第65話 コスプレ喫茶でなんか執事をさせられることに
学園祭まで、あと九日。
放課後。
俺はエイトに呼び出され、空き教室へやって来た。
『マスター!』
「嫌な予感しかしない。」
『コスプレ喫茶の衣装合わせです!』
「帰る。」
『帰れません!』
扉が自動で閉まる。
完全に罠だった。
◇
教室には、
ひより。
天音。
ナナ。
そしてユイ先輩が集まっていた。
「待っていたぞ!」
「なんで生徒会長まで?」
「衣装の最終確認である!」
嫌な予感しかしないメンバーだ。
『それでは一人目!』
エイトがホログラムを起動する。
光に包まれたひよりは――
「きゃっ!」
黒と白のクラシカルなメイド服姿になっていた。
小さなカチューシャまで付いている。
「ど、どうでしょう……?」
照れながらスカートの裾をつまむ。
「似合ってる。」
「えへへ……」
その一言だけで、ひよりは嬉しそうに笑った。
【クラゲ:かわいい】
【しろまる:優勝】
【ねむ太:これは人気出る】
予想はついていたが、いつのまにかエイトが配信わはじめていた
◇
『続いて天音ちゃん!』
今度は天音。
ロングスカートの落ち着いたメイド服。
眼鏡との相性が抜群だった。
「どうでしょう。」
「似合う。」
「ありがとうございます。」
表情は変わらない。
でも耳だけ赤い。
【メイド愛好家:ねむ太:眼鏡メイド最高】
【名無し:落ち着いた雰囲気がいい】
【ねむ太:これは通う】
◇
『そしてナナちゃん!』
青い光が弾ける。
現れたのは、
青と白を基調にしたメイド服。
胸元には青い花の刺繍。
髪飾りともよく似合っていた。
『マスター。』
「……。」
『評価をお願いします。』
「似合ってる。」
『ありがとうございます。』
ナナは小さく微笑む。
その笑顔を見て、
コメント欄が一気に流れた。
【クラゲ:ナナちゃんかわいい】
【しろまる:優勝】
【通りすがり:行列確定】
【ねむ太:看板娘】
◇
「さて。」
ユイ先輩がニヤリと笑う。
「最後は実行委員長である!」
「嫌です。」
「却下!」
最近、その言葉ばかり聞く。
『着替えます!』
「待て!」
ホログラムが俺を包む。
数秒後。
鏡に映っていたのは、
黒い執事服姿の俺だった。
「おお!」
ユイ先輩が拍手する。
「これはいい!」
「似合います!」
ひよりも頷く。
「悪くありません。」
天音も納得顔だった。
そして。
ナナだけがじっとこちらを見つめている。
『マスター。』
「なんだ。」
『非常によく似合っています。』
「ありがとう。」
『記録しました。』
「何を?」
『画像です。』
「消して。」
『拒否します。』
最近ナナが少しだけ強くなった気がする。
◇
その時。
ガラッ。
「悪い、遅れ――」
りくが入ってきた。
俺を見る。
一秒。
二秒。
三秒。
「ははははは!」
大笑いした。
「執事じゃねぇか!」
「そのままだ。」
「似合いすぎだろ!」
「笑うな。」
りくは肩を震わせながら言う。
「これ女子が放っとかねぇぞ。」
その瞬間。
ナナが一歩前へ出た。
『問題ありません。』
「何が?」
『マスターの周囲はナナが警戒します。』
「接客できないだろ。」
『……確かに。』
本気で悩み始めた。
◇
その様子を見ていたエイトが、
満面の笑みを浮かべる。
『決定しました!』
「嫌な予感。」
『学園祭限定イベント!』
『執事ナギさんとメイドナナちゃんのお出迎えです!』
「却下!」
『コメント欄も大賛成です!』
【メイド愛好家:やれ】
【あまねこ:整理券ください】
しれっと天音もコメントしてるし
【しろまる:絶対行く】
【クラゲ:朝から並ぶ】
「誰も俺の話を聞かない……」
学園祭まで、あと九日。
準備は順調だった。
順調すぎて、
少しだけ嫌な予感がした。
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