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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第二章 水着回のはずなのに世界の謎が増えていく

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第26話 深淵に眠るもの

地下湖の奥。


 さらに巨大な“影”が浮上し始めていた。


 最初は島だと思ったが、違った。


 それは動いている。


【名無し:え】

【クラゲ:待って】

【探索者A:でかすぎる】


 水面が盛り上がる。


 神殿そのものが揺れる。


 そして、それは姿を現した。


 暗い青銀色の巨体。


 鱗にも見える。


 装甲にも見える。


 生物なのか機械なのかも分からない。


 巨大な胴体の周囲を、いくつもの光輪が公転していた。


 青白い文字列。


 幾何学模様。


 魔法陣のようなもの。


 電子回路のようなもの。


 その全てがゆっくり回転している。


 まるで惑星だった。


 顔はない。


 口もない。


 ただ中央に。


 一つだけ。


 巨大な赤い瞳が存在していた。


 その瞳が開く。


 瞬間。


 地下神殿全体へ重圧が落ちた。


【名無し:やばい】

【クラゲ:怖い】

【探索者A:これ戦う相手じゃない】


 ネレイスの顔から笑みが消える。


『……どうして』


 小さな声だった。


『どうして起きているの』


 エイトも固まっていた。


 珍しく冗談を言わない。


『確認』


『対象を《Deep Archive Core : Leviathan》と認識』


『旧人類深層記録装置です』


「記録装置?」


『はい』


 エイトの声が震える。


『ダンジョン全域の記録保管装置です』


『戦闘用ではありません』


「全然そう見えないんだけど」


『本来は戦いません。……戦ったら世界が終わります』


「さらっと怖いこと言うな」


【名無し:世界終わる】

【クラゲ:説明になってねぇ】


 その時、巨大な赤い瞳が俺を見た。


 そんな気がした。


 直後。


 頭の中へ声が響く。


『認証』


 知らない声。


 男でも女でもない。


 機械みたいな声。


『適応済み個体確認』


 頭痛。


 視界が揺れる。


『継承候補確認……記録照合開始』


「っ……!」


『マスター!?』


 ナナだった。


 珍しく慌てている。


『マスター!』

 

 薄れていく意識。


 視界の奥で何かが見えた。


 白い研究施設。


 誰かの背中。


 男と女。


 優しく笑っている。


 でも顔が見えない。


 手を伸ばした瞬間。


 映像が消えた。


『マスター!!』


 ナナの声で意識が戻る。


『現在、脳波異常を確認。精神接続を確認。外部認証信号を確認』


「多いな」


『全部危険です』


 即答だった。


【名無し:ナナちゃん焦ってる】

【クラゲ:珍しい】


 少しの間。


 そして。


『……無理をしないでください』


 弱い声。


 《Guardian Type-Ω》と戦った時と同じだった。


 俺が消耗した時の。


 あの声。


「大丈夫」


『信用できません』


「ひどい」


『事実です』


【名無し:ナナかわいい】

【クラゲ:完全に彼女】


 その横で、りくが俺の肩を支えていた。


「立てるか?」


 黒ビキニ姿のまま。


 濡れた褐色肌が水晶の光を反射する。


 少し心配そうな顔だった。


「まあな」


「無理すんなよ」


 素直だった。


 珍しく。


「ナ、ナギさん!」


 今度は天音。


 白フリル水着。


 赤フレーム眼鏡。


 濡れたパレオ。


 慌てて走ってきたせいで太ももがちらちら見えている。


 本人は気付いていない。


「ナギさん、なんかヤバいことになってると思います!」


「雑だな」


「でもヤバいです!」


 それはそうだった。


『ふふっ』


 ネレイスが笑う。


 妖艶な笑み。


『やっぱり』


『あなただったのね』


「だから何の話だよ」


『秘密』


 不適に微笑む。


『まだ教えない』


【名無し:また秘密】

【クラゲ:説明不足系ヒロイン】


 その時だった。


 《Deep Archive Core : Leviathan》の赤い瞳が一度だけ強く輝く。


『観測完了』


 声が響く。


 そして、巨大な神は、ゆっくりと地下湖の底へ沈み始めた。


【名無し:帰るの!?】

【クラゲ:なんだったんだよ】


 静寂。


 だが。


 ナナも。


 エイトも。


 ネレイスも。


 誰も安心していなかった。


『……まずいです』


 エイトが呟く。


「何が」


 エイトが答える。


『最悪なのはたぶん、これからです』


 地下神殿に静かな沈黙が落ちた。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。

小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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