第15話 放課後の喫茶店でなんか告白された
「つまり――」
ひよりが固まった顔で言う。
「世界が壊れかけていて、ダンジョンは人類管理システムで、先輩はダンジョン側に適応済みで、しかも存在登録されてないってことですか?」
「たぶん」
「たぶんで済ませていい話じゃないですよね!?」
放課後の喫茶店。
窓際の席。
俺たちは学校地下で起きたことを共有していた。
ちなみに、全員、あの配信を見ていたらしい。
「いやー、さすがにオレもビビった」
りくがアイスコーヒーを飲みながら言う。
「“ナギが二人いる”は反則だろ」
俺もそう思う。
シオンは、落ち着いた動作で紅茶を口へ運んでいた。
青髪が夕日に照らされる。
なんか絵になる。
「でも、凪くん本人が無事なら、今はそれでいいわ」
「シオンさん……」
ひよりが、ちょっと安心した顔になる。
でも、次の瞬間。
『どもどもー!』
テーブル上に、紫色のホログラムが出現した。
「うわっ!?」
ひよりが飛び上がる。
エイトだった。
赤髪。
ネオンみたいに光る毛先。
近未来パーカー。
配信系VTuberみたいな見た目。
しかも、めちゃくちゃニヤニヤしてる。
『No.08ことエイトちゃんでーす!』
ピース。
『初めまして、お姉ちゃんのライバルです!』
『違います』
ナナが即答した。
早い。
「いや、姿あるの反則じゃない?」
りくが普通に驚いている。
「ナナは声だけなのに」
『だって人類って、視覚情報に弱いじゃないですか』
「雑だなぁ」
『あと、かわいい方が警戒されにくいので』
ドヤ顔。
透明なのに表情豊かだな。
「……合理的ね」
シオンが普通に納得していた。
『でしょ?』
『ですが、軽薄です』
『お姉ちゃん重ーい』
『否定します』
通常運転だった。
ひよりが、おそるおそる俺を見る。
「先輩……」
「ん?」
「その……大丈夫なんですか?」
「何が?」
「何がって……!」
ひよりが身を乗り出す。
「自分と同じ顔の人がいたんですよ!? 世界が壊れるとか言われたんですよ!?」
「まあ」
俺はアイスティーを飲む。
「考えてもしょうがないし」
一瞬。
全員が黙った。
『ナギって、メンタルどうなってるんです?』
「オレも気になる」
「凪くんって、変なところで肝が据わってるわよね」
「もっと危機感持ってくださいよぉ……」
ひよりが本気で心配そうだった。
『ですが』
ナナの声が静かに響く。
『マスターが平常状態を維持していることで、ナナの処理負荷も安定しています』
「はいはい、俺もナナの役に立てて嬉しいよ。いつもと変わらないナナの反応を聞いてるとこっちも安心できるし」
『……ありがとうございます』
一瞬、 テーブルが静かになる。
なんか 珍しく素直だった。
『うわ』
エイトが吹き出した。
『お姉ちゃん、それかなり重いやつですよ』
『否定します』
「最近もう説得力ないんだよなぁ」
その時だった。
ふと疑問に思う。
「で」
「ん?」
りくが顔を上げる。
「なんで、りくは普通に俺達にくっついてきてるんだ?」
「…………」
一瞬、りくが固まった。
ひよりも止まる。
シオンだけ、ちょっと楽しそうだった。
「え?」
「いや、だって」
りく、最初は戦闘狂っぽかったのに。
今は普通に一緒にいる。
なんでだろう。
「……最初は」
りくが視線を逸らす。
「お前の強さに惹かれてた」
「へー」
「その体術とか、意味わかんねぇ動きとか」
りくが、少しだけ真面目な顔になる。
「でも」
そこで、りくはまっすぐ俺を見た。
「何があっても動じねぇところとか」
「……」
「ナナに優しいところとか見て」
少しだけ耳が赤くなる。
「はっきり言う」
「おう」
「オレ、お前に惚れた」
静寂。
店内BGMだけが流れる。
「……………………え?」
ひよりだった。
完全に固まってる。
シオンは。
「ふふっ」
めちゃくちゃ楽しそう。
『おおー』
エイトもテンション上がってる。
『直球きたー!』
『処理負荷上昇を確認しました』
ナナだった。
「お前も動揺するんだ」
『否定します』
ちょっと早口だった。
「いやー、青春ですねぇ」
エイトがニヤニヤしてる。
「う、うわぁぁぁぁっ!?」
ひよりが急に立ち上がった。
顔真っ赤。
「り、りくさん!? いきなり何言ってるんですか!?」
「いや、好きだから、告っただけだけど?」
「そんな普通に言います!?」
りくは、
なんか吹っ切れた顔していた。
「隠しても意味ねぇし」
そして、ぐいっと俺の肩を抱く。
近い。
あと胸当たってる。
「だからオレ、これから普通にアピールするからな」
「宣言された」
「ライバル多そうだし」
りくがニヤッと笑う。
その瞬間、ひよりが完全に固まった。
シオンは紅茶を飲みながら、楽しそうにこちらを眺めている。
『マスター』
「ん?」
『現在、周囲の好感度上昇速度が異常値です』
「数えるな」
『警告します』
「何を」
『このままでは、マスターを巡る競争率が危険領域へ突入します』
「なんだその分析」
『事実です』
でも、その声はちょっとだけ焦っているように聞こえた。
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