↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鎧を脱いだら、世界が変わった』  作者: ムファッサー
第一章 鎧の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/158

第7話 鎧を着ると、弱くなる?


 ダンジョンを出たソアは、街へ向かって歩いていた。


 その手には、大きな袋。


 中に入っているのは――。


 壊れた鎧。


 壊れた剣。


 壊れた盾。


 そして、魔物から回収した素材。


「……重い」


 袋を引きずりながら、ソアはため息をついた。


 以前なら、とても運べなかっただろう。


 だが今のソアは違う。


 身体が軽い。


 力もある。


 敏捷も高い。


 昨日までとは、まるで別人だった。


「やっぱり……《全解除》を使ったからかな」


 ソアは歩きながら考える。


 呪いは消えた。


 その直後から、身体能力が異常なほど高くなった。


 ならば、原因は《全解除》。


「……でも」


 ソアは首をかしげた。


「なんで装備まで全部なくなったんだろう」


 思い出す。


 鎧。


 剣。


 盾。


 服。


 全部。


「……うぅ」


 顔が赤くなる。


「思い出したくない……」


 あの姿で戦ったことを思い出すだけで恥ずかしい。


「絶対に、もう使わない」


 ソアは改めて心に誓った。


     *


 街に戻ると、ソアは真っ先に馴染みの鍛冶屋へ向かった。


「おじさん!」


「おう。……って、なんだその袋は?」


「私の鎧」


「鎧?」


「うん」


 ソアが袋を開く。


 鍛冶屋は中を覗き込んだ。


「…………」


「…………」


「……ひどいな」


「やっぱり?」


「何と戦ったんだ、お前」


「すごく強い魔物」


「なるほどな」


 鍛冶屋は壊れた胸当てを持ち上げた。


「直せなくはない」


「本当!?」


「ただし、時間はかかるぞ」


「どれくらい?」


「胸当てだけでも数日。肩や腕まで合わせるならもっとだ」


「お願いします!」


 ソアは即答した。


「この鎧、気に入ってるんです!」


「……そこまでボロボロでもか?」


「もちろん!」


 鍛冶屋は呆れたように笑った。


「変わった嬢ちゃんだな」


「よく言われます!」


「褒めてねえよ」


 それでも鍛冶屋は、壊れた鎧を丁寧に受け取った。


「できるところから直しておく」


「お願いします!」


 ソアは深々と頭を下げた。


     *


 数日後。


「できたぞ」


「おおっ!」


 ソアの目が輝いた。


 修理された胸当て。


 肩当て。


 腕当て。


 脚甲。


 完全に新品というわけではない。


 傷も残っている。


 それでも。


「最高……!」


 ソアは嬉しそうに鎧を抱きしめた。


「やっぱり鎧はいいなぁ……」


 そして。


「よし!」


 ソアは久しぶりに全身鎧を身につけた。


 ガシャッ。


 胸当て。


 ガシャッ。


 肩当て。


 ガシャッ。


 腕当て。


 ガシャッ。


 脚甲。


 最後に兜。


「…………」


 ソアは満足そうに頷いた。


「やっぱりこれだよね!」


 身体を動かしてみる。


 一歩。


 二歩。


 軽く跳ぶ。


「……あれ?」


 ソアが止まった。


「なんか……重い」


 当たり前だった。


 以前もこの鎧を着ていた。


 だからこそ、それだけなら不思議ではない。


 だが。


「……前より、明らかに重い」


 ソアはその場で軽く走ってみた。


 遅い。


 剣を振る。


 遅い。


 ジャンプする。


 低い。


「…………」


 ソアは首をかしげた。


「おかしいな」


 数日前。


 あれほど軽かった身体が。


 今は鎧に押さえつけられているようだった。


 ソアはステータスを確認した。


【体力:普通】

【筋力:普通】

【敏捷:低い】

【魔力:普通】

【精神:普通】


「…………」


 目をこする。


 もう一度見る。


【体力:普通】

【筋力:普通】

【敏捷:低い】

【魔力:普通】

【精神:普通】


「…………戻ってる」


 レベルは4のまま。


 なのに。


 あれほど高かった能力が、元に戻っている。


「どうして?」


 ソアは腕を組んだ。


 考える。


 考える。


 そして――。


「……鎧?」


 ソアは自分の胸当てを見た。


「まさか」


 半信半疑で、胸当てを外してみる。


 すると。


 ほんの少しだけ、身体が軽くなった。


「……ん?」


 肩当ても外す。


 さらに軽くなる。


 腕当ても外す。


 もっと軽くなる。


「…………」


 ソアの顔が険しくなった。


「まさか……」


 全部外してみる。


 身体が一気に軽くなった。


「……やっぱり」


 ソアは自分の手を握った。


 少しだけ力が戻っている。


 しかし、あのときほどではない。


「……壊れたときは、もっと強くなった」


 ソアは床に並べた鎧を見つめた。


 そして、ひとつの仮説を立てる。


「鎧が壊れると……強くなる?」


 しかし、すぐに首を振った。


「いや、それなら……」


 新品の鎧を着たときに弱くなる理由が分からない。


 ソアは考え込んだ。


「……もしかして」


 鎧を身につける。


 弱くなる。


 外す。


 少し強くなる。


 また身につける。


 弱くなる。


「…………」


 ソアは腕を組んだ。


「鎧を着ると、スキンブーストの効果が消える?」


 その言葉を口にした瞬間。


 ソアは固まった。


「……スキンブースト」


 自分の固有スキル。


 今まで意味がよく分からなかったスキル。


 もしかすると。


「装備がなくなるほど……強くなる?」


 だが。


 そこまで考えて、ソアはすぐに首を振った。


「……いやいや」


 自分の大好きな鎧を見る。


「そんなの困る」


 ソアは真剣な顔で言った。


「私は鎧が好きなんだから」


 強くなるために鎧を捨てる。


 そんな選択肢は、ソアにはなかった。


「強さより、鎧!」


 即答だった。


 そしてソアは、もう一度全身鎧を身につけた。


 ガシャッ。


「うん!」


 満足そうな笑顔。


「やっぱりこれ!」


 ステータスは低い。


 身体も重い。


 それでもソアは嬉しそうだった。


 ――ただ。


「……でも」


 ソアは小さく呟いた。


「壊れたときに強くなるなら……」


 少しだけ目を細める。


「どうしてなんだろう?」


 その疑問だけは、頭から離れなかった。


 そして。


 ソアはまだ知らない。


 《スキンブースト》には、もう一つ重要な性質があることを。


 一度身につけ直した装備は、積み重なった強化を元に戻してしまう。


 それを知るのは、もう少し先の話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。