第12話 なんかもう一人の管理AIが現れたんだけど
「またそれ?」
思わず口に出してしまう
教室。
凍った《ミラークロウ》。
逃げ惑う生徒。
その中で、ナナだけが静かだった。
『マスターのみ、侵入許可を確認しました』
「だからなんで俺限定なんだよ……」
『管理権限の都合です』
「その説明で納得したことは一度もないんだけど」
【名無し:またナギ限定】
【クラゲ:主人公イベント】
【探索者A:完全に選ばれてる】
【あまねこ:怖いけど気になる……】
シオンが細剣を下ろす。
長い青髪が揺れた。
「私も地下へ行くわ」
「えっ」
「原因を放置できないもの」
そりゃそうか。
学校にモンスターが湧いてるわけだし。
でも。
『推奨しません』
ナナだった。
珍しく、少し強い声。
『現在の未確認領域は、マスターの単独行動が最適です』
「単独?」
「え!?、ちょっと待ってください!」
ひよりが慌てる。
「先輩ひとりとなんて危ないです!」
【名無し:ひよりちゃん心配してる】
【クラゲ:完全に彼女】
【あまねこ:ひよりちゃんがんばれ】
「オレも行くぞ!」
りくが即答する。
その目は完全に戦闘モードだった。
「未知ダンジョンなら、強いモンスターもわんさか沸いてそうだしな」
「わかりやすい正確してるな、お前」
【名無し:りくwww】
【探索者A:戦闘狂だ】
【クラゲ:でも頼もしい】
しかし、ナナは譲らない。
『拒否します』
一瞬、空気が静かになる。
シオンの青い瞳が細められた。
「……理由は?」
数秒。
沈黙。
そして。
『この領域は、マスター専用の構造です』
「俺専用?」
『正確には――』
少しの間。
『適合率が異常値です』
【名無し:異常値】
【クラゲ:どうなってるんだよ】
【考察班:ナギ人類じゃない説】
「……なるほどね」
シオンは、ナナの言いたいことを理解しているようだった。
「ナナさんが言ってること、わかるんですか?」
ひよりがシオンに問いかける。
「ええ。たぶん」
シオンが俺を見る。
「凪くん。あなた、自分で思ってるより“ダンジョン側”なのよ」
「“ダンジョン側”?」
【名無し:どういう意味?】
【探索者A:伏線っぽい】
【クラゲ:シオンさん意味深】
りくが割り込んできた。
「なにそれ? 超気になるんだけど」
「説明が難しいのよ」
「説明してくれよ!」
元気だなこの人。
その時、床が揺れた。
ゴゴゴ……。
「うわ」
教室後方。
床の一部へ、青白い線が走る。
まるで隠し扉。
【名無し:うわあああ】
【クラゲ:学校壊れてる!!】
【探索者A:完全にイベント】
【あまねこ:ナギさん気をつけて!】
床が開く。
地下へ続く階段。
暗い。
そして。
空気が冷たい。
「……行けばいいんだろ」
『肯定します』
「お前さぁ」
シオンが近づいてくる。
長い青髪が肩に触れそうになる。
「無茶しないで」
「すると思います?」
「する顔してる」
【名無し:距離近い】
【クラゲ:シオンさん完全に正妻感】
【あまねこ:近いです!!】
りくも前へ出た。
「おいナギ!」
「ん?」
「帰ってきたら、さっきの動き詳しく教えろよ!?」
「覚えてたらね」
「オレとの約束だ! だから……絶対に帰ってこい!」
【名無し:りくかわいい】
【探索者A:もしかしてツンデレか?】
【クラゲ:武術オタクw】
ひよりは、ちょっと不安そうだった。
「先輩……」
「んー?」
「ちゃんと帰ってきてくださいね」
「たぶん」
「たぶん禁止です!」
【名無し:ひよりちゃん不安そう】
【クラゲ:守りたい】
【あまねこ:ナギさん……帰ってきて……!】
なんか。
普通に心配されてるな。
そして。
『マスター』
「はいはい」
『ナナが同行しています』
「それは知ってる」
【名無し:ナナちゃん通常運転】
【クラゲ:安心感ある】
【探索者A:いや一番怖い】
階段を降りる。
暗い。
静か。
学校の地下とは思えない。
まさか学校の地下にこんなダンジョンが広がっていたなんてな。
◇
地下は広かった。
壁。
床。
天井。
全部が黒い金属みたいな素材。
しかも。
ところどころ、青白い文字みたいな光が流れている。
【名無し:未来施設!?】
【クラゲ:SF始まった】
【探索者A:学校の地下とは】
「SFだなぁ」
『旧管理区画を確認』
「旧?」
『現在は使用停止済みです』
「怖い単語増えた」
【名無し:管理区画?】
【考察班:ダンジョンって人工物?】
【クラゲ:設定が急にデカい】
その時だった。
突然、空間へノイズが走った。
ビィィッ!!
「うわっ」
目の前に紫色のウィンドウみたいなものが開く。
【名無し:!?】
【クラゲ:新キャラ!?】
【探索者A:ナナじゃない!?】
そこに“何か”が現れた。
女の子。
半透明。
紫系の光。
長い髪。
その子はニヤッと笑うと口を開いた。
『え、待って。もしかして、そこにNo.07いる?』
「知り合い?」
『最悪』
ナナが即答した。
早い。
【名無し:最悪www】
【クラゲ:仲悪そう】
【探索者A:姉妹AI?】
紫色の少女が、画面越しにこっちを見る。
そして、目を丸くした。
『うわ。マジで男じゃん』
「なんだと思ってたんだよ」
『No.07の妄想』
『否定します』
ナナの声が早い。
【名無し:草】
【あまねこ:ナナちゃん押されてる!?】
紫色の少女が笑った。
めちゃくちゃ楽しそう。
『あー……No.07、重いやつになってる』
『否定します』
『いやいや、その感じ完全に恋愛AIじゃん』
『否定します』
二回目。
【名無し:恋愛AIwww】
【クラゲ:言われてるぞ】
【探索者A:否定が早すぎる】
「お前、誰?」
聞く。
すると。
少女は、またもニヤッと笑った。
『《Central Dungeon Management AI : No.08》』
そして。
『エイトって呼んで』
【名無し:No.08!?】
【クラゲ:新AIきたあああ】
【考察班:ナナの妹ポジ?】
軽い。
ナナと真逆だ。
『うわー、配信で見たよりだらだらしてる』
「初対面で失礼だな」
『でもNo.07……今はナナって呼ばれてるんだけ? こいつがハマるの、なんとなくわかるなぁ』
『否定します』
「お前、今日それしか言ってなくない?」
【名無し:ナナちゃんw】
【クラゲ:完全にいじられてる】
【探索者A:エイト強キャラ感ある】
エイトが、楽しそうに笑う。
でも、次の瞬間、その目だけが、少し真面目になった。
『ねぇナギ』
「ん?」
『世界、そろそろ壊れるよ?』
【名無し:は?】
【クラゲ:急に怖い】
【考察班:え、どういうこと?】
お読みいただきありがとうございます。
本作はカクヨムでも連載中です。
小説家になろう版は、しばらく1日2話ずつ投稿していく予定です。
続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




