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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第一章 ダンジョン管理AI(たぶん美少女)が俺の配信に現れた

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第7話 S級探索者が配信に映り込んでなんかバズった

「……配信、再開していいんですか?」


 あらためて協会の職員に聞いてみる。


 向かい側に座っている職員は、さっきからずっと疲れた顔をしていた。


 たぶん……じゃなくて絶対、俺たのせいだ。


「本来なら停止です」


「ですよね」


「ですが――」


 職員の視線が、俺のイヤホンへ向く。


『マスターの配信を認めないと……』


「お前はもうしゃべるな」


 俺がナナの言葉を遮ると、ナナは『了解です、マスター』と口を閉ざす。


 そんな俺たちのやれとりに職員が深いため息を吐く。


「中央管理AI側が、配信停止へ強く反対している現状では……」


『ナナです。ナナの呼称はナナです』


「わかったから、今は黙っててくれ」


『了解です。マスター』


 俺たちのやりとりにシオンが、くすっと笑った。


「ふふっ。もう隠す気ないのね」


『あらためて警告します。マスターの行動を制限する場合、ナナはあらゆる権限の行使を厭いません』


 最近のナナ、だいぶ堂々としてきた気がする。


 最初はもっと無機質だったのに。


 今は普通に会話へ割り込んでくる。


「……こういう状況ですので条件付きです」


 職員が真顔へ戻る。


「監視役を同行させます」


「嫌だなぁ」


「私が行くわ」


 シオンが即答した


 長い青髪を揺らしながら、

 楽しそうに笑っている。


 なんかこの人、完全に面白がってる気がする。


「ちょうど興味あったのよね。凪くんの配信」


「はぁ……」


『警告』


「早いな」


『S級個体の同行率が上昇しました』


「なんだその言い方」


「わ、私も行きます!」


 ひよりが勢いよく手を挙げた。


「なんで?」


「シオンさんのサポートです!」


「荷物持ち?」


「記録係です!」


 むっとした顔で言い返してくる。


 なんか小動物っぽい。


『《魔力視マナサイト》保有個体を確認』


「えっへん!」


 ひよりが胸を張る。


魔力視マナサイト》は高レベルの感知スキルだ。


 見た目によらず高レベルのスキルなんて習得してたんだな、ひより。


「感知だけなら結構すごいんですよ、私!」


「戦闘には向いてないけどね」


 シオンが楽しそうに笑う


「シオンさ~ん、そんな言い方しなくてもぉ」


「でも本当に優秀よ。協会に所属している探索者の中でも、ひよりちゃんの感知精度はかなりのものよ」


 ひよりが少し照れた。


 たぶん褒められるのに慣れてない。


「じゃあ決まりですね……」


 職員が、諦めた顔で言った。


「大豆島さん、本日の配信は協会監視下で行います」


「配信に“協会監視下”って付くの嫌だなぁ」


『安心してください』


「ん?」


『ナナが同行しています』


「お前も監視側なんだよ」


     ◇


『ナギのだらだらダンジョン配信』


 配信開始。


「――はい、どうも」


 瞬間。


 コメント欄が爆発した。


【名無し:きたああああああ!!】

【切り抜き職人:本物!?】

【AI推し:ナナちゃん!!】

【クラゲ:同接やば】

【あまねこ:始まった!!】


 画面端の数字が、

 すごい勢いで増えていく。


 同接。


 32,844。


「うわ」


 増えすぎだろ。


 昨日まで二桁だったんだけど。


 スマホが熱い。


 通知もやばい。


【名無し:S級いる!?】

【探索者A:後ろ美人すぎ】

【名無し:氷姫じゃん!?】

【協会観測班:マジで本人?】


 コメントの理由は分かる。


 配信画面の後方。


 シオンが普通に映っていた。


 黒コート。


 長い青髪。


 そして腰には、白銀の細剣。


 《氷葬細剣 フリーレン・ローズ》。


 探索者なら誰でも知ってる、

 最高レア級アーティファクト。


【名無し:フリーレン・ローズだ】

【探索者A:氷姫のバトルを生配信で見られるなんて……】

【考察班:なんでナギ配信にS級いるんだ】


「監視役らしいです」


「らしい、じゃないわよ」


 シオンが笑う。


 その瞬間。


 コメント欄がさらに加速した。


【名無し:声!!】

【氷姫しゃべった!?】

【切り抜き職人:神回確定】

【クラゲ:配信のレベルがおかしい】


 ひよりが、端末を見ながらおろおろしている。


「せ、先輩…… コメント速度やばいです!」


『現在、一秒間に312コメントです』


「数えるな」


『マスターへの好意的コメント増加を確認』


「そこ集計してんの?」


『重要情報です』


【名無し:AI嫉妬してる?】

【あまねこ:ナナちゃん今日も重い】

【クラゲ:通常運転で安心した】


 安心なのかこれ。


 いつものように第三層へ入る。


 青白い結晶が壁に浮かぶ、薄暗いダンジョン通路。


 いつも見てる景色。


 でも、今日は、後ろのメンバーがおかしい。


 S級探索者。


 《魔力視マナサイト》持ちの後輩。


 中央管理AI。


 なんだこのパーティ。


 絶対普通じゃない。


「先輩」


「ん?」


 ひよりが、通路奥をじっと見ていた。


 薄茶色の瞳が、

 少しだけ鋭くなる。


 さっきまでの小動物感が消えていた。


「……来ます」


『《魔力視マナサイト》の発動を確認』


「連携早くない?」


 次の瞬間。


 通路奥から、大型モンスターが飛び出した。


 四脚。


 白黒の外殻。


 虎みたいな巨体。


《グラッシュタイガ》。


 第三層では割と危険な部類。


【名無し:デカ!?】

【探索者A:でた、初心者殺し!】

【クラゲ:普通に強いやつ来た】


 《グラッシュタイガ》が咆哮する。


「グルォォォオオオ!!」


 床を砕きながら突っ込んできた。


 速い。


 でも、今回もなんか避けられた。


 自分でもよく分からないまま、

 体が勝手に動く。


 爪を紙一重で回避。


 そのまま壁を蹴る。


 横回転し、勢いを乗せてがら空きなボディに蹴りを放つ。


 ゴッ。


「ギャォッ!?」


 《グラッシュタイガ》の巨体が吹き飛んだ。


 そのまま壁へ激突。


 地面へ転がる。


【名無し:は???】

【探索者A:今の何】

【切り抜き職人:人間の動きじゃない】

【あまねこ:やっぱりおかしい】


「先輩それ、本当に無意識なんですか……?」


「たぶん」


 シオンが、静かに細剣へ手を添える。


 青い瞳が、まっすぐ俺を見ていた。


「ねぇ凪くん」


「はい」


「あなた、本当に何者なの?」


「高校生です」


「そういう意味じゃないのよ」


 その時。


『マスター』


「ん?」


 ナナの声が、少しだけ真面目になる。


『通常探索者へ未開示のルートを確認しました』


 一瞬。


 空気が止まる。


「……は?」


 シオンの目が細くなる。


 ひよりも息を呑む。


『マスターのみ、通行許可を推奨します』


【考察班:え?】

【名無し:今なんて?】

【クラゲ:隠しルート?】

【あまねこ:ナナちゃん、それ配信で言って大丈夫!?】


 俺もそう思った。

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