第23話 温泉ダンジョンから、なんか触手モンスターが!?
「うおおおおおっ!?」
落ちる。
暗闇。
温泉の湯。
悲鳴。
ぐちゃぐちゃに混ざる。
【名無し:落ちたぁぁぁ!?】
【クラゲ:配信続いてる!!】
【探索者A:え、なにこれ!?】
「エイト!! 配信切れ!!」
『いや今それどころじゃ――』
ドボォンッ!!
全身へ衝撃。
冷たい水。
「ぶはっ!?」
顔を上げる。
暗い。
湿ってる。
そして、広い。
「……洞窟?」
地下湖みたいな場所だった。
青白い結晶が壁に埋まり、ぼんやり光っている。
水深は腰くらい。
でも、空気が嫌だった。
ぬるぬるしてる。
『ダンジョン反応を確認』
ナナの声。
『未登録領域です』
「またかぁ……」
【名無し:未登録!?】
【クラゲ:温泉の下ダンジョンとかある!?】
【探索者A:観光地終わってる】
「せ、先輩……!」
ひよりが、俺の腕へしがみついてくる。
濡れたスクール水着。
しかも、落下の衝撃で、水着がかなり身体へ張り付いていた。
細い身体のラインが、妙にはっきり分かる。
「だ、大丈夫か?」
「こ、怖いですぅ……!」
上目遣い。
距離近い。
あと柔らかい。
『役得イベント発生中ですねぇ』
「実況すんな」
一方。
「っはは!! なんだこれ、面白ぇ!!」
りくだけ元気だった。
黒ビキニ姿のまま、ばしゃばしゃ水の上を歩く。
濡れた褐色肌が、青白い結晶光を反射して妙に色っぽい。
しかも、濡れたビキニが肌へ張り付き、胸の形がかなり危ない。
「りく、危ないから前出るな」
「へーきへーき!」
その瞬間。
水面が動いた。
ぐちゅり。
「……ん?」
次の瞬間。
水中から、紫色の触手が飛び出した。
「きゃっ!?」
ひよりの脚へ巻き付く。
【名無し:うおおおお!?】
【クラゲ:出たぁぁぁ!!】
【探索者A:触手だあああ!!】
「ひより!」
「せ、先輩ぃ!?」
引っ張られる。
水中へ。
しかも。
触手が、旧型スク水の脚へぬるっと絡みついて、妙にえっちだった。
『テンプレ展開来ましたねぇ』
「冷静だなお前!?」
エイトが笑いながら、空中へ魔法陣を展開する。
『《Photon Break》!』
紫色の光線。
ドォン!!
触手爆散。
「助かったぁ……」
ひよりがへたり込む。
でも、終わってなかった。
ごぽごぽごぽっ。
湖全体が泡立つ。
『あ』
エイトが止まる。
『これ、親玉います』
「嫌な言い方するなぁ」
次の瞬間。
水面が盛り上がった。
巨大な影。
ぬめった紫色。
無数の触手。
赤い目玉。
《アビス・クラーケン》
【名無し:でっっっっか!?】
【クラゲ:ボスじゃん!!】
【探索者A:温泉回とは】
「おもしれぇ!!」
りくが笑う。
そのまま水を蹴る。
「《裂破脚》!!」
回し蹴り。
衝撃波。
触手をまとめて吹き飛ばす。
でも、触手の数が多い。
「うおっ!?」
逆方向から、別の触手が飛ぶ。
りくの腰へ巻き付いた。
「ちょ、まっ――」
ぐいっ。
「うぉぁっ!?」
バランス崩れる。
黒ビキニが引っ張られて、さらに胸元が危ない。
【名無し:りくちゃん!!】
【クラゲ:えっっっっ】
【探索者A:配信BANライン!!】
「ナギ見んなぁ!!」
「見えてるのお前のせいだろ!?」
『サービスシーン助かります』
「お前ほんと自由だな!?」
さらに、別の触手が、今度はエイトへ伸びる。
『え、ホログラムにも来るんです!?』
ぺちっ。
触手、普通にエイトをすり抜ける。
『ですよねー』
「何やってんだお前」
その時だった。
巨大な触手が、今度は俺へ振り下ろされる。
速い。
でも。
『マスター』
ナナの声。
『右』
身体が動く。
回避。
そのまま踏み込む。
水面を蹴る。
拳を叩き込む。
ゴォンッ!!
触手粉砕。
【名無し:ナギ復活してる!!】
【クラゲ:つよ】
【探索者A:病み上がりじゃないの!?】
「先輩っ!」
ひよりが嬉しそうな声を出す。
「ナギ!!」
りくも笑う。
なんか、いつもの感じだった。
ダンジョン。
配信。
騒がしい仲間。
危険なのに少し楽しい。
『確認しました』
ナナが静かに言う。
『マスターは現在、かなり自然に戦闘しています』
「そう?」
『はい』
少しだけ間。
『……ナナは、少し安心しています』
その瞬間。
地下湖の奥。
巨大な扉が、ゆっくり開いた。
ゴゴゴゴゴ……。
【名無し:え?】
【クラゲ:また奥への扉?】
【探索者A:この展開何度目?】
そして、その扉の向こうから聞こえてきたのは……。
――女の笑い声だった。
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