第十二話 触らぬ神に祟りなし
卑弥呼との策の詰め込みも終わり、卑弥呼は式神の準備、私と白亜は才能溢れる乞食を探しに出掛けました。
「……鳥肌が立った」
「へ?」
「……さっきの台詞は臭過ぎ」
卑弥呼の神殿も兼ねているらしい住居から出て、邪馬台国の風景を見ながら歩いていると白亜が急にそんな事を言ってきました。
「臭い? そんな馬鹿な。ちゃんと歯は磨きましたよ。舌べらまでばっちりです。なんなら見てみます?」
「……そんな趣味はない。臭いというのは、台詞そのものが臭いということ」
どういうことなのかサッパリ分からない。言葉に臭いとかあるんですか? 私の考えでは無味無臭で空に溶けるのが言葉なんですけど……。
「……自覚症状なし」
「うん?」
「……何でもない。……それよりも、どうするの?」
「何が?」
「……人探し」
「ああ、人探しの件ですか。うん、とりあえず、邪馬台国で探すのは避けようかと思ってます」
万が一というものがありますしね。誰かに見られれでもしたらこのクニで内乱が勃発します。妖怪(二人)対人間(邪馬台国在住人)という感じで。おお、邪馬台国は滅んでしまいますね。主に落石が原因で。
閑話休題。
「……じゃあ、何処で?」
「そこはほら、私達の得意分野ですよ。そこら辺をブラブラするんです」
「……探し方は?」
「……あ」
ちょっと此処で私達の能力を整理しましょう。
まず、白亜は【岩石を操る程度の能力】。何処からどう見てもこういう何か探す時に役に立つような能力ではない。ぶっちゃけ、戦闘に偏っているような気がする。
そして私は【心を操る程度の能力】。戦闘向けではない精神向きの能力。戦闘にも応用はできますが、どちらかというとそれ以外の用途に長けています。……が、探し物(者?)は得意ではありません。白亜によるともう一つ私には能力があるらしいのですが、それは長年旅をしていても一向に分かる気配がありません。もう二つ目の能力は良いんじゃないかな?
「……何も考えてなかった?」
「この世には気合という概念が存在しましてね。それさえあれば大抵の事はどうにかなったりするんですよ」
「……どうにかなるというだけで、最高の結果には成りえない」
「最善は尽くそうと思うんですがね」
人の潜在能力を知る能力なんてありませんが……まあ、なんとかなるでしょう。たぶん。
はい、どうにかなりませんでした。五日ぐらい徹夜でクニというクニをそれはもう全速力で駆け回り、飛び回りましたがそんな都合に大変よろしい人間など見つかりませんでした。
白亜には、
「……そもそも気合でどうにかなるのはココロの場合、自分の事だけ。……他人の事は気合だけじゃどうにもならない。……ココロは己の限界を知るべき」
と、説教されました。言われる事はご尤もで、反論の余地など全く無かったです。それだけに、白亜の言葉は身に染みました。
そもそも私は経験値が足りないのです。長年を本を読んで過ごし、関わりのある生物は白亜だけ。会話した事があるのも白亜だけ……のはず。旅に出ても白亜が一緒にいて、できない事など無かった。なんというか……私自身のできる行動の幅が把握しきれてないんですよね。戦闘においてもそれは同じです。……危ういですね。
まあ、そんな私自身の問題点は追々考えていくとして、今は卑弥呼の問題です。
本当にどうしたものでしょう。
才能とは、ほとんどの場合埋め込まれている事が多いのです。ですが、垂れ流しにしている人もいます。そう言う人は天才です。そして、垂れ流して尚且つ普通に生活をしていられるのは化け物です。私達は今、そこまでの才能を探している訳ではありません。埋れているぐらいで良いのです。
ですが、だからこそ見つけにくい。埋れていたら分かり難いのです。
「……白亜、人の潜在能力とか探れません?」
「……一瞬じゃ無理」
「私もです。……これはもう、あれですね」
「……何か思いついた?」
「直感で勝負しましょう」
直感で勝負。これを白亜に言った時は白亜に呆れられたものですが、この方法の合理性を説いたらとりあえず納得してくれました。
直観というものは馬鹿にできません。
瞬時に物事を察知し、感じ取るのが直感。
今回の場合で言う直感とは、その人物に『生物的な危機』を覚えるかどうかです。生き物というのは自分の生死に対して目聡く敏感に感じ取るのです。そして、私達がそれを感じるという事は、その人物は相当な潜在能力……言わば化け物ということになります。そこまで求めていないのですが、この際しょうがない。いや、別に悪くはないんですけどね。
