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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第三章 キャンプ場でのドキドキ潜伏生活

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第57話 なんか学園祭実行委員長になってしまった

 夏休みが終わった。


 二学期である。


 つまり。


 学生にとっては面倒なイベントの季節だった。


「学園祭か……」


 俺は生徒会室前の廊下で呟いた。


『学園祭です』


 ナナが隣で頷く。


 青い花の髪飾りが、白銀の髪の間で揺れた。


 最近のお気に入りらしい。


『統計上、学園祭はラブコメイベントの発生率が高いです』


「何の統計だよ」


『主に漫画、アニメ、小説です』


「参考にならないな」


『なります』


「ならない」


 そんなやり取りをしていると。


 生徒会室の扉が勢いよく開いた。


「来たか! 大豆島凪くん!」


 元気な声だった。


 いや、元気すぎた。


 飛び出してきたのは長い黒髪をポニーテールにした女子生徒。


 身長は高め。


 整った顔立ち。


 生徒会長の腕章。


 そして妙に堂々とした立ち姿。


 上千歳ユイ。


 県立深界原高校三年。


 現生徒会長。


 そして――。


 探索者協会幹部。


 S級探索者。


「やあ! 待っていたのである!」


 いきなり肩を叩かれた。


「近いです」


「親愛の表現である!」


「距離感がおかしい」


「そうか?」


 本気で分かっていない顔だった。


 後ろからシオンがため息をつく。


「昔からこうなのよ」


「シオン!」


 ユイ先輩がぱっと振り返る。


「久しぶりであるな!」


「昨日も会ったでしょう」


「細かいことは気にするな!」


 気にした方がいいと思う。


 たぶん。


     ◇


 生徒会室へ通された。


 思ったより普通だった。


 机。


 書棚。


 ホワイトボード。


 そして大量の書類。


「さて!」


 ユイ先輩が机を叩く。


「本題である!」


「やっとですか」


「私はいつでも本題だぞ!」


「嘘だ」


「失礼な!」


 失礼ではないと思う。


 シオンも頷いている。


 ほら。


「単刀直入に言おう!」


 ユイ先輩がビシッと俺を指差した。


「大豆島凪くん!」


「はい」


「学園祭を盛り上げてほしいのだ!」


「嫌です」


「即答!?」


 即答だった。


 俺だって学習する。


 こういうテンションの人に付き合うとろくなことにならない。


「なぜだ!」


「面倒なので」


「正直!」


「あと、俺そういうキャラじゃないですし」


「何を言う!」


 ユイ先輩は机を叩いた。


「君は一時期とはいえ全国的な有名人であった!」


「過去形ですね」


「うむ!」


「うむじゃない」


 ユイ先輩は真顔で続ける。


「AI映像による自作自演疑惑!」


「疑惑じゃなくて、そういうことになってますね」


「大炎上!」


「言い方」


「SNS大騒ぎ!」


「言い方!」


「そして現在!」


 ユイ先輩が親指を立てた。


「視聴者激減!」


「言い方ぁ!」


 ひどい。


 この人ひどい。


 シオンが横で笑いを堪えている。


「事実だろう?」


「まあ事実ですけど」


 俺は肩をすくめる。


「今はだいぶ落ち着いてますよ」


「だが、私は知っている」


「何をです?」


「君は人を集める才能がある」


 ユイ先輩の声が少し真面目になった。


「AI動画だろうが何だろうが、あれだけ話題になったのは事実だ」


「……」


「配信者としての才能。企画力。発信力」


 生徒会長は笑った。


「それは学園祭でも使えるのである」


 少しだけ。


 説得力があった。


 少しだけだけど。


     ◇


「却下です」


 ナナが言った。


「おっ」


 珍しく味方だ。


『マスターの自由時間が減少します』


「そうだそうだ」


『ただし』


「ただし?」


『学園祭での活動は、マスターの社会的評価改善に寄与する可能性があります』


「ナナ?」


『また、ナナの出番も増えます』


「本音出たな」


 ユイ先輩が身を乗り出した。


「ナナくん!」


『ナナクンではなくナナです』


「ナナくん!」


『ナナです』


「細かいことは気にするな!」


『気になります』


 初対面なのに押しが強い。


 というか。


「先輩」


「何である?」


「なんでナナのこと知ってるんです?」


 ユイ先輩が固まった。


 一秒。


 二秒。


 そして。


「あっ」


 完全にやらかした顔だった。


「シオンさん?」


「私は何も言ってないわ」


 ユイ先輩は咳払いした。


「まあ、その、なんだ」


「なんです?」


「私は協会幹部なのでな」


「雑だな説明」


 絶対何か知ってる。


 でも今は追及しない。


 どうせ今聞いても教えない顔をしている。


     ◇


『マスター』


 エイトがふわっと現れた。


『面白そうじゃないですか』


「お前は黙ってろ」


『学園祭ですよ?』


「だから?」


『出店!』


「うん」


『ステージ!』


「うん」


『コスプレ!』


「帰れ」


『えー!?』


 ナナまで頷いている。


『学園祭は有意義なイベントです』


「お前もか」


『マスター』


「なんだ」


『最近、平和です』


「まあな」


『少しぐらい楽しんでもいいと思います』


 その言葉に。


 少しだけ考える。


 確かに。


 《Leviathan》の件。


 協会本部。


 シオンの暴走。


 色々あった。


 だからこそ。


 少しくらい普通の高校生っぽいことをしてもいいのかもしれない。


 ユイ先輩が机に身を乗り出した。


「どうであるか!」


「いやでも」


「どうであるか!」


「圧が強い」


「どうであるか!」


 強い。


 S級探索者並みに強い。


 いや実際S級なんだけど。


 シオンが肩をすくめる。


「諦めた方が早いわよ」


「シオンさんまで」


「ユイはこうなったら止まらないもの」


 味方がいない。


 完全にいない。


 ナナとエイトまで敵側にいる。


 俺はため息を吐いた。


「……で」


「うむ!」


「何をやればいいんです?」


 ユイ先輩の顔が一気に輝く。


「話が早い!」


「断る権利なかったですよね」


「なかったのである!」


 あったはずなんだけどな。


 おかしいな。


 ユイ先輩は高らかに宣言した。


「大豆島凪くん!」


「はい」


「君を今年の学園祭実行委員長に任命する!」


「重くないですか?」


「重い!」


「認めるんだ」


「だが大丈夫である!」


「何がです?」


「私も手伝う!」


「不安しかない」


 シオンが吹き出した。


 ナナは静かに頷く。


『学園祭実行委員長、おめでとうございます』


「まだ受けた記憶ないんだけど」


『受理済みです』


「誰が」


『ナナが』


「勝手に受理するな」


 生徒会室に笑い声が響く。


 こうして。


 俺の二学期は始まった。


 たぶん。


 平和には終わらない。


 そんな予感しかしなかった。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。


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