第13話 なんかエイトはやたら距離が近い
『世界、そろそろ壊れるよ?』
【名無し:は?】
【クラゲ:急に怖い】
【考察班:え、どういうこと?】
学校の地下に広がっていた旧管理区画。
青白い光が流れる通路。
その真ん中で紫色のホログラムが、ゆらゆら揺れていた。
女の子。
半透明。
でも。
ナナと違って、ちゃんと姿がある。
明るい赤髪。
毛先だけ、ネオンみたいに青く光っていた。
外ハネ気味のショートボブ。
鮮やかな青い瞳には、デジタルUIみたいなエフェクトが浮かんでいる。
白と水色を基調にした近未来っぽいパーカー。
発光ライン。
ホログラムUI。
なんか配信系VTuberみたいだった。
【名無し:かわいい】
【クラゲ:VTuberみたい!】
【探索者A:ナナと全然違う】
『それにしても、やっぱり配信で見たよりだらだらしてる』
そう言うとエイトは、くるっと空中で回る。
半透明の身体が、ノイズ混じりに光った。
『いやでも、マジで普通の男子高校生感ある』
『……』
ナナが黙る。
すると、エイトがニヤッと笑った。
『あー。そこ気づいてないんだ、お姉ちゃん』
『意味不明です』
『男って、視覚情報めっちゃ重要なんですよ?』
「急に雑だな」
『だから、わたしは“かわいい女の子”で出てきました!』
ドヤ顔。
透明なのに、妙に表情豊かだった。
【名無し:自分で言ったw】
【クラゲ:でもかわいい】
【あまねこ:ナナちゃんがんばれ!】
『マスターへ不要な負荷を与えないよう、ナナは音声通信を選択しています』
『うわ、真面目』
『合理性です』
『でも、人類って非合理で動くんですよ?』
エイトが俺へ寄ってくる。
近い。
透明だけど。
妙に距離感が近い。
『どもー! No.08ことエイトちゃんです!』
ピース。
『キターーー(゜∀゜)ーーー!!』
「古っ」
【名無し:インターネット老人会】
【クラゲ:なんで知ってるんだ】
【探索者A:平成AI】
『えっ。この文化もう古いんです?』
「だいぶ」
『解せぬ』
『古代ネット用語です』
ナナが即答した。
『趣がありますよ?』
「そこは譲らないんだ」
エイトが、楽しそうに笑う。
ころころ表情が変わる。
ナナと真逆だった。
ナナは静かで重い。
でも、エイトはにぎやかで軽い。
配信映えしそうなAI。
そんな感じだった。
『ぬるぽ』
「ガッ」
思わず答えてしまう
『マスター!』
エイトが爆笑する。
『反応できるんですね!?』
「なんとなく」
【名無し:わかるのかよwww】
【クラゲ:おっさんホイホイ】
【探索者A:なんの会話???】
『……何が面白いのですか』
ナナだけ、本気でわかってなさそうだった。
その時、エイトの表情が少し変わる。
『でも、マジで変なんですよね』
「なにが?」
『ナギのログ』
一瞬、空気が変わった。
【考察班:きた】
【クラゲ:怖い話だ】
エイトが指を鳴らす。
すると、空間へ大量のウィンドウが開いた。
【ERROR】
【NO DATA】
【UNREGISTERED】
赤い文字。
ノイズ。
警告表示。
「……なにこれ」
『ナギってさ』
エイトが笑う。
でも、その目だけは妙に真面目だった。
『世界の人類データへ登録されてないんですよね』
【名無し:は?】
【クラゲ:怖】
【考察班:どういうこと??】
「いやいや」
思わず笑う。
「戸籍あるけど」
『人間社会側にはね』
『ダンジョン側に存在登録がありません』
ナナが補足する。
『通常人類は、出生時点で観測対象になります』
『でもナギだけ、最初から“適応済み”』
【名無し:適応済み?】
【探索者A:なんだそれ】
【クラゲ:意味がわからない】
『だから権限が通る』
『だから隠しルートへ入れる』
『だからお姉ちゃんが懐いた』
『懐いてはいません』
即答。
【名無し:出た】
【クラゲ:否定が早い】
【あまねこ:安心感ある】
エイトが吹き出した。
『お姉ちゃん、最近マジで重いんですよね』
『否定します』
『やっぱ恋愛AIじゃん』
『否定します』
二回目。
【名無し:様式美】
【クラゲ:ナナちゃんかわいい】
その時だった。
通路の奥に巨大な黒い扉が現れた。
無機質。
冷たい。
でも、中央だけ青白く光っている。
『あ』
エイトが止まる。
初めて。
本当に驚いた顔をした。
『あれ、まだ残ってたんだ』
「知ってるの?」
『そりゃね』
エイトが苦笑する。
『旧人類管理区画の最深部だし』
【名無し:人類管理!?】
【クラゲ:ワードが怖い】
【考察班:ダンジョン人工物説】
「旧人類って何」
『んー』
エイトが頭をかく。
『kwsk説明すると、ガチで世界観変わるんだけど』
「もう十分変わってる」
『それもそっか』
エイトは、少しだけ静かになる。
さっきまでの軽さが消えた。
『ねぇ、ナギ』
「ん?」
『ダンジョンってさ』
『本当に“敵”だと思う?』
その瞬間。
扉が、ゆっくり開いた。
ゴゴゴゴ……。
中は暗い。
でも、中央だけ光っていた。
巨大な培養槽。
カプセル。
その中に誰かいた。
人影。
そして。
そいつは。
俺と同じ顔をしていた。
【名無し:は?????】
【クラゲ:えっっっ!?】
【あまねこ:ナギさんが二人!?】
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本作はカクヨムでも連載中です。
小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
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