果たしてゾンビと呼べるのか
ゾンビが人間を襲う理由は、満たされない空腹を満たす為に…つまり、食う為に襲う。
それは、ゾンビモノの定番だ。
でも、そうじゃなかったら…思い返せば、兄さんが助けられなかった(助けようとしなかったのかも知れない)ハラグチという人は損傷が激しかったが、原形はあった。
沢山のゾンビに襲われて食べられたなら、手足の1本くらいは食いちぎられていたり、肉が食われて骨が剥き出しになっていたり、内臓が飛び出している方がむしろ自然。
もしかしたら、先入観が邪魔をして食べているようにしか見えていなかったのか?
僕が考えを巡らせている間に兄さんは無言でモニターを眺めていた。
「タダシ、食品コーナーのモニターを見てみろ」
兄さんが指差すモニターを見ると、果物売場の辺りでうずくまっているゾンビが映っていた。
「拡大とか、どうやるんだ?このパソコンでできるのか?」
「兄さん、ちょっと貸して…これでどうかな?」
果物売場のゾンビを別のカメラで映し、更にアップにする。
中年の女性ゾンビはリンゴを食べていた。
「兄さん…雑食ってことかな、ゾンビって」
「そういう事になるか…この女ゾンビは首に噛まれたような痕があるな。正確に言うと、噛みちぎられた感じだ。こんな感じの傷は、これまでも沢山見た。と、言うか…ほとんどのゾンビは首に似たような傷があったよな?」
「うん…もしかしたら、噛みつく行為は仲間を増やすのが目的で、噛みちぎるのは絶命させるのが目的…なのかも」
モニターを見ていて、他に気になるのは汚い話だが、排泄物だ。
それらしいモノは見当たらない。
「確か、こういう類いのモニターは何週間分の録画がされてるよな?」
「うん、多分…兄さん、このCDじゃないかな?」
より、詳しく調べる為にも録画されてる映像を見る必要がある。
「なあ、タダシ…あそこのモニターに映っているのは死体だよな?」
兄さんの指差したモニターを見ると、うつ伏せに倒れた死体らしきモノが映っていた。
頭から血が流れた痕がある…逃げる際に頭部を強打してしまったのだろうか。
「あの死体はゾンビにならない…と、いう事か?」
「ゾンビに殺された人間がゾンビになるって事になるかな…あれ?」
話をしているウチにさっきまでモニターに映っていたリンゴを食べていたゾンビの姿が消えている。
他のモニターにも、さっきまで映っていたゾンビたちが見当たらない。
「兄さん…嫌な予感がする」
「あぁ、階段のカメラにゾンビが数体映っている。2階に上がってきてるな」
館内のゾンビたちはどういう訳か、僕らのいる管理事務所に向かってきている!
「兄さん、どうする!?」
「大丈夫だ。この部屋にある通風口から脱出できる。俺たちなら通り抜けられるサイズだ」
そこまで調べているとは、恐れ入った。
椅子や机を利用し、天井にある通風口の中に入る。
中に入り、少し進んだあたりでドアを殴る音が聞こえ始めた。
「このまま進むと、2階のダクトに行くつく。ここで一旦出るぞ」
兄さんの指示に従い、他の通風口から下を覗き安全を確認してから降りる。
館内の従業員が使う通路のような場所に出た。
「従業員が出入りする通路だ。この通路から脱出しよう」
館内のゾンビは管理事務所に向かった為、ゾンビに遭遇する事なく無事に脱出できた。
ゾンビ…しかし、これらを果たしてゾンビと呼べるのだろうか?
僕らは再びバイクで移動を開始した。




