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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第一章 ダンジョン管理AI(たぶん美少女)が俺の配信に現れた

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第1話 なんかAI(たぶん美少女)が喋った

小説家になろうでは初投稿になります。


現代ダンジョン×配信×AIヒロインのラブコメです。

気軽に読んでいただけましたら嬉しいです。

「――はい、どうも」


 ダンジョンの第三層を歩きながら今日も配信を始める。


『ナギのだらだらダンジョン配信』


 同接は12。


 平和。

 まぁ、いつも通りだ。


「今日は第三層をぶらぶらします。適当に素材拾って終わりかも」

 

 フォーマット通りの説明したら後はだらだらと散歩をするだけ


「ふあぁ~」


 無意識にあくびが出る。眠くなってきたし、やっぱ素材だけ拾ってとっとと終わろう。

 

【しろまる:また散歩配信】

【クラゲ:寝る前に助かる】

【あまねこ:第三層の空気好き】

【ねむ太:今日も眠そう】


「眠いから、たぶんすぐ終わる」


【しろまる:相変わらずのナギクオリティwww】

【クラゲ:こっちが寝落ちするまで続けて】

【あまねこ:そのテンションでよく探索できるなぁ】


 コメントは流す。

 

 スマホ型の配信端末を肩に付けたまま、俺はダンジョンの通路を歩く。


 第三層は探索し尽くされているので安全だ。


 青白い通路を歩く。


「お?」


 とりあえず足元に転がっていた鉱石を適当に拾ってみると……。


 淡く光る小さな石。

 魔力結晶。


「これって、今、割と高値で取引されてるやつだよな?」


 リスナーに問いかける


【アルト:当たりじゃん】

【しろまる:晩飯代】

【あまねこ:配信収益より稼いでそう】


「それを言うな」


 実際、配信収益はしょぼい。


 登録者数も少ないし、同接も基本2桁。


 でも別に困ってはいない。


 なんとなく続けてるだけだ。


 配信しながら歩くの、嫌いじゃないし。


【クラゲ:ナギって謎に強運ですよね】

【ねむ太:素材拾ったから配信終わり?】

【あまねこ:今日は雑談ナシですか?】


「雑談はなし。トランスポーターまで戻ったら配信は終わり」


 言いながら通路を曲がる。


 その瞬間、通路の奥の小型モンスターと目が合った。


《ハウルファング》

 犬みたいなやつ。


「グルルルッ!」


 一匹が地面を蹴った。


 速い。


 普通の探索者なら、

 たぶんちょっと焦るやつ。


「くっ」


 でも。


 なんか避けられた。


 自分でもよく分からないまま、

 体が勝手に横へ流れる。


 飛びかかってきた《ハウルファング》の爪が、鼻先を掠めた。


 そのまま、避けた勢いで足が出る。


 ゴッ。


「ギャウッ!?」


 一匹が壁まで吹き飛んだ。


 巻き込まれたもう一匹も、「キャンッ!?」と変な声を出しながら転がる。


【アルト:今の避け方なんだよ】

【しろまる:相変わらず動きがキモイ】

【あまねこ:ナギさんってモンスターの動きを先読みしてる?】


「してない」


【S級観測民:いや今のは先読みとかじゃない】

【S級観測民:ありえない】


「勝手に体が動いてるだけ」


【クラゲ:それを才能と言います】


 いつものようにリスナーと他愛もないやりとをしていると、突然、耳元で声がした。


『――接続確認』


「ん?」


 足が止まる。


【ねむ太:?】

【アルト:今なんか聞こえた?】

【あまねこ:女の人の声!?】


 俺も聞こえた。


 女の声だった。

 