「問題は、直感がどこまで当てになるか。それと、やはり当初の問題に戻りますが見つけられるかどうか、です」
「……一つ目に関しては問題ない。強いか弱いか、それを直感で見分けることは鬼として容易。……しかし、二つ目となると運だよりになる」
「ですよねぇ……」
とはいえ、チマチマ探していても埒が明かないのも事実。ここは直観に任せて一気に探した方が良い。
「という訳で、人が多い所に行きましょう」
「……邪馬台国以外の?」
「ええ、【大和王権】に行きます」
因みに、現在地は邪馬台国より大分東北の方です。そして、大和王権はここからかなり南西、飛んで行っても二、三日は掛かるでしょう。
まあ、邪馬台国を出て既に一週間ぐらい経っているのでそこまで気にしなくてもいいんですけどね。
「……でもココロ、一つ問題がある」
「なんですか?」
「……ここまで来る時はなんとなく避けてたから言わなかったけど、大和に最短で行くなら避けられない」
「何がです?」
「……諏訪。祟り神が治めるクニ」
私は興味で動く事が多々あります。それはもう周知の事実でしょう。ですが、興味はあっても動かないことだってあるのです。藪を突いて蛇を出すという言葉もありますしね。
【ミジャクジ信仰】
聞いた話では、ミジャクジは祟り神で白蛇の形をしているというではありませんか。本当の意味で藪蛇を出したくないです。
ですから、行きは避けたんですが、帰りはそうもいかないんですよね。妖怪が神の領域を侵して良い事などある筈もありませんからね。
「……で、どうする? 突っ切る?」
「そのまま突っ切ったら確実に祟り殺されますよ? 神という存在がどういうものかは知りませんが、妖怪である私達には分が悪いでしょう?」
「……弱小の神なら私達でも余裕で勝てる。……ミジャクジも例外ではない。……だが、それを統括する者には勝てない」
「洩矢神ですか……。祟り殺される前に睨み殺されそうですよね」
まあ、迷っていても進展はしませんし、どの道やる事は決まっているですけどね。てか、考えるまでもない。
「鬼のこの性分は、時に障害になるでしょうね」
「……?」
「本来ならここまで危険を冒してやる事でもないでしょう? 別に急いでいかなくても良い筈なんですよ」
「……私達は嘘が嫌い。つく奴も嫌いで、吐く奴も嫌い。……卑弥呼は『なるべく早く』と言って、私達はそれを承諾した。……承諾した以上、必ずやり遂げる。それが、鬼」
「まあ、そういうことでしょうね。やれやれ、束縛される事は大っ嫌いなのですが、まさか自分自身に縛られる羽目になるとは。……性分なので仕方のない事ですけどね」
兎に角、私達は先を急ぐ為にこの危険なクニに入る。約束を果たす為だけに。
「と、その前に」
「……酒盛り?」
「その通りです。いやー、ここ数日、全くお酒を呑んでいませんからね。お蔭で鬼無瓢にはお酒が大量に溜まってますよ」
私の酒虫ちゃんが張り切って作りまくってしまいましたからね。しかし、時期が悪くその頃にちょうど私達が真面目に人探しを始めてしまったので、呑めなかったんですよ。お蔭で酒虫ちゃんの機嫌が悪くなっちゃって……。ですから、今日は危険地帯に踏み込む前にパーッと呑むのです。
「……ココロも素面になってる。……珍しい」
「え、私って普段は素面じゃないんですか?」
「……うん、酔うと目が細くなる。……逆に、酔ってない時はパッチリ」
それは知りませんでしたね。まあ、自分の酔った時の特徴など知れる筈もないんですけど。
「……酔ってない時の方がかっこいい」
「む、そうですか? ありがとうございます。まあ、かっこよくてもお酒は呑みますけどね?」
「……酒は好き。……酒虫の酒は特に」
「よし、じゃあ今日は呑みまくりますよ」
ま、気張っても仕方ない。お酒呑みながら常にのらりくらりと過ごす。それが、私です。
東方心綺楼プレイしました。以下はネタバレ要素あるのでご注意を。
霊夢でラスボス倒したばっかりなんですが、衝撃を受けました。
秦こころ
鬼無心
名前がかぶっとるやないですか。びっくりしました。こっちの漢字なので完ぺきにかぶってることはないんですけどね。
この秦こころというキャラ、この小説で出す場合、名前が同じということでひと悶着ありそうですね。
ではではノシ




