銃声にかき消され
カナの悲鳴は署の中まで響き、聞きつけた警官たちは慌てて屋上へと駆け上がった。
「どうした!?何があった?」
真っ先に駆けつけたシオヒキの前にはへたりこんでいるカナと、望遠鏡を覗きこんでいる木村がいた。
「シオヒキさん、ヤバいです…ゾンビが集まりだし、こっちに向かってます!」
屋上に集まった警官たちは無言で頷き合い、一斉に階段から降りて行った。
「ゾンビが攻めて来た!各自、配置に着き迎撃せよ!」
タダシと木村も準備に取り掛かろうと動き出す。
しかし、シオヒキは二人を制止した。
「お前らは一般人の護衛部隊だ!わかったら、さっさと行け!」
そう言い残し、シオヒキは走り去ってしまった。
タダシと木村は顔を見合せ、すぐにシオヒキの後を追おうとするが他の警官から呼び止められる。
「お前ら!一般人を地下へ誘導する!早く手伝え、グズグズするなよ!」
二人が知らないうちにシオヒキによって護衛チームに配属されていた。
「クソ、なんだって俺ら外されてるんだよ?」
「知るか、シオヒキさんの事だ…何か考えがあるんだよ」
苛立つ木村をなだめながら、タダシは来た道を振り返る。
「…気のせいか」
「タダシ、どうした?」
「人の気配を感じた…ような気がしただけだ。先を急ごう」
その頃、警官たちは署内屋上、正面、裏口の三ヵ所に部隊を分かれ迎撃体勢に入っていた。
シオヒキは手練れ数名と屋上からゾンビの群れに攻撃を開始!
使用する武器はH&K MP5、スコープ越しに狙いを定める。
SATのような特殊部隊にしか使用許可がおりていない…と思っているのは一般人だけ。
圧倒的な火力でゾンビたちを次々と撃ち倒す。
それを避難せずにこっそり隠れて覗いていたアカシたちは、自分たちで作った武器等、必要とされない理由を思い知る。
「あんなの隠し持ってるなんて、卑怯ッス」
「…それより、さっきの画像の件を伝えないと」
「この状況じゃ、それも難しいですよ。まず、騒ぎが収まらんことには」
仲間の一人が冷静に意見を述べると、アカシは急に拍手し始めた。
「素晴らしい!冷静沈着ッスね、斉藤君。やはり、これを使うのは斉藤君が相応しッス」
急に褒められ、困惑する斉藤にアカシは火炎放射機を手渡す。
「こ、これを僕に?」
「斉藤君なら使いこなせるかも知れないッス」
期待していると言わんばかりに満面の笑みを浮かべるアカシ…喜ぶ斉藤を尻目に、レナは無言でアカシを見つめる。
レナは小さな声でアカシに尋ねた。
「実戦で使えるレベルなの?」
「さぁ、どうッスかね」
アカシは顔色1つ変えず、人差し指で下がってきた眼鏡を直して歩を進める。
「さぁ、せっかくの機会ッス。我々が開発した武器がゾンビに有効か試してみるッス!」
止めれば良いのに…そう口にする者も思う者もいなかった。
レナですら、投石機ならゾンビに対して十分に威力を発揮できる。
そう、疑うことなく思っていたのだ。
一方、その頃…シオヒキはスコープ越しに見るゾンビたちに違和感を感じていた。
どのゾンビも目から血を流している…これまで、数体のゾンビと対峙したが初めて見る。
それに、様々なゾンビがいるにも関わらず、個性無くただただ向かってくるだけ。
まるで、誰かに操作されているようだ。
「…胸騒ぎが、止まらんな。二人を行かせたのは正解だったかも知れん」
シオヒキの言葉は銃声にかき消され、仲間たちの耳に届くことはなかった。