 周囲を見渡して声の主は見当たらない。


 見当たらないが、この声の主は……たぶん美少女だ。


「おーい、誰かいるのか?」


 呼びかけると


『音声認識を確認』


 また声だけが聞こえた。


 あらためて周囲を見る。


 誰もいない。


「……幽霊?」


【クラゲ:え?】

【ねむ太い:怖っ!】

【あまねこ:演出じゃないのこれ!?】


『……会話成立を確認』


 少し間が空いた。


 なんというか。


 向こうも戸惑ってる感じがした。


「待てよ? この声ってもしかして……」


 俺は壁にもたれかかる。


 この声は幽霊なんかじゃない。


 俺の予想が正しければ……


「最近のダンジョンってしゃべれるんだ?」


 俺が予想を口にするとコメント欄がざわつく


【アルト:はっ!?】

【しろまる:イミフwww】

【あまねこ:ダンジョンがしゃべれるわけ……】


『マスターの認識を肯定』


【あまねこ:本当にダンジョンがしゃべってるってこと?】


「で?」


『マスターによる設問の意図が理解できません』


「とりあえず、名前、教えてよ」


『個体名称は未設定です』


「名前ないの?」


『管理番号は存在します』


「何番?」


『Central Dungeon Management AI : No.07』


【アルト:ダンジョンの管理AIってこと?】

【クラゲ:管理AIの噂は聞いたことあるけど……】

【あまねこ:これって国家機密とか、そういうレベルの情報なんじゃ……】


「長い!」


『わたしの管理番号が長い……ということでしょうか?』


「そう! なんたらかんたらAIのナンバーセブンだっけ? 7番だから……ナナって呼ぶわ」


 ぴたりと声が止まる。


 数秒。


 本当に数秒。


【しろまる:適当すぎる】

【ねむ太:犬猫感覚】

【あまねこ:でもナナちゃんはかわいい】


『名称登録を確認』


「おー」


『個体名、“ナナ”』


 ほんの少し。


 声が柔らかくなった。


『……ナナ』


「ん?」


『呼称を認識しました』


「気に入った?」


 また沈黙。


 でも今度は。


『否定はしません』


【クラゲ:かわいい】

【アルト:今ちょっと照れたろ】

【あまねこ:急にヒロイン力高くない?】


「へー」


 俺はまた歩き始める。


「ナナは何するやつなんだ?」


『中央ダンジョンの管理権限を保有しています』


「わからん」


『ダンジョン全域の監視・制御・管理を担当しています』


「偉いやつじゃん」


『……はい』


【しろまる:なんでちょっと嬉しそうなんだ】

【クラゲ:褒められてると思ってる?】

【あまねこ:かわいい】


『マスターは……』


「ん?」


『わたしを……ナナを恐れないのですね』


 少しだけ。


 不思議そうな声だった。


「別に悪いやつじゃなさそうだし」


『…………』


「むしろ丁寧だし」


『……丁寧、ですか』


「うん」


 すると。


 イヤホン越しに、小さくノイズが鳴った。


 なんか。


 照れてるみたいだった。


【アルト:今の間なんだ】

【クラゲ:絶対嬉しいやつ】

【あまねこ:このAI、絶対あとで感情バグる】


『……会話の継続を要求します』


「暇なの?」


『不明』


「ふーん」


 俺は通路を歩く。


 奥からモンスターが飛び出してきた。


 例にもよって《ハウルファング》が二匹。


 飛び掛かってくる二匹をさっきと同じ要領で片づける。


【しろまる:またキモイ動きしてる】

【アルト:S級でもあんなふうに動けないでしょ】

【あまねこ:そもそも人間にできる動きじゃないです】


「そうか?」


 俺にとってはいつも通りの出来事でしかないわけだが。


『最適行動を確認』


「最適行動? さっきのが? 別に意識してやってるわけじゃないんだけどなぁ」


『マスターを極めて優れた個体と認識し、常時観測を行っています』


「観測って……やめろよ、恥ずかしい」


【クラゲ:監視AIだ】

【ねむ太:でも声かわいい】

【あまねこ:ナナちゃん、もうだいぶ懐いてない?】


『懐く=従順という意味なら……肯定します』


「コメント読めるのか?」


『配信情報へ接続済みです』


「怖っ!」


『観測の一環です』


「ったく、俺なんかを観測して何が面白いんだよ」

 

