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ゾンビ待ち  作者: 伊藤両断
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猛攻

(ハラグチ)と扉で稼げる時間など、たかが知れている。


急いでこのホテルから脱出しなければならない。


そう思いながら走るワタルだったが、既に脱出しているハズのタダシたちが視界に入る。


「何をしているんだ?」


小声で呟き、様子を伺う。


どうやら、出口の前にいるゾンビに通せん坊されているようだ。


後ろから大量のゾンビが迫っている…そう考えると焦りを感じるが、ワタルは自分自身に冷静になるように言い聞かせた。


あまり喋りたくないが、この状況は連携をとらないと突破できそうにない…そう判断したワタルは声色を変えてタダシに向け声をあげる。


「銃で頭を撃ち抜け!失敗しても突っ込んでくるなら俺がカウンターを合わせる!」


簡単に言ってくれる…タダシだけでなく、シオヒキとキムラもそう思っていた。


3人が銃を構えると、コンドウゾンビは先程殺害した女の首を掴み上げる。


そして、盾にして突っ込んできた!


「マジかよ!?」


キムラの悲鳴にも似た声が狭い通路に銃声と共に響く。


しかし、銃弾はコンドウゾンビの盾に防がれ、強烈なタックルでキムラとシオヒキが撥ね飛ばされた。


かろうじて攻撃をかわしたタダシは再び銃を構えてコンドウゾンビを狙う…が、女の死体を投げつけられ転倒。


その隙をついて、ワタルがハンマーでコンドウゾンビの頭を狙う。


その攻撃さえもコンドウゾンビは蹴りで受け止めた。


ハンマーと鉄入りシューズのつま先がぶつかり合い、小さな火花が散る。


ワタルもコンドウゾンビも次の攻撃を繰り出そうと動き出す。


ワタルとコンドウゾンビ、どちらが有利か?


答えは、コンドウゾンビである。


そもそもコンドウはテコンドーの日本王者になったことがある人物。


この数年で体を鍛え、ビルドアップしたワタルと違い、幼い頃から鍛え続けてきたのだから当然、ほぼ全てのステータスがワタルを上回っている。


案の定、奇声と共に次々と繰り出される蹴り技に翻弄され、防ぐのがやっとだ。


しかし、じっさいはこの猛攻を防ぐ事ができている事が大健闘である。


ゾンビ以外との戦闘経験が全く無いワタルが、致命傷だけはどうにか避ける事ができる理由…単純に攻撃がワンパターンだからだ。


ゾンビ化のメリットは痛みを感じない分、攻撃にためらいが無い。


頭部以外の部位が破損したり折れたりしても、お構い無しに攻撃を行う。


次にデメリット…知能低下である。


隠れて攻撃を行ったり武器を掴もうとしたり、死体を盾にした事から『考える力』はあるように見えるだろう。


しかし、これは『生物の持つ本能』による行動がほとんどである。


隠れるという行動は擬態と同様、攻撃にも防御にも有効である。


自然界には、擬態する虫や動物が沢山いる。


ベースが人間で、知能が低下しても隠れて行動する優位性は本能的に察しているのだ。


そして。その行動力には個人差があり、筋肉隆々のコンドウゾンビだからこそ。死体の盾や、それを投げ飛ばすという攻防一体の行動ができた。


しかし、攻撃パターンは人間だった時のベースが得意だったモノに片寄る。


喧嘩の1つもした事の無い女子高生がゾンビ化したなら、最初からいきなり噛みつきを狙う。


コンドウの場合はテコンドーの技に片寄った。


テコンドーは上半身を攻撃する技が大半で、ローキックのような下半身を攻撃する技が無い。


もし、生きている時のコンドウとワタルが戦っていたら99%コンドウの勝利だった。


故に不利な状況ではあるが、まだ勝機がある。


シンプルかつ、確実にこの場を切り抜ける方法…ワタルにはそれがわかっていた。

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