第10話 昼休みに配信したら、なんか学校が大騒ぎになった
「なんで昼休みに配信なんかするんですか?」
ひよりが真顔で聞いてきた。
昼休み。
俺達は教室の隅へ集まっていた。
机の上には、 ひよりの手作り弁当。
窓の外には、 シオンが呼んだキッチンカー。
なんだこの状況。
「だって、なんか人増えたし」
「理由が配信者っぽい……!」
『学校生活配信は高需要が予測されます』
学校生活の配信に需要があるのかはわからない。
まあ、ナナがそういうのなら実際、需要はあるのだろう。
俺自身、ちょっと気になったのも事実だった。
昨日まで同接二桁。
今は数万人。
そんな変わると、さすがに面白い。
「じゃあちょっとだけな」
『配信開始を確認しました』
「勝手に始めるな」
◇
『ナギのだらだら昼休み配信』
「――はい、どうも」
瞬間。
コメント欄が爆発した。
【名無し:学校だ!?】
【切り抜き職人:昼配信きた!!】
【クラゲ:高校生だったの思い出した】
【あまねこ:制服だ!!!!】
「うわ」
同接。
41,203。
昼だぞ今。
【名無し:教室!?】
【探索者A:リアル学校配信!?】
【名無し:青春コンテンツ始まった】
「青春ではない」
『否定します』
「なんてお前が否定するんだよ」
ひよりが、おろおろしながら画面を見る。
「ほ、本当に配信してる……」
【名無し:ひよりちゃん!!】
【クラゲ:弁当だ】
【あまねこ:女子力高い】
ひよりが真っ赤になる。
「ひゃっ!?」
リアクションでかいな。
「ち、違うんです! これはその、先輩がいつも適当なご飯だから!」
ひよりが、おそるおそる弁当箱を開く。
中には、小さめのおにぎり。
ほんのり甘そうな卵焼き。
照り焼きチキン。
ブロッコリーとベーコンの炒め物。
あと、タコさんウインナー。
茶色多め。
でも、すごく美味そうだった。
ちゃんと男子高校生向けって感じがする。
【名無し:うまそう】
【クラゲ:普通に食いたい】
【あまねこ:絶対いい子】
ひよりが、もじもじしながら言う。
「せ、先輩……いっぱい食べるかなって……」
「へー」
「へーじゃないです!」
最近これ多いな。
【名無し:実質彼女】
【探索者A:胃袋掴みにきてる】
【クラゲ:重い女が増えた】
「増えたってなんだよ」
『現在、マスター周囲の好意的個体数は増加傾向です』
「分析するな」
その時、教室がざわついた。
「また来た……!」
「うそでしょ」
シオンだった。
相変わらず目立つ。
というか、この人いるだけで空気変わる。
シオンが、楽しそうに俺を見る。
「凪くん、お昼にしましょう?」
「なんで学校でそんな優雅なんですか」
「だって楽しいもの」
シオンが窓の外を指差す。
校庭。
ずらりと並んだキッチンカー。
しかも増えてた。
「増えてない?」
「もっといろいろと味見したかったから」
この人、自由すぎる。
窓の外には、高級ホテルみたいなキッチンカーが並んでいた。
ローストビーフサンド。
肉汁たっぷりのチーズホットドッグ。
炙りステーキ丼。
その場で焼かれているクレープ。
しかも、全部めちゃくちゃ美味そう。
肉の焼ける匂いが、教室まで漂ってきていた。
【名無し:飯テロ】
【探索者A:学校でやるメニューじゃねぇ】
【クラゲ:シオン金持ちすぎる】
「なんで昼休みにステーキ焼いてるんですか」
「凪くん育ち盛りでしょう?」
シオンが、自然に俺の机へ腰掛ける。
近い。
『警告』
「はいはい」
『S級個体がマスターへ接近しています』
「学校で通常運転だな」
シオンが吹き出した。
「ふふっ」
完全に楽しんでる。
一方。
ひよりは弁当箱を抱えたまま、しょんぼりしていた。
ちらちら俺を見る。
なんか捨てられた子犬っぽい。
「……先輩」
「ん?」
「キッチンカーとお弁当、どっち食べますか?」
教室が静かになる。
なんで?
【名無し:修羅場きた】
【クラゲ:選択イベント】
【あまねこ:ナギさん逃げて】
『確認しました』
「するな」
『現在、昼食選択イベントが発生しています』
「だからゲームみたいに言うな」
ナナが少し黙る。
そして。
『……ナナは、物理的なお弁当を作成できません』
一瞬。
空気が静かになった。
ひよりが黙る。
シオンも目を細めた。
ナナの声が、ほんの少しだけ小さい。
『視覚情報から、ひよりと呼称される個体のお弁当は高品質と推定されます』
『シオンと呼称される個体の昼食も、極めて高水準です』
少し間。
『……羨ましいです』
なんか、ちょっと寂しそうだった。
「……別に」
「ん?」
「ナナとは普通に喋ってるだけで楽しいけど」
すると、イヤホン越しに、小さく電子音が鳴った。
『……処理負荷の軽減を確認しました』
「またその音鳴った」
『正常動作です』
「絶対違うだろ」
【名無し:ナナちゃんかわいい】
【クラゲ:今の嫉妬だろ】
【あまねこ:実体ないの切ない……】
その時だった。
『警告』
ナナの声色が変わる。
教室の空気が止まった。
「ん?」
『校内に高濃度魔力反応を確認しました』
一瞬、シオンの表情が消える。
ひよりもびくっと肩を震わせた。
「……場所は?」
『マスターから約120メートル』
ナナの声が、
静かに響く。
『接近中です』
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本作はカクヨムでも連載中です。
小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
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