表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第二章 水着回のはずなのに世界の謎が増えていく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/40

第21話 最古参リスナーがなんか現地参戦してきた

「退院、おめでとうございます!」


 ひよりが拍手した。


「そこまで大げさなイベント?」


「大げさです!」


 病院のロビー。


 俺はようやく退院許可をもらっていた。


 全身まだちょっと痛いけど、普通に歩けるくらいには回復している。


『マスターの回復速度は異常値です』


「それ、もう褒めてないだろ」


『事実です』


 イヤホンから、いつものナナの声。


 相変わらず淡々としている。


 でも、《Guardian Type-Ω》との戦いを経て、ほんの少しだけ声が柔らかくなっている気がした。


『なお、無理をすると再入院の可能性があります』


「はいはい」


『具体的には全身筋断裂、神経損傷、魔力循環――』


「怖い怖い怖い」


「先輩、ちゃんと安静にしてくださいね!?」


 ひよりが本気で心配そうだった。


 そこへ。


「よっしゃああ!! オレも退院だぁぁ!!」


 病室に響き渡るりくの声。


 ガラッと扉が開く。


 ギプスは減っていたけど、まだ包帯だらけだった。


「医者に止められてなかった?」


「気合で突破!」


「絶対怒られるやつ」


『褐色筋肉個体、生命力が異常です』


「言い方ぁ!」


 りくが笑う。


 その後ろから、りくの母親が出てきた。


「気合で突破じゃないわよ!」


 バシィッ!!


「いってぇ!?」


 豪快なツッコミ。


 父親がおろおろしている。


「き、君……病院では静かに……」


「うるさい!」


 いつも通りだった。


 騒がしい。


 でも、なんか嫌いじゃない。


『マスター』


「ん?」


『現在、心拍数が安定しています』


「健康診断?」


『違います』


 少しだけ間。


『……安心しています』


 小さい声だった。


 でも、ちゃんと聞こえた。


     ◇


「で、これからどうします?」


 ひよりが聞いてくる。


「帰る」


「ですよね」


「配信は?」


 りくが聞く。


「数日は休む」


『えー!?』


 エイトが騒いだ。


『視聴者が禁断症状起こしますよ!?』


「知らん」


『“ナギ成分不足”で世界が危険です!』


「スケールでかいな」


 そんな話をしていた時だった。


「あ、あの……!」


 後ろから声。


 振り返る。


 そこにいたのは、赤フレームの眼鏡をかけた少女だった。


 平均くらいの身長。


 焦げ茶色の髪をゆるいハーフアップにしている。


 少しオーバーサイズ気味のパーカー。


 ロングスカート。


 肩には、アニメイベントとかで物販並んでそうな、オタク感のある大きめトートバッグ。


 しかもバッグには、小さい缶バッジがいくつか付いていた。


 緊張してるのが、遠目でも分かる。


「あ……」


 見覚えがある。


 確かこの子は……俺史上最悪の黒歴《参加者3人地獄のオフ会》にきていた……。


「……あまねこ?」


「っ!?」


 少女が固まる。


 顔が一気に赤くなった。


「お、覚えてるんですか!?」


「そりゃ最古参だし」


「~~~~っ!!」


 しゃがみ込んだ。


「え、ちょ、大丈夫?」


「だ、大丈夫じゃないです……! 認知された……!」


 なんか限界オタクみたいなこと言ってる。


「え、えっと……はじめまして……!」


 少女が慌てて立ち上がる。


「茂菅 天音です……!」


 ぺこっと頭を下げる。


「どうも」


「その……本当に、生きててよかったです……」


 声が少し震えていた。


 本気で心配してたっぽい。


「病院まで来たの?」


「うぅ……」


 なんか泣きそうになってる。


『解析結果』


 ナナが静かに言う。


『重度のナギオタク個体です』


「ナナちゃん!?」


 天音がナナのセリフに反応した。


「え、えっと! いつも配信で聞いてます!」


『認識しています』


「っ!?」


『最古参リスナー、“あまねこ”です』


「ナナちゃんにも認識されてるぅ!?」


 忙しいなこの人。


 でも、次の瞬間、天音のスイッチが入った。


「い、いやでも! 当然ですよね!?」


「何が?」


「だってわたし、初期配信から全部見てますし!」


「全部?」


「はい!」


 早口になった。


「登録者3人時代の“深夜カップ焼きそば雑談回”とか、“二層で30分迷子になった回”とか、“コメントゼロで一人でしゃべってた回”とか、全部リアタイしてましたし!」


「やめろ、それは黒歴史!」


「あと初期のナギさん、今よりちょっと声低いんですよ!」


「そうだっけ」


「あと疲れると右肩から壁に寄りかかる癖あります!」


「怖っ」


『確認しました』


 ナナが割り込む。


『マスターは疲労時、右側へ体重を預ける傾向があります』


「ナナちゃんも張り合わないで」


「で、でも! ナギさんが第四層初めて行った時、実はちょっとテンション上がってたの、私はわかってしたからね!」


「嘘だろ」


「“へー”って言いながら、ちょっとだけ声上ずってました!」


「観察力どうなってんの」


 天音が胸を張る。


「ナギさんオタクなので」


「堂々と言うなぁ」


『ナナは配信時以外もマスターに常時接続しています』


「それズルくないですか!?」


『合理性です』


「うわぁ、AIつよい……!」


 完全に押されてる。


 でも、なんか楽しそうだった。


 ひよりが、じーっと天音を見る。


 新たなライバルとして認識したっぽい。


 りくも腕を組んでいた。


「へぇー」


「な、なんですか!?」


「いや別に?」


 完全に牽制してる。


 空気が、ちょっとだけバチバチする。


『マスター』


「ん?」


『ヒロインの個体数が増加しています』


「数えるな」


『現在、混沌としています』


「お前のせいでもあるだろ」


『否定します』


『いや絶対お姉ちゃんのせいもありますって』


 エイトが笑う。


 その時。


 天音が、意を決したみたいに顔を上げた。


「あ、あの!」


「はい」


「もしよかったら……また配信してください!」


 その目は、完全にファンの目だった。


 でも、少しだけ、それだけじゃない気もした。


「待ってる人、いっぱいいるので!」


 俺は少しだけ笑う。


「……まあ、そのうちな」


 その瞬間、天音の顔が、ぱぁっと明るくなった。


 わかりやすい人だなぁ。


『確認しました』


 ナナが静かに言う。


『マスターは現在、かなり好かれています』


「今さら?」


『はい』


 少しだけ間。


『……ナナも安心しました』


 その声は、ほんの少しだけ嬉しそうだった。


お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。

小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