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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第三章 キャンプ場でのドキドキ潜伏生活

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第43話 待機室では、なんかだいたい本音が漏れる

 警報が鳴った瞬間。


 待機室の空気が変わった。


「ナギ!」


 りくが立ち上がる。


 ひよりも椅子を蹴るようにして立ち上がった。


「先輩!」


 扉へ向かおうとした二人の前に、職員が立ちはだかる。


「ここから出ないでください」


「出ないでって、ナギに何かあったんだろ!」


「現在、確認中です」


「確認中って便利な言葉だな!」


 りくが拳を握る。


 その腕を、シオンが掴んだ。


「待って」


「でも!」


「今ここで暴れたら、凪くんの立場が悪くなるわ」


 りくは奥歯を噛んだ。


 それでも、拳は下ろした。


「……くそ」


 壁のモニターには、赤い警告表示が点滅している。


【旧施設信号 規定値超過】


【接続先 解析不能】


 天音が赤いフレームの眼鏡を押し上げた。


「これ、やっぱりナギさんの右手ですよね」


「たぶん」


 ひよりは目元に指を当てる。


 淡い光が、瞳の奥に宿った。


 《魔力視マナサイト》。


「壁の中の青白い線が、全部ひとつの場所に集まってます」


「どこだ?」


「先輩のいる検査室です」


 りくの顔が険しくなる。


「やっぱり助けに行こうぜ」


「まだよ」


 シオンさんの声は静かだった。


 けれど、その指先には薄い霜が浮かんでいる。


 ひよりが振り返った。


「シオンさん」


「何?」


「シオンさんの魔力も、動いてます」


 シオンさんの表情が止まる。


「私の?」


「はい。先輩のいる方に、引っ張られてます」


 ひよりは困ったように眉を下げた。


「昨日より、青白い流れが増えてます」


「……そう」


 シオンさんは自分の胸元へ手を当てた。


 白いコートの下。


 その奥で、何かを確かめるように。


 天音が、少し迷ってから口を開いた。


「シオンさん」


「何かしら」


「ナギさんを、本当に危険だと思ってますか?」


 待機室が静かになった。


 りくも、ひよりもシオンさんを見る。


「思っていないわ」


 答えは早かった。


「凪くんは危険な力を持っている。でも、彼自身が危険だとは思っていない」


「じゃあ、どうして剣を持って迎えに来たんですか」


「命令だったからよ」


 シオンさんは視線を落とした。


「それに、従わなければ守れないものがあった」


 ひよりが首をかしげる。


「守るもの?」


 シオンさんは、ひよりを見た。


 ほんの少しだけ優しい目だった。


「あなたよ」


「私?」


「監察補助の責任を、協会はあなたにも問うつもりだった」


「えっ」


 ひよりは目を丸くした。


「私、そんなことになってたんですか?」


「なっていたわ」


「全然知りませんでした!」


「でしょうね」


 シオンさんが小さく笑う。


「だから、私が責任を引き受けたの」


 ひよりはしばらく固まっていた。


 やがて、頬を膨らませる。


「先に言ってください」


「言ったら、あなたは止めたでしょう?」


「止めます!」


「だから言わなかったの」


「シオンさん!」


 ひよりがシオンさんの袖を掴む。


 怒っているようで、泣きそうにも見えた。


「私、シオンさんのお手伝いなんです」


「もう違うわ」


「違いません」


 ひよりは強く言った。


「先輩のことも心配です。でも、シオンさんのことも心配です」


 シオンさんが目を瞬かせる。


 ひよりは袖を離さない。


「勝手に一人で守ろうとしないでください」


「……ひよりちゃん」


「オレもいるぜ」


 りくが横から言った。


「難しいことはわかんねぇけど、ナギもシオンさんも敵じゃない。それだけはわかる」


 天音も頷く。


「私もです。ナギさんは、昔から無茶しますけど、人を傷つけて喜ぶ人じゃありません」


「最古参として?」


「はい。最古参として」


 シオンさんは三人を見た。


 それから、少しだけ困ったように笑った。


「凪くんは、いい仲間を持ったわね」


「シオンさんも、その中に入ってます」


 ひよりが即答する。


「……そう」


 その時。


 待機室のモニターが切り替わった。


 ナギの検査結果が表示される。


【適応反応 確認】


【継承候補 再認証】


【第二対象 同期開始】


「第二対象?」


 天音が呟く。


 ひよりが息を呑んだ。


 彼女の瞳が、大きく見開かれる。


「シオンさん……!」


 シオンさんの胸元から、青白い光が漏れていた。


 白いコートの内側。


 心臓のあたりに。


 ナギの右手とよく似た紋章が、ゆっくりと浮かび上がっていた。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。

小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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