンは、なぜか機嫌が良かった。


 ひよりは、ずっと「すごいです先輩……」って言ってた。


 そして翌日。


 さすがに今日は普通の日常へ戻る。


 そう思っていた。


     ◇


「……帰りたい」


 教室へ入った瞬間、そう思った。


 視線。


 めちゃくちゃ視線。


 昨日まで空気みたいな扱いだったのに、今日は違った。


 ざわざわしてる。


「おい、来たぞ」


「マジで本人?」


「配信のやつだろ?」


「AIと喋るって本当なのか?」


 なんか増えてる。


 人、人、人……さらに人。


 俺の席の周囲に、なんか人がいる。


 怖い。


『注目度上昇を確認しました』


「実況しなくていい」


 イヤホン越しにナナが答える。


『現在、マスターは学校内において高注目対象です』


「嫌な言い方するなぁ」


 席へ座る。


 でも。


 周囲の視線が消えない。


 むしろ増えた。


「大豆島くん!」


「昨日の配信見た!」


「ナナちゃんって本当にAIなの!?」


「S級探索者と知り合いってマジ!?」


 質問が飛んでくる。


 朝からエネルギー高いな。


「たぶん」


「返事ゆるっ!?」


『事実確認:

 シオン個体との接触を確認済みです』


「ナナまで返事するな」


 女子達がきゃーきゃー騒ぐ。


 なんか、すごい疲れる。


 男子の方からも視線を感じた。


「お前、なんで急に有名人になってんだよ……」


「知らん」


「昨日まで寝てるだけだったじゃん」


「今も眠い」


「そこは変わんねぇのかよ」


 その時。


 教室後方がざわついた。


「……え?」


「うそ」


「綺麗……」


 なんだ?


 と思って振り返る。


 そして。


「うわ」


 シオンだった。


 黒コート。


 長い青髪。


 学校にいる存在感じゃない。


 教室の空気が変わってる。


 シオンが、楽しそうに笑った。


「凪くん、おはよう」


「なんでいるんですか」


「迎えに来たの」


「学校に?」


「ええ」


 ざわっ。


 教室中が揺れた。


【氷姫】。


 知らないやつの方が少ない。


 そんな人が、普通に教室前へ来てる。


「ほ、本物……?」


「芸能人みたい……」


「ていうか大豆島と知り合いなの!?」


 知らん。


 俺も聞きたい。


 シオンが俺の机へ軽く腰掛ける。


 距離が近い。


『警告』


「出た」


『S級個体がマスターへ接近しています』


「学校でもやるのかそれ」


 シオンが吹き出した。


「ふふっ」


 完全に楽しんでる。


「お昼、一緒にどう?」


「なんでです?」


「監視よ?」


「絶対違う」


「バレた?」


 バレる。


 教室がざわざわしてる。


 特に女子。


 なんか視線が痛い。


 その時。


「せ、先輩っ!」


 ひよりだった。


 教室へ飛び込んできた。


 息切れてる。


 顔が赤い。


 そして。


 両手でお弁当を抱えていた。


「あ」


 ひよりが、シオンを見て止まる。


「……もう来てる」


「こんにちは、ひよりちゃん」


「こんにちは……」


 なんか負けそうな声だった。


 ひよりが、ちらっと俺を見る。


 その後、ぎゅっと弁当箱を抱きしめた。


「せ、先輩! 今日、お弁当作ってきました!」


 教室が静かになる。


 そして。


 数秒後。


 爆発した。


「ええええええ!?」


「手作り!?」


「大豆島に!?」


「彼女!?」


「違います!!」


 ひよりが真っ赤になる。


 耳まで赤い。


 小動物みたいに慌ててた。


「ただ、その……先輩、いつも適当なご飯なので……」


「へー」


「へーじゃないです!」


 ひより、最近これ多いな。


 シオンが面白そうに笑う。


「手作りなんて偉いわね」


「ひゃっ!?」


 シオンが近い。


 ひよりが硬直した。


「でも残念。今日は私も準備してるの」


「え?」


 次の瞬間。


 校庭側から歓声が聞こえた。


「うおおおお!?」


「なにあれ!?」


「キッチンカー!?」


 いや待て。


 嫌な予感する。


 窓から見る。


 校庭。


 高級そうなキッチンカー。


 しかも複数。


「……なにあれ」


「ランチよ?」


「学校に?」


「ええ」


 シオンが微笑む。


「凪くん、どっちがいい?」


 ひよりが固まる。


 教室中も固まる。


 なんだこれ。


『確認しました』


「ん?」


『現在、昼食選択イベントが発生しています』


「ゲームみたいに言うな」


『なお』


 少し間。


『ナナは物理的なお弁当を作成できません』


 その声が、ほんの少しだけ、淋しそうだった。


 一瞬。


 ひよりもシオンも黙る。


 なんか、空気が微妙になった。


「……別に」


「ん?」


「ナナとは普通に喋ってるだけで楽しいけど」


 すると、イヤホン越しに小さく電子音が鳴った。


『……処理負荷の軽減を確認しました』


「お前それ、嬉しい時の音だろ」


『否定します』


 早い。


 でも、なんか機嫌良さそうだった。


 一方、ひよりが弁当を抱えたまま、ちょっとしょんぼりしている。


 シオンは余裕の笑み。


 教室は大騒ぎ。


 そして俺は。


「……昼飯くらい静かに食いたい」


 心からそう思った。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。

小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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