第4話 なんかS級(綺麗なお姉さん)に配信見られてた
「……やっぱりって、何がです?」
聞いてもシオンは答えない。
代わりに、じっと俺を見る。
近い。
『警告』
「また?」
『現在、マスターは至近距離から観察されています』
「言い方」
シオンが小さく笑った。
「ふふっ」
綺麗な人だった。
しかも。
距離感が近い。
「前から気になってたのよね」
「俺?」
「ええ」
シオンが脚を組み替える。
黒いストッキング越しの脚が長い。
なんかすごい。
「たまに見てたの。配信に映るたび、動きがおかしい子のこと」
「もしかし、俺、悪口言われてます?」
「褒めてるの」
『高評価を確認しました』
「最近お前、
全部褒め言葉判定するな」
シオンが、楽しそうに目を細める。
「昨日の《ハウルファング》との戦闘。あんな回避、普通の探索者じゃ無理よ」
「でも避けられました」
「そこなの」
シオンが立ち上がる。
ヒールの音が静かに響く。
そのまま。
俺のすぐ前まで来た。
近い。
いい匂いがする。
「ねぇ、凪くん」
「はい」
「自分がどれだけおかしいか、わかってないでしょう?」
「よく言われます」
「でしょうね」
シオンが、わざとらしく顔を寄せる。
青い髪が肩に触れた。
近い。
なんかすごい近い。
「普通、私がここまで近づくともっと緊張するのよ?」
「そうなんですか?」
「ええ。見惚れるか、怯えるか、固まるか」
「へー」
「……本当に効かないのね」
シオンが笑う。
なんか。
完全に楽しんでる。
『警告』
「またか?」
ナナの声が少し低い。
『この個体は、マスターとの物理距離が近すぎます。修正を要求します』
「要求!? この私に?」
シオンの眉が少しだけ上がる。
「ふふっ」
そのまま。
さらに少しだけ顔が近づく。
「こう?」
「近っ」
『危険度上昇を確認』
「お前、なんか機嫌悪くない?」
『否定します』
早い。
『ナナは、マスターの安全確保を最優先しています』
「へぇ」
シオンが、面白そうにナナの声を聞いている。
「その子、本当にあなたが好きなのね」
『否定します』
シオンが吹き出した。
笑うたび、
空気が柔らかくなる。
でも。
目だけはずっと、俺を見据えていた。
「ねぇ、凪くん」
「はい」
「そのAI、他の人ともこんな風に話すの?」
「どうでしょう?」
『マスター以外との会話は、優先度が低く設定されています』
一瞬。
シオンの目が細くなる。
「……やっぱり特別なんだ」
「何がです?」
「あなたが」
妙に真っ直ぐ言われた。
困る。
『警告』
「またかよ!?」
『この個体は、マスターへの心理的接近を継続しています』
「心理的接近ってなんだよ」
『誘惑行動に近い可能性があります』
「分析するな」
シオンが、今度は声を出して笑った。
「ふふっ……なにこれ。かわいい」
『……評価を確認しました』
「褒められてるぞ」
『ですが』
「ん?」
『この個体は危険です』
「面と向かって言うな」
「ひどいわね」
シオンが笑いながら、
指先で俺の制服のネクタイに触れた。
そのまま。
くい、と軽く引っ張る。
近い。
「でも。少しくらい警戒した方がいいわよ?」
「何をです?」
「私を」
「なんでです?」
一瞬。
シオンが黙った。
そのあと。
「……そこから説明しないとダメ?」
「?」
なんか。
ちょっと困った顔してる。
『警告』
「またか」
『この個体による接触頻度が増加しています』
「細かく数えるな」
『現在、3分間で7回接近されています』
「カウントしてたのかよ」
シオンが肩を震わせる。
完全に笑ってた。
「あなた達、面白いわね」
『……不快です!』
ナナの声に怒気がこもる
一瞬。
部屋が静かになる。
『訂正。不快ではありません』
「もしかして、今、めっちゃ怒ってた?」
『誤作動です』
「絶対違うだろ」
シオンが、楽しそうに目を細める。
「ふふっ……。その子、本当にかわいいわね」
「ナナが?」
「あなたを挟むと、急に感情的になるもの」
『否定します』
なんか、面倒なお姉さんに気に入られた気がする。
その時。
部屋の扉がノックされた。
「失礼します!」
元気な声。
次の瞬間。
勢いよく扉が開く。
「シオンさん! 例の配信者って――」
入ってきた女の子が、俺を見て止まる。
小柄。
明るい茶色の髪。
やたら元気そう。
「……え?」
そして。
なぜか顔が赤くなった。
「あっ」
「ん?」
「ナギ先輩!?」
誰?
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小説家になろう版は、本日5話まで投稿し、明日からはしばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
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