激しく亀裂が入り陥没した壁
シオヒキがワタルたちと別れた後、喫煙ルームで一服しながらシオヒキは考えていた。
ワタル君が言っていた話に嘘は無いと思うが…だとしたら、この一件に国レベルの何かがあるだろうか?
海外の大国、日本の大都市共に多大な被害が出ている。
私の知る限りでは、得をしたと思える国は今のところ無い。
カタストロフ的なイカれた思想の宗教団体の仕業とか、そういった訳でもなさそうだが…あの、ゾンビのような奴らを捕獲して調べているとは思うが、今のところ何の報告も無い。
では、ワタル君がバイク事故を起こしたように見せかける事ができるのは?
富士見病院…ここ数年間で開発された新薬は世界中で使われていた。
その薬の副作用?
確信は無いが、刑事の勘とワタル君と話をした私だけの見解…あながち、間違えでは無いのでは?
そんな事を考えている最中、背後に人の気配を感じて振り返る。
そこには、先程ワタルを人殺し呼ばわりしていたアカシの姿があった。
「…何か用ですか?」
守るべき市民…とは言え、シオヒキもアカシに対して良い感情は持ち合わせていなかった。
そんな態度を気にも止めず、アカシは話し出した。
「僕も警察の皆さんに協力したいッス。こないだ、皆さんが持ってきてくれた物資の余り物で作った武器があるッス」
「武器?」
「そうッス!結局、銃はいずれ弾が切れる。とは言え、ワタルみたいな接近戦は皆が皆できる訳じゃない。でも、これを使えば」
そう言って、アカシはリュックサックからボウガンのようなモノを取り出しシオヒキに見せた。
「これは?」
「ボウガンを改良した小型投石機ッス。瓦礫や石等を飛ばし、攻撃できるッス」
シオヒキはまじまじとアカシの言う小型投石機を見る。
「これで、奴らを倒せると?」
アカシはニヤリと笑い、投石機に石をセットし窓を開けると、5メートルほど先にあるコンクリートの壁に狙いをつけた。
そして、発射された石は激突音と共にコンクリートの壁にめり込んだ。
「人間の頭を破壊するには、十分な威力ッス。しっかり計算してあるッス」
「実戦データが無いモノを使うなんて事は無い。ましてや、信頼を欠く人物の提案ならなおのことだ」
得意気に話すアカシに対して、シオヒキは冷ややかな対応だった。
立ち去るシオヒキの背中を見つめ、アカシは舌打ちをする。
それを影から見ていた数人の男女が姿を現し、アカシの元へと歩み寄る。
「ダメだった…みたいですね」
「せっかく、君に作って貰った傑作を…頭の固いジジイには価値がわからないらしいッス。あの壁より、固いんじゃないッスかね?」
アカシの視界の先には、黒髪ボブヘアの少女の姿があった。
少女はアカシの開けた窓を閉め、投石機により激しく亀裂が入り陥没した壁をただ、眺めていた。




