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6,石板を追え

「デニム妖魔長!あの男も『ラウムの破片』の一人なのでしょうか!?だとすれば今のうちに」

「待てと言っているだろう。いいか。繰り返すぞ、我々の主任務は偵察だ!絶対に勝手に攻撃をしかけるんじゃないぞ」

デニムはムーっ!と息を吐くとムッサール時空艦に伝魔を飛ばした。


「大尉、ドザール中将への通信回線を開いてくれ」

ムッサール時空艦ではシャル少佐がドザール中将への伝魔通信をドレイン大尉に要請していた。

スクリーンにドザール中将が現れた。

「貴様の作戦終了を祝うための準備をしていたのは知っておろうな!それがすっかり無駄になってしまった!!一体、赤い閃光のシャルを何が足止めしたというのだ。その正体はわかったんだろうな!?」

「申し訳ありません。正体は今のところはっきりしません。ただ、ラウムの欠片と思われる人物の交友関係が明らかになりつつあります。その中でも重要と思われるのがこの女です」

シャル少佐がモニターに映し出したのは莉乃の姿だ。

「何者だ?」

「この世界の女性アイドルスターです」

「こいつと対象者との関係性は?恋人同士か?」

「そこはどうもいまひとつはっきりしません」

「会話からわかるのではないのか!?」

「配下が張り付いていたものの、何やら不思議な粒子に包まれて会話を傍受することができないのです」

「まさかミノンスキー・バリアか?」

「断定はできません。そしてもうひとつ重要な報告があります」

「なんだ?」

「どうやらこの男が合流したようなのです」

シャルはもうひとりの画像を映し出した。

「カオサンと呼ばれているようです」

「ただの浮浪者のように見えるが……?」

「部下からの伝魔を解析にかけたところ、このような姿が現れました」

ドザールの表情が歪む。

「こ、この男は!!生きていたのか!!」


「お前が気に入ったようだ」

石はドーの手の中で静かに佇んでいる。動く気配はまったくない。

「なんだこれ!?どうやって使うんだ!?」

「俺にもわからねえ」

「わ、わかんねえのかよ!?ゲノムがどうとか偉そうに解説してたじゃねえか!」

「それが俺にもわからないんだよ。わからないのにわかるんだよ!」

カオサンが今度は涙目でドーを見る。

「このニオイはなんのニオイなのさ?」

「これは怪しいクスリじゃねえ。インドの薬効パウダーだ。これを混ぜて炊き合わせると記憶がよみがえるんだよ」

カオサンによると仕事仲間の一人に誘われて「夢売り屋」なる店に入ったという。

「初めて見る若い衆だったが、妙に人懐っこくてな。外の人間にゃわからない秘密もきっちり知ってるからよ。てっきり俺はボスに近い人間かと思って信用してしまった。そいつに連れられて……」

「夢を見たわけか?」

「ああ、機械を頭につけられて寝かされた。俺はハードボイルドの凄い二枚目でな、身長190センチのたくましい男でよ。時空から時空を旅してまわる時空海賊なんだよ。」

ドーは笑いだした。

「ぎゃはははは!何言ってんだよ。その顔で時空海賊だってえ~!?」

「笑うんじゃねえ!めっちゃモテるんだぜ。俺の相棒はアイガっていう、すっげえ美人な17歳女子高生型マシンロイドでよ!ぎゃはははははは!!」

カオサンまで一緒になって笑い始めた。二人は涙を流しながら床を転げまわった。

「それでよ。俺には宿命のライバル、スラッシュ・ボーイってのがいるわけよ!」

「ボーイって少年かよ!?」

「ボウイっていうことらしい。ナイフエッジみたいな尖ったやつという意味。宇宙時空でのアダ名さ」

そしてまた二人で笑い転げた。

「それでよ!」

カオサンが涙で顔をくしゃくしゃにしながら言った。

「お、おれの 左腕にはよ、理力をパワーとするサイコブレードが仕込まれてるわけよ!!」

「ドハハハハハハハ!!」

小男のカオサンの貧相な腕にそんなブレードが仕込まれてると思うとドーは笑いが止まらなかった。それはカオサンも同じだ。ミジメな人生を生きる男が隠し持った情けない妄想としか思えない。

