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ゾス(営業戦士として死にたかった)  作者: 印具米


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イカリ通信の闇

 登場人物 

 永江滋樹(新宿支店長 営業マン時代の異名は「歌舞伎町の風雲児」)

 黒木(同支店 チーフ)

 山田(同支店 新人営業マン)


株式会社「イカリ(錨)通信」。

 事務機器販売を手掛ける創業10年の新興企業。倍々ゲームで成長を続け、今や売上高は年間1000億超、3年前に東証プライム上場を果たし、大学生人気企業ランキングの上位に食い込んでいる。人気を集める要因は何といってもその破格の給与にある。大卒初任給は20万円と、人手不足の今の時代にあっていささか見劣りするものの、業績給がプラスされると入社初年度で年収1000万を超える者も少なくない。そして30歳にもなると平均年収は何と3000万円を優に超える。これは東証プライム上場企業の所得ランキングにおいてぶっちぎりトップであり、第2位企業の倍近い額である。もっとも同社においては新入社員のうち30歳時点で居残っている者は僅か1割に過ぎず、残りの9割は途中で社を去っている。退職理由の多くは職務に由来する精神疾患であり、そうした精神的疲弊により自ら死を選んだ者の数は片手を超えているという噂が同社周辺では飛び交っている。

 給与が高い分、労働は過酷である。イカリ通信では職務上問題ある社員に対して、指導という名の暴力が日常的に行われている。これは公然の秘密であり、この会社にコンプライアンスという概念は存在しない。もっとも当然、こうした暴力問題が外部に漏れることはある。しかしイカリ通信のバックには巨額献金を受けた大物政治家がついており、行政は見て見ぬふり、メディアは沈黙といった状態である。かつて登場人物 

 永江滋樹(新宿支店長 営業マン時代の異名は「歌舞伎町の風雲児」)

 黒木(同支店 チーフ)

 山田(同支店 新人営業マン)

同社の暴力問題を追及したジャーナリストが二人いたが、いずれも謎の不審死を遂げている。一人は多摩川で水死体として、もう一人は富士の樹海で首を吊った状態で発見された。いずれも警察は事件性を否定している。また某大手新聞社が「イカリ通信の光と影」というタイトルで同社の暴力問題を連載記事として取り上げ好評を得たが、翌年その新聞社には国税の調査が入り多額の追徴課税がなされる結果となった。さらに、この暴力問題を面白おかしく取り上げていた人気ユーチューバーは、電車内で若い女性の下半身を触ったという罪で、同車両にたまたま乗り合わせていた刑事に現行犯逮捕され1年以上勾留された。本人は一貫して容疑を否認し、結局、裁判では証拠不十分で無罪となったものの、長期の身柄拘束は彼の精神を蝕み、釈放後、その姿は表舞台から消えた。なおこのユーチューバー男性はその後、同性愛者であったことが判明している。


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