表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第三章 キャンプ場でのドキドキ潜伏生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/71

第60話 なんか仲間が強すぎる

 学園祭の企画会議が終わった翌日。


 俺たちはいつものようにダンジョンへ来ていた。


 配信もつけている。


 場所は中層手前の探索エリア。


 以前ならそれなりに危険だった場所だ。


 今は――。


『配信開始を確認しました』


 ナナの声が響く。


 白銀の髪。


 青い花の髪飾り。


 最近は仮実体化したまま配信に映ることも増えた。


【しろまる:きた】


【クラゲ:いつもの】


【ねむ太:平和回だな】


 コメント欄もだいぶ落ち着いている。


 視聴者数は少ない。


 だが、居心地は悪くない。


 その時だった。


「おらぁぁぁ!」


 りくが元気よく飛び出した。


 復帰戦である。


 まだ全快ではない。


 だが本人は元気だった。


 元気すぎた。


「りく! 前!」


「わかってる!」


 ゴブリンの棍棒を避ける。


 そして拳。


 吹き飛ぶゴブリン。


 続けて二体目。


 三体目。


「復帰戦だぁぁぁ!」


【クラゲ:元気すぎる】


【しろまる:退院したばっかだろ】


【ねむ太:医者泣くぞ】


 だが以前とは違う。


 左腕の黒い腕輪。


 《イージス・バングル》が淡く光る。


 半透明の障壁が展開された。


 飛んできた投石を弾く。


「おっ」


 俺は思わず声を出した。


「ちゃんと使ってるな」


「当たり前だろ」


 りくが笑う。


「せっかくもらったんだからな」


【クラゲ:防御してる】


【しろまる:成長した】


【ねむ太:感動】


「なんで感動されてるんだよ!」


 普段の信用がないからだと思う。


     ◇


「先輩!」


 ひよりが声を上げた。


「右です!」


 俺が振り向く前に。


 ぱんっ。


 乾いた音が響く。


 魔導銃から放たれた光弾。


 茂みから飛び出したシャドウファングの鼻先へ直撃した。


「ギャンッ!?」


 狼型モンスターがひるむ。


 そのまま逃げていった。


「当たりました!」


「当たったな」


「当たりました!」


 二回言った。


 よほど嬉しいらしい。


 《魔力視マナサイト》。


 ひよりの感知能力と魔導銃の相性は抜群だった。


 敵を見つける。


 狙う。


 撃つ。


 シンプルだが強い。


【しろまる:ひよりちゃん強い】


【クラゲ:普通に戦力】


【ねむ太:成長したなぁ】


「ありがとうございます!」


 ひよりが胸を張った。


     ◇


「えいっ!」


 今度は天音。


 ぱんっ。


 魔導銃の光弾。


 見事に命中。


 スライムが消滅する。


「やりました!」


「やったな」


「やりました!」


 こっちも二回言った。


【クラゲ:かわいい】


【しろまる:最古参頑張ってる】


【ねむ太:戦えるようになったな】


「ありがとうございます」


 天音もだいぶ配信に出ることに慣れしてきたらしい。


     ◇


 その時。


 通路の奥から重たい足音が響いた。


 ずしん。


 ずしん。


 地面が微かに揺れる。


「ん?」


 俺が視線を向ける。


 現れたのは巨大なトカゲだった。


 全長三メートル近い巨体。


 灰褐色の鱗は岩そのもの。


 太い四肢。


 棍棒のような尻尾。


 歩く岩壁みたいな姿だった。


『ロックリザードを確認』


 ナナが即座に分析する。


『中層に生息する爬虫類型モンスターです』


『高い防御力を持ちます』


【クラゲ:出た】


【しろまる:岩トカゲ】


【ねむ太:硬いやつ】


「おお」


 りくが嬉しそうに笑う。


「久々にまともな相手だな」


 ロックリザードが低く唸る。


 そして。


 見た目に反して速かった。


 巨大な身体で突進してくる。


「先輩!」


 ひよりが声を上げる。


 だが。


 俺が動くより早く。


『排除します』


 ナナだった。


 空中に青白い魔法陣。


 光。


 轟音。


 次の瞬間。


 ロックリザードが吹き飛んでいた。


 壁に激突。


 沈黙。


 討伐完了。


「……」


「……」


「……」


 全員黙った。


【クラゲ:かわいそう】


【しろまる:ロックリザード君】


【ねむ太:出番終了】


【切り抜き職人:30秒で終わった】


『脅威を排除しました』


 ナナは真顔だった。


「まあ」


 俺は肩をすくめる。


「効率はいいな」


『ありがとうございます』


 ロックリザードが少し可哀想だった。


     ◇


 一時間後。


 討伐数。


 ナナ。


 圧倒的。


 りく。


 二位。


 ひより。


 三位。


 天音。


 四位。


 俺。


 五位。


【しろまる:配信主(笑)】


【クラゲ:配信主は他世れだっけ?】


【ねむ太:見守ってた】


『最下位というの……』


「ナナ?」


『事実です』


 最近容赦がない。


     ◇


 帰還ゲートへ向かう途中だった。


 前方から一人の女性が歩いてくる。


 長い黒髪。


 黒いコート。


 妖艶な笑み。


 歩いているだけなのに目を引く。


 不思議な存在感だった。


「へぇ」


 女性が笑う。


 そして。


 真っ直ぐ俺を見る。


「あなたが大豆島凪くん?」


「そうですけど」


「ふふ」


 女性は楽しそうに微笑んだ。


「思ったより面白そうな子ね」


 その瞬間。


 ナナが黙った。


 珍しい。


『マスター』


 声が低い。


「どうした?」


『警戒を推奨します』


「え?」


『この個体は危険です』


 俺は女性を見る。


 相変わらず笑っている。


 綺麗な笑み。


 だが。


 なぜか背筋が少し冷えた。


「自己紹介がまだだったわね」


 女性は優雅に一礼する。


「鑪璃艶」


 その名前に。


 ひよりと天音が顔を上げる。


 りくも目を丸くした。


「学園祭武闘会の」


「特別参加者だな」


 りくが呟く。


 璃艶は楽しそうに笑った。


「ええ」


「学園祭」


 その瞳が俺を見る。


「楽しみね」


 なぜだろう。


 その一言だけなのに。


 妙に意味深に聞こえた。


 まるで。


 武闘会だけを楽しみにしているわけではないような。


『マスター』


 ナナの声が再び響く。


『嫌な予感がします』


「またか?」


『はい』


 珍しい。


 ナナがこんな曖昧な言い方をするなんて。


 璃艶は微笑む。


 その笑顔は美しい。


 なのに。


 どこか獲物を見つけた猛獣にも見えた。


「また会いましょう」


 そう言って彼女は通り過ぎていく。


 誰も言葉を発しなかった。


 数秒後。


 エイトが口を開く。


『うわぁ』


「何だよ」


『あれ絶対強いやつですよ』


「見れば分かる」


『しかも美人です』


「そこか」


『重要です』


 重要らしい。


 俺は振り返る。


 璃艶の姿はもう見えない。


 だが。


 学園祭武闘会が少しだけ楽しみになった。


 そして同時に。


 少しだけ嫌な予感もしていた。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