決着
コンドウゾンビの猛攻にワタルは防戦一方。
そんな中、ワタルは攻撃が上半身に集中している事に気付き致命傷を受けないようにひたすら耐える。
キムラは動かない…気を失ってしまっていた。
シオヒキは腕を負傷し、腕を押さえて座り込んでいる。
タダシは頭を押さえながら、起きあがろうとしていた。
3人がすぐに加勢できる状況ではない。
そして、ワタルは出来れば使いたくなかった戦法を選択した。
「マリでもカナでも誰でも良い!タダシたちの武器を持ってコイツを攻撃しろ!」
単純明快な答え…こちらの方が数の利がある。
救助者8人のウチ、既に3人は死亡しているがアカシ、カナ、マリ、他2名の生き残りがいる。
そのウチ、数名でも動かせれば勝機はあるのだ。
コンドウゾンビは生前同様、戦いに夢中。
不意討ちで隙ができさえすれば、形勢逆転だ。
マリとカナは声を聞き、黒男がワタルだと気づく。
「え!?ワタル君?」
驚くカナ、驚き過ぎて声が出ないマリ…ワタルはカナなら動かせると判断。
「タダシたちが落とした武器を使え!奥からゾンビも来る、早く!」
カナは辺りを見渡す…シオヒキが落としたツルハシを見つけ、手に取った。
ツルハシを構えるカナだったが、コンドウゾンビと目が合い、恐怖で身がすくむ。
ゾンビは人語を理解できないが、音は聞こえている。
コンドウゾンビはカナが何かしようとしている事に勘づいていた。
ワタルからすればカナに攻撃が向けば勝機、カナがどうなるかは別として。
「や、やっぱり…怖い!」
カナが大きな声を出したので、コンドウゾンビのカナに対する警戒心が強まる。
意識がカナに向いた…必ず隙ができる!
身構えるワタルに対してコンドウゾンビはテコンドーの技を繰り出す。
それは、ミロチャギという技。
いわゆる、中段の押し蹴りというもので相手を押し飛ばす技である。
ゾンビ化は知能低下状態…しかし、かの有名な台詞にもある。
『考えるより感じろ』
コンドウゾンビのような格闘センスが極めて高いゾンビだからこそ、本能的な危険回避行動として距離を取りたい=ミロチャギという行動に至った。
打撃に備えていたワタルは予想外の押し蹴りで突き放されてしまった。
コンドウゾンビはその隙にカナへと襲いかかる!
あ、私…死んだ。
カナは死を覚悟して、目を閉じた。
ブシャアァァァァァ!と、噴水から水が噴き出すような音がする…まだ、体に痛みは無い。
「カナ、目を開けて!まだ、終わってないから!」
マリの声で我にかえったカナの眼前には、斧を持った血塗れのマリと、足を切断されたコンドウゾンビの姿があった。
間一髪、タダシの斧を持ったマリが割って入り、運良く斧がコンドウゾンビの足を切り飛ばした。
片足という武器を無くしたコンドウゾンビは、それでも攻撃を続けるべく片足で跳びはねてマリに襲いかかる!
「させるか!」
既に銃を構え直していたタダシがコンドウゾンビを撃つ!
弾丸は顔面に命中したが、倒すには至らない。
しかし、それで充分だった。
背後からワタルのスレッジハンマーがフルスイングでコンドウゾンビに襲いかかる!
鈍い打撃音と共にコンドウの頭は砕け散った。
「…やった!」
思わず歓喜の声をあげるカナを制止するようにワタルが叫ぶ。
「扉を壊して、ゾンビの群れがくる!急げ!」
喜びも束の間、一行は早急にホテルから脱出し近くのビルに身を潜めた。
隠れ見ていると…裏口からは続々とゾンビが溢れ出てきた。
ゾンビたちはしばらくウロウロした後、散り散りになっていった。
外をさまようゾンビ、ホテルへもどって行くゾンビ…行動に一貫性は無い。
その中には、特に損傷の激しいハラグチゾンビもいた。
「…助けられなかったんだ?」
タダシはワタルに問いかける。
「あぁ…助けられなかった。俺は調べたい事がある。皆を連れて先に行け」
「…わかった」
タダシたちはワタルを残し、身を隠したビルを出ていく。
マリはワタルに声をかけたかったが、ワタルが一切こちらを向かなかった為、何も言えなかった。
「マリ、行こう?」
カナに言われ、マリもタダシたちへと続く。
ワタルは周囲を警戒しながら、コンドウがゾンビ4体と交戦した場所へ赴いた。
「やはり、4体倒している…なら、テコンドー野郎をゾンビにしたゾンビは…」
戦ったワタルにしかわからない、コンドウの強さ。
ワタルはバイクを隠した場所へ向かいながら、更に強力なゾンビの存在を危惧していた。




