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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第三章 キャンプ場でのドキドキ潜伏生活

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第59話 なんか学園祭の規模が大きくなりすぎている

 翌日。


 俺たちは生徒会室へ呼び出されていた。


「よし!」


 上千歳ユイ先輩が机を叩く。


「学園祭企画会議、終了だ!」


「早いですね」


「なぜなら全部採用だからである!」


「待ってください」


 待ってほしい。


 本当に待ってほしい。


 だが、ユイ先輩は止まらない。


「まず!」


 ホワイトボードを指差す。


「ひよりちゃん案!」


 そこには、


【飲食出店エリア】


 と書かれていた。


「ホットドッグ! フライドポテト! チョコバナナ!」


「採用なんですか!?」


 ひよりが立ち上がる。


「もちろんである!」


「やった!」


 嬉しそうだった。


 ものすごく嬉しそうだった。


 もうそれだけで採用した価値がありそうなレベルだ。


「続いて!」


 ユイ先輩が次の項目を指す。


【深界原学園探索者武闘会】


 でかい文字。


 嫌な予感しかしない。


「りくくん案!」


「よっしゃ!」


 りくがガッツポーズした。


「学園最強決定戦である!」


「普通に危険じゃないですか?」


 ひよりが不安げに問いかける。


「探索者学園なので問題ない!」


「そういうものですか?」


「そういうものである!」


 勢いで押し切られた。


 たぶん誰も止められない。


「さらに!」


 次。


【伝説の配信者・大豆島凪 展示会】


「却下」


 俺がそう言い放つが……。


「採用である!」


 ユイ先輩は俺の言葉を無視する。


 天音が立ち上がった。


「ほ、本当に採用なんですか?」


「もちろんである!」


「やった……」


 天音も嬉しそうだった。


 なぜだ。


「初期配信から現在まで!」


「やめろ」


「伝説の切り抜き!」


「やめろ」


「黒歴史展示!」


「絶対やめろ」


 天音が目を逸らした。


 あるらしい。


 黒歴史コーナー。


 怖い。


 そして最後。


【コスプレ喫茶】


「採用である!」


 ユイ先輩はなぜかガッツポーズを決めていた。


『勝ったぁぁぁぁ!』


 エイトが天井付近を飛び回る。


     ◇


「さて」


 ユイ先輩が手を組む。


「次は武闘会の話である」


 りくが身を乗り出した。


「待ってました」


「出場者についてだ」


 ホワイトボードに名前が書かれる。


 りく。


 そして。


 ナギ。


 シオン。


「却下である」


 俺が口を開く前に却下された。


 それでも俺は食い下がろうとするが……。


「却下である」


 先読みされた。


 シオンもため息をつく。


「私は出る気ないのだけれど」


「シオンは出る」


「なぜ?」


「盛り上がるからである!」


 最低の理由だった。


 だが説得力はあった。


 S級探索者の試合なんて見たいに決まっている。


「凪くんも出る」


「嫌です」


「出る」


「嫌です」


「出る」


 小学生みたいな会話になった。


「武闘会の優勝賞品を聞いてから判断するといい」


 ユイ先輩が不敵に笑った。


「優勝者には」


 全員が注目する。


「生徒会長権限で、願いを一つ叶える!」


 静寂。


 そして。


『マスターとのデートとかどうですか!?』


 エイトだった。


 余計なことを言うな。


「なっ!?」


 ひよりが固まる。


「えっ」


 天音も固まる。


 りくが吹き出した。


「ははっ!」


 ユイ先輩が目を輝かせる。


 ひよりの顔は真っ赤だった。


「そ、そんなの!」


「ひよりちゃん出る?」


「えっ」


「出る?」


「……」


 ひよりは魔導銃のケースを見た。


 先日買ったばかりだ。


 そして。


 ちらりと俺を見る。


「……出ます」


「ひより!?」


 即落ちだった。


【しろまる:参戦決定】


【クラゲ:かわいい】


 コメント欄が流れる。


「コメント欄?」


 俺は固まった。


 画面を見る。


 流れている。


 普通に流れている。


 嫌な予感しかしない。


「エイト」


『はい!』


「配信してるな?」


『してます!』


「なんで?」


『面白そうだったので!』


「やめろ!」


 だが既に遅い。


 コメント欄は大盛り上がりだった。


 そして。


「わ、私も出ます」


 天音が小さく手を上げた。


「天音まで?」


「魔導銃もありますし……」


 耳まで赤い。


「そもそも優勝できないだろ」


「わかっています」


「じゃあなんで」


「参加することに意味があるので」


 嘘だ。


 たぶん違う。


【あまねこ:頑張ります】


【しろまる:本人で草】


【クラゲ:天音ちゃん可愛い】


 コメント欄も盛り上がっていた。


     ◇


「さて」


 ユイ先輩が満足そうに頷く。


「最後に特別参加者を発表する」


 ホワイトボードへ新しい名前が書かれた。


【妻科カオリ】


「お」


 俺は思わず声を出した。


 協会本部で世話になった探索者管理官だ。


「協会代表である」


「なるほど」


「元S級探索者でもある」


 室内がざわついた。


 それは納得だ。


 そして。


 もう一人。


【鑪璃艶】


 その名前が書かれた瞬間だった。


 シオンの表情が変わった。


 ほんの一瞬。


 本当に一瞬だけ。


 だが。


 俺は見逃さなかった。


「シオンさん?」


「……」


 返事がない。


 珍しい。


 シオンが鑪璃艶の名前を見ている。


 その目は少しだけ冷たかった。


「知り合いですか?」


 俺が聞く。


 シオンは数秒黙った。


 それから静かに言った。


「知っているわ」


「強いんですか?」


「強い」


 即答だった。


「元S級探索者」


 その一言だけで十分だった。


 だが。


 何かが引っかかる。


 単なる強敵という感じではない。


 もっと別の何か。


 その時。


『マスター』


 ナナの声が聞こえた。


 普段より少し低い。


「どうした?」


『鑪璃艶』


「うん」


『気になります』


「何が?」


 少し沈黙。


 それから。


『嫌な予感がします』


 ナナが言った。


「予感? ナナがそんなことを言うなんてめずらしいな」


 ナナがそういう表現を使うこと自体が珍しい。


 俺はホワイトボードを見る。


【鑪璃艶】


 たった四文字。


 なのに。


 その名前だけが妙に目に残った。


 一方で。


 ユイ先輩はそんな空気に気付かず、楽しそうに笑っていた。


「よし!」


 パン、と手を叩く。


「今年の学園祭は過去最大規模で行くのである!」


 りくは武闘会に燃えている。


 ひよりと天音は参加を決めている。


 エイトは勝手に配信している。


 コメント欄は祭り状態だ。


 そして。


 シオンとナナだけが。


 同じ名前を見ていた。


 鑪璃艶。


 まだ会ってもいないその人物が。


 学園祭へ、妙な影を落とし始めていた。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。


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