「いやーしかし、楽しませてもらった。楽しいな。今度そこへ連れてってくれよ」

「だがよドー、これ、笑ってばかりもいられねえぜ」

「そうだな」

ドーとカオサンは再び起き上がった。ドーは自分の手の中にある石を眺めた。

「笑ってばかりもいられない」

「その、平手ゆり先生は非処女洞窟の場所を教えてくれなかったのか?」

「それが……」


「非処女洞窟」はこの世とあの世の狭間の時空に存在するという。

莉乃が真剣な表情で聞いた。

『先生、どうやってそこにいけばいいんですか!?』

ゆり先生は頷くとドーに向かっていった。

『石板を集めなさい』

『セキバン!?』

『あなたのもとに6人の勇士が集います。手を握ったときに光を発するのでわかります』

『握ってみようよ!』

そういうと莉乃はドーの手を握った。ドーは顔が赤くなった。光は生まれなかった。

『違うみたいね』

莉乃は肩を落とした。ドーもガッカリしたが、安心もした。

莉乃を危険な捜索に巻き込まずに済むからだ。


「なるほど、6人の勇士か……」

「ああ、そのひとりひとりに石版のイメージが刻まれているという。6人が揃ったとき、俺の中に地図が浮かぶのだと。その地図に石版への道筋が刻まれているのだと」

「ん、どういうことだ?6人それぞれがイメージを持っていて、それが揃ったときにひとつのイメージとして地図が現れる。お前の中に降りてくるってことか。非処女洞窟への」

「いやだから、非処女洞窟への地図じゃなくて、石板への地図がわかるらしいんだよ。」

「石板をまずは手に入れなくちゃならないんだな」

「じゃなくて6人の勇士を集めなきゃいけないんだよ」

「勇士を集めると石板への地図が手に入るわけだな」

「ああ、非処女洞窟への地図じゃなくて石板への地図が手に入るから。石板をまず手に入れなきゃいけない」

「なんかそれめんどくさくないか!?」

「そうなんだけど、手がかりそれしかないからしょうがないよ。だから多分、石板を何かに何かしたら非処女洞窟への道が開くとかだろうけど、そこはややこしいから、説明しても理解できないだろうと 先生は思ったんじゃないか?もしくは自動的に道が開けると」

「なんにせよ、とりあえず、手を握ってみるか」

「ああ」

ドーとカオサンは手を握りあった。光は発生しなかった。

「なんだよこれ!?」

「俺も話の流れから、てっきり俺が勇士の一人だと思ったんだけどな。力になれなくて済まねえな」

代わりにこれを……と、カオサンは十字に似た金属をドーに手渡した。

「なにこれ?」

「いいからもってけよ。なんかそんな気がするんだよ」

ドーは十字に似た金属を手に入れた。

「まぁいいや、それで、この石はどうやって使うんだ?」

「それはおまえ、石に聞けよ」

石は今は躍動も光もしない。

ドーは『螺旋石』を上着のポケットに入れた。

「きっとお前を守ってくれる。そんな気がする」


「シャル少佐はなんと?」

「ドザール中将に補給を依頼したとのことだ。なにしろ帰還途中だったからな。魔弾や食料品も底をついている。応援の人員も廻すから偵察任務を継続せよとのことだ」

「応援だって!?」

「どうかしたか?」

「我々3人では手に負えない相手だということですか?これはやはり『ラウムの欠片』に違いない。」

「めったなことを言うもんじゃない!我々の任務は偵察だということを決して忘れるな!」

デニムは雷撃を指先にほとばしらせる。それより先にジーンが強い雷撃を加えた。

「ぐわあっ!何をするっ!」

「そうはいくか!そんなに凄い相手なら、今のうちに俺が一人でやってやる!他のやつになど手柄を渡すもんか!妖魔十字勲章は俺のものだ!!」

「命令違反は軍法会議モノだぞ!待て、待たんかジーン!!」

飛び立ったジーンをデニムが追う。

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