第2話 なんか一晩でバズってた
「……うわ」
視聴者数。
58,431。
意味が分からない。
【名無しの探索者:気づいたwww】
【切り抜き職人:おせーよ!】
【クラゲ:やっと気づいた】
【あまねこ:ナギさん!!!!】
「いや待て待て待て」
コメント欄がとんでもない速度で流れていく。
スマホが熱い。
通知も鳴りっぱなし。
【通りすがり:AI彼女ってマジ?】
【考察班A:中央管理AIは存在したのか】
【S級観測民:協会案件だろこれ】
【名無しの探索者:伝説の瞬間に立ち会ってる?】
「ナナ」
『はい、マスター』
「お前、これヤバいやつ?」
『現在の状況は“炎上”に近いと推測されます』
「推測じゃなくて断言してくれ」
【クラゲ:草】
【あまねこ:ナナちゃん冷静すぎる】
『ですが好意的意見も多数確認できます』
「そういう問題じゃない」
コメント欄の勢いがさらに加速する。
【名無しの探索者:声かわいすぎ】
【通りすがり:ナナちゃんって名前なの!?】
【名無しの探索者:配信切り忘れ伝説始まったな】
「切るぞもう」
【クラゲ:待って】
【あまねこ:待ってください】
【切り抜き職人:歴史的瞬間なんだが?】
『配信終了を確認しました』
「まだ切ってない」
俺より先に反応するな。
配信を切る。
数秒遅れて、
静かになった。
「……疲れた」
『お疲れ様でした』
「お前は元気そうだな」
『マスターとの会話時間が増加したため、処理状態は良好です』
「お前、だいぶ重いよな」
『重量の話でしょうか?』
「違う」
ベッドへ倒れ込む。
スマホ通知はまだ止まらない。
SNS。
DM。
切り抜き。
意味分からん速度で増えていく。
「これ明日絶対めんどくさいやつだ……」
『肯定します』
「肯定すんな」
SNSのトレンドを適当に眺める。
【おすすめトレンド:#AI彼女】
【おすすめトレンド:#配信切り忘れ】
「終わったなぁ……」
『マスター』
「んー?」
『“AI彼女”とは何でしょうか』
「知らなくていい」
『検索します』
「やめろ」
数秒後。
『理解しました』
「理解するな」
【AI彼女:高度な好意を向けるAI存在の俗称】
『……なるほど』
「納得するな」
なんか嬉しそうだった。
「寝るぞ俺」
『睡眠を推奨します』
「わかってる」
『本日のマスターは睡眠不足です』
「監視AIめ……」
『観測AIです』
「似たようなもんだろ」
スマホを枕元へ置く。
部屋の電気を消した。
静かになる。
……はずだった。
『マスター』
「んー」
『質問があります』
「明日にして」
『短時間で終了します』
「……なに」
『“また会おう”とは』
「ん?」
『マスターは、ナナとまた会う予定だったのですか?』
「まあ……そのつもりだったけど」
『……そうですか』
少しだけ。
声が静かになる。
『ナナも同意します』
「ん」
『マスターとの会話は快適です』
「そりゃどうも」
『なので』
少し間。
『明日も会話を継続します』
「重いなぁ……」
『“AI彼女”ですので』
「覚えるの早すぎるだろお前」
思わず笑う。
すると。
イヤホン越しに、
小さく電子音みたいな音が鳴った。
なんか。
機嫌よさそうだった。
◇
翌朝。
「……うわ」
スマホ通知。
99+。
終わってる。
【登録者数:124→18,402】
「は?」
一晩で増えすぎだろ。
SNSを開く。
『ナナちゃんかわいい』
『AI彼女うらやましい』
『あの配信者なんであんな強いの?』
『S級探索者より動きおかしくなかった?』
「そっちもバレてんのかよ……」
『当然です』
「いたのか」
『常駐しています』
「怖っ」
その時。
スマホが震えた。
【着信:非通知】
「……やだなぁ」
『高確率で面倒事です』
「出なくていい?」
『推奨します』
でも。
スマホは鳴りやまない。
仕方なく通話に出る。
「……はい」
『ダンジョン管理協会です』
「うわ本物だ」
『大豆島凪さんですね?』
あ。
本名バレてるやつだこれ。
『昨日の配信について、お話を伺いしたいのですが』
「ですよねー……」
ベッドへ倒れ込む。
めんどくさい。
すごくめんどくさい。
でも。
『マスター』
「ん?」
『ナナも同行可能です』
「どうやって?」
『通信接続です』
「お前、どこにでも来るな……」
『最優先観察対象者ですので』
「はいはい」
天井を見上げながらため息を吐く。
なんか人生変わった気がする。
しかも一晩で。
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本作はカクヨムでも連載中です。
小説家になろう版は、本日5話まで投稿し、明日からはしばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
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