第25話 なんか 深淵歌姫は、まだ答えをくれない
地下湖が割れた。
轟音。
巨大水柱。
そして、赤い単眼を光らせた機械魚が、水面を裂きながらこちらへ突っ込んでくる。
【名無し:でっっっか!?】
【クラゲ:無理無理無理!!】
【探索者A:ボス戦きたぁ!!】
『《Abyss Defense Type-L》』
エイトが即座に解析を始める。
赤いボブ髪のホログラム少女が、高速でウィンドウを展開した。
『旧深層防衛機構です!』
『要するに』
『めちゃくちゃ硬くて強いです!』
「雑!」
怪物が咆哮する。
ビリビリと空気が震えた。
次の瞬間。
大量の水弾が射出される。
「ひより!」
「はいっ!」
俺がひよりを抱えて飛ぶ。
直後。
ドゴォォンッ!!
背後の神殿柱が吹き飛んだ。
【名無し:火力おかしい】
【クラゲ:温泉回の続きだよなこれ!?】
「せ、先輩……っ」
ひよりが、ぎゅっと俺へしがみつく。
旧型スク水が水を吸って、身体へぴったり張り付いていた。
華奢な胸元。
細い腰。
濡れた太もも。
しかも、抱き寄せたせいで、柔らかい感触が妙に近い。
「近いですぅ……」
「落ちるよりマシ」
顔真っ赤だった。
【名無し:ラブコメ始まった】
【クラゲ:命の危機でも通常運転】
「ナギ!!」
りくだった。
黒髪ショート。
色黒肌。
黒の大胆なビキニ。
濡れた肌が艶っぽく光っている。
健康的すぎる。
「オレが止める!!」
水面を蹴る。
加速。
そして。
「《衝牙》!!」
ドォンッ!!
一瞬で機械魚の懐へ潜り込んだ。
【名無し:速っ!?】
【探索者A:消えた!?】
超短距離加速。
踏み込みだけで水面が爆ぜる。
りくの拳が、機械魚の外殻へ叩き込まれた。
ゴォォンッ!!
衝撃。
だが。
「っっっっかてぇ!!」
腫れあがった拳をぶんぶんと降り、「フゥー」と拳に息を吹きかける。
めちゃくちゃ痛そうだったが、りくは笑っていた。
「だったら――中を壊す!!」
再び拳を叩き込むと、りくが叫ぶ。
「《震破》!!」
次の瞬間。
内部から衝撃が炸裂した。
ゴバァッ!!
機械魚の装甲内部が爆ぜる。
【名無し:うおおお!?】
【クラゲ:内部破壊!?】
【探索者A:りくちゃん強くね!?】
『へぇ』
ネレイスが少し驚いた顔をした。
地下湖へ浮かぶ妖艶なセイレーン。
蒼銀の髪。
濡れた薄布。
水面越しの白い脚。
妙に色っぽい。
『ただの元気なお子ちゃまってわけじゃないのね』
「子供扱いすんな!!」
りくが叫ぶ。
でも、少し嬉しそうだった。
その時。
『高出力反応!』
エイトが叫ぶ。
『ブレス来ます!!』
機械魚の口元へ、
赤い光が集まる。
「またかよ!」
直後。
極太の赤光線が地下湖を薙ぎ払った。
ゴォォォォォッ!!
熱。
衝撃。
水蒸気。
神殿そのものが揺れる。
「きゃあっ!?」
天音が転びそうになる。
白フリル水着。
濡れたパレオ。
翻った瞬間、太ももが見えて妙に危ない。
しかも、転びかけた拍子に、胸元まで揺れる。
「うわっ」
「ひゃっ!?」
反射的に支える。
顔が近い。
赤フレーム眼鏡の奥で、天音の目がぐるぐるしていた。
「ナ、ナギさん近いです近いです近いです!!」
「落ち着け」
「む、無理ですぅ!!」
【名無し:最古参オタク限界化】
【クラゲ:あまねこwww】
『マスター』
ナナが静かに言う。
『現在、各女性個体との接触率が異常値です』
「分析するな」
『事実です』
一方。
ネレイスは、少しだけ離れた場所からそれを眺めていた。
妖艶な微笑み。
でも、その目だけは、どこか静かだった。
『不思議』
「何が?」
『あなた』
ネレイスが、ゆっくり俺を見る。
『“適応済み”なのに、全然壊れてない』
【名無し:またその単語】
【考察班:適応ってなんだよ】
『普通はもっと早く、狂うのだけど』
「怖いこと言うな」
『ふふっ』
ネレイスが笑う。
『だから興味あるの』
その瞬間。
機械魚の単眼が、真っ赤に発光した。
『危険!!』
エイトが叫ぶ。
『対象固定されました!!』
「対象?」
『マスターです!!』
「また俺!?」
機械魚が、水中から高速突進してくる。
速い。
避けきれない。
だが。
『マスター』
ナナの声。
『右へ三歩』
身体が動く。
踏み込む。
直後。
巨大な顎が、さっきまで俺がいた場所を噛み砕いた。
【名無し:あっぶな!?】
【クラゲ:ナナちゃんナイス!!】
『左上』
回避。
『前』
カウンター。
拳を叩き込む。
【名無し:また見えてる!?】
【考察班:ナギだけ別ゲー】
『マスター』
ナナの声が静かに響く。
『ナナが補助します』
「ん」
『なので』
少しだけ間。
『無茶はしないでください』
珍しく。
本当に珍しく。
少しだけ弱い声だった。
《Guardian Type-Ω》と戦っと時のことを、まだ気にしてるんだろう。
「……善処する」
『信用値低下』
「ひどい」
『事実です』
でも、その声は少し柔らかかった。
その時だった。
ネレイスが、ふと空を見上げる。
『……来る』
「何が?」
直後、地下神殿全体が、さらに大きく揺れた。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
【名無し:まだあるの!?】
【クラゲ:嘘だろ!?】
地下湖の奥。
さらに巨大な“影”が、 ゆっくり浮上し始めていた。
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本作はカクヨムでも連載中です。
小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
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