 思わず悪態をつく。


 でも。


 なんか嫌じゃなかった。


 むしろ、話しやすい。


 変にテンション高くないし。


『マスター』


「ん?」


『マスターと話していると演算処理に伴う負荷が軽減されます』


「は? それって、リラックスしてるってこと?」


『……近い可能性があります』


【クラゲ:AIが癒やされてる】

【アルト:意味わからん】

【あまねこ:ナナちゃん完全にナギさん特効では?】


「特効ってなんだよ」


『特効=特定対象へ高い効果を発揮する状態』


「律儀に調べるなぁ」


『マスターとの会話は、他の個体との通信よりも優先されます』


「そりゃどうも」


 歩きながら、

 トランスポーターのある広間へ向かう。


 青白い転移ゲートが見えてきた。


【ねむ太:もう帰るの?】

【しろまる:今日は短い】

【あまねこ:もっとナナちゃんと話して】


『ナナも継続を希望します』


「お前、順応早いな」


『学習機能を搭載しています』


【クラゲ:かわいい】

【アルト:会話が成立しすぎて怖い】

【あまねこ:でもちょっと癖になる】


 そうこうしているうちにトランスポーターにたどり着く


 名残惜しい気もするが、正直言って疲れた。


「じゃあな、ナナ」


『"じゃあな"とはどういう意味でしょうか?』


「また会おうってことだよ」


 よくわからないけど「ナナとはまた会える」……そんな気がしていた。


 姿の見えないナナを想像して適当に手を振りながらトランスポーターへ乗る。


 視界が白く光った。


 次の瞬間、地上の転移施設へ戻ってくる。


 転移施設からさほど遠くない場所に俺の家はある。


 ダンジョンから帰ると、とりあえず配信端末を適当に机へ置いた。


「疲れたー」


 ベッドにダイブ


 そのまま眠りにつきそうになる俺に意外な人物が声をかけてきた


『明日の起床時刻は何時に設定しましょうか?』


「ん? ナナ……か? うるさいなぁ、俺は疲れてるんだよ……」


 ナナ?


 そうナナの声が聞こえてきたのだ。


 ナナはダンジョンの管理AIのはず。


 ダンジョンの外でなぜナナの声が……。


「おい、ナナ!」


『はい、マスター』


「おまえ……どうして?」


『ナナはマスターを最優先観察対象者と認定しました』


「最優先観察対象者? ……ってか、おまえってダンジョンの管理AIなんだろ?」


『肯定します』


「俺なんかを観察するより、ダンジョンの管理が最優先じゃないのかよ」


『マスターの観察は……現在の最優先事項です』


「はぁっ!?」


『今後はマスターの観察を継続しつつ、ダンジョンの管理も並行で処理します』


 ってことは、俺はずーーっとナナに監視され続けるってことか?

 

 ナナと話すのは嫌いじゃないし……むしろ楽しく感じていたけど……


 さすがに24時間365日プライベートを監視し続けられるというのは気持ちよくない


「あのなぁ、ナナ………」


 俺がナナに抗議しようとした瞬間、ナナが俺の言葉を遮る。


『マスターに伝達事項です』


「伝達事項?」


『マスターの配信端末はアプリが起動したままになっています』


 配信端末のアプリ……?


「げっ!」


 あわてて机の上に放置してある配信端末を手にとる。


【名無しの探索者:誰だこの女の声!?】

【考察班A:いや待て、音声合成じゃない】

【切り抜き職人:録画開始】

【初見です:ナギって女と同棲してたの?】

【通りすがり:同接の伸び方バグってる】

【S級観測民:この配信、協会に見つかったらヤバいやつでは?】

【シオン:……この魔力波形、本当に人工知能?】

【名無しの探索者:え、シオン?本人!?】

【氷姫ファン:本物だああああああ!?】

【ひより:えっ!? ナギ先輩って彼女いたんですか!?】

【古参勢:情報量が多い】

【考察班B:AIって言ってなかったか?】

【考察班C:ダンジョンを管理してるのって中央管理AIだよな?】

【S級観測民:いや待て、それ国家最高機密だぞ】

【通りすがり:なんで一般配信者が会話してるんだ?】

【通りすがり:マスター呼びはヤバい】

【名無しの探索者:完全に彼女】

【ひより:え、でも声かわいい……】

【シオン:……ナギくん、こういうタイプが好みなのね】

【名無しの探索者:シオンさん!?】

【氷姫ファン:世界最強が普通にコメント欄いる!?】

【名無しの探索者:この配信カオスすぎる】

【切り抜き職人:今夜のトレンド決まったな】

【名無しの探索者:#ナナちゃん】

【名無しの探索者:#配信切り忘れ】

【名無しの探索者:#AI彼女】

【クラゲ:待て待て待て】

【あまねこ:ナギさん!!!!配信!!!!】

【アルト:まだ切れてない!!!!】


 ものすごい勢いで流れていくコメント


 左下に表示されている視聴者数が一瞬で跳ね上がっていき……


 12→58,431


 気づけば5万を突破していた 


「……うわ」


『マスター』


「……ん?」


『どうやら配信を切り忘れていたようですね』

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。

小説家になろう版は、本日5話まで投稿し、明日からはしばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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