もう、胸騒ぎしかしない
少し、時間を巻き戻す。
シオヒキはタダシと共にワタルに依頼されていた防犯カメラの画像を開こうとパソコンの前に座っていた。
しかし、何故か○△ホテル周辺のカメラ画像だけが開かない。
「どうなっている…プロテクトがかかっているのか?」
困惑するシオヒキに代わり、今度はタダシがアクセスを試みる。
「ダメですね…もっと詳しい人に頼まないと」
匙を投げた2人が溜め息混じりに部屋から出ると、アカシとレナ、その他数人が廊下に立っていた。
タダシはあからさまに嫌そうな顔をし、アカシたちの横をすり抜けようと歩を進める。
「溜め息なんかついて、何かお困りッスか?」
「…君たちには関係ない事だ。あまり署内をウロウロしないようにと伝えてあるハズだが、守れないなら出ていっても構わんよ」
シオヒキの言葉にアカシは返答せず眉をひそめる。
2人が立ち去った後、アカシはレナに尋ねた。
「今、あいつらが出てきた部屋開けれるッスか?」
レナもシオヒキの高圧的な態度を不快に思っていたので、良くない事とわかっていながらもアカシに協力した。
部屋に入ったアカシたちは起動したままのパソコンの前に立った。
「画像を開こうとしていたようッスね…アクセスできないッスけど」
「私、やってみるわ」
レナはポケットから取り出したUSBメモリをパソコンに挿し、キーボードを軽やかに叩く。
「画像開くわ」
画面には蹴りで次々とゾンビを倒していく胴着姿の男が映った。
「拡大できるッスか?」
画像を拡大すると男は4体目のゾンビを蹴り倒して、その場を立ち去ろうとしている様子が伺えた。
しかし、男は振り返り何も無い空間を見つめている。
「微かに口が動いているみたいだけど…音声は無しだわ。誰かと話をしている?」
次の瞬間、何も無い空間から黒い物体が現れた!
良く見ると、フード付きのマントのようなモノを着た人のように見える。
顔はおろか、手足も見えない…胴着姿の男は黒いマントの何かに向かって『来いよ』と言うように手を動かす。
すると、黒いマントの中から何かが飛び出した。
それは赤黒い昆虫の手足を思わせる腕のように見える。
腕は胴着の男の顔面を掴み、顔はすっぽり隠れてしまっていた。
一瞬、もがくような動きを見せた後、胴着の男は倒れてしまった。
そして、またマントの姿は何も無い空間に消えてしまった。
騒然とする中、レナは画面を見つめ続ける。
(一瞬、空間が歪んだように見えたけど、鏡のような光を反射する何かで身を隠しているのかしら?どちらにせよ、人と会話ができる『何か』がいるんだわ)
アカシの仲間の1人が、画面を指差す。
「なんか、画面変じゃないか?」
画像はいつの間にか停止し、黒い斑点のようなモノが次々と画面を埋め尽くしていく!
「画像を見ると作動するウィルス!?」
レナはすぐさまUSBメモリを抜きとる。
パソコンの画面は真っ暗で、もはや何も映らない。
「操作もできない…この事を伝えなくちゃ」
立ち上がり、部屋から出ようとするレナ。
「キャー!」
しかし、どこからか聞こえた悲鳴で動きを止める。
「何スか?今の、悲鳴」
「わからないけど、武器を隠してる部屋に行きましょう。もう、胸騒ぎしかしないわ」
走り出すレナに続き、アカシたちも部屋から飛び出して行った。




