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85:蟲毒の蟲

 またブックマークを頂けました、ありがとうございます。自分がこんななろう系読みたいなーで書いているので、俺もそうなんだよって言われてる気がしてすごくありがたいんですよね。だから感謝の気持ちを忘れずに、その気持ちを続きを書くことで返せるように、のんびり気ままに書いていきます。

「演劇の指導ですか、いいですよ。教師陣は最大限生徒に協力するのが学園祭の決まりですもの」

「ありがとうございます、ノエル先生」


 さっそくノエル先生の協力を得ることが出来た。まあここはノエル先生の言う通りなのであまり心配はしていなかったが。


「けれど演目を2種類ですか…、芸術科の生徒に脚本を頼むと?」

「ええ、どこまで協力してもらえるかわかりませんが脚本だけでもお願い出来ればと思いまして」


 ド素人の魔法科が演目を2種類も自分たちだけで用意できるわけがない、演技を練習する時間も欲しい。セリフはいざ飛んでしまっても風魔法のメッセージを使えば演者に伝えることができるが演技は魔法ではどうにもならない。


 そして2種類用意するのにも理由がある。魔法による舞台効果、例えば英雄譚ならば派手で、目立つ演出が必要だし、恋物語ならば落ち着いた、情感のある演出が必要だ。つまり演目を1種類に絞ると魔法の適性や技量、得意不得意によって属人性が強くなってしまう。客によって物語の好みも違うだろうし、それらを解決するための2演目。


「そうですか、1人適任の子が思い浮かびます。アルクさんとフレアさんが向かえば協力してくれるでしょう」

「俺とフレアですか?」

「ええ、お二人のファンなので」

「俺達のファン?」


 そう言ってノエル先生は一人の女性の名前を教えてくれた。芸術科文芸専攻、12歳にして芸術科の入学試験を突破した天才少女、ストーリア。


 芸術科は魔法科と同様に学費や寮費などあらゆる費用が免除されている。これは国の施策というよりも貴族達の施策だ。一流の芸術を愛好するのは貴族としての嗜み、であるならば一流の芸術を生み出す支援は貴族の責務である。そういった貴族達の寄付によって芸術科の運営費用は賄われており、であるからこそ実力が無くては芸術科には入学できない。コネがあろうと、傑作誕生の糧にすらなれない者に入学の資格はない。


 ノエル先生からストーリアを紹介された次の日、今日も放課後に魔法科で集まって学園祭の話し合いをするためストーリアに話してみるならお昼の内にしておければベストだろう。そう考えた俺は午前の講義終了後、フレア議長に応援要請を上げてみる。


「そういうわけらしいのでフレアちょっと付き合って」

「私もいかないと行けないの?話を聞く感じ私達のファンってことならあなただけでもいいんじゃない?」

「なんか俺達が一緒のほうがいいらしい」

「ふーん?まあいいわよ。そのストーリアって子の協力が得られたら大きいし」


 フレアは不思議そうにしている。なぜ2人のほうがいいのか、俺は2人で一緒の方がいいと言われてなんとなく察した。推察の通りならすごいめんどくさい可能性が高い、けれど他の奇人変人を動かそうとするぐらいなら一番面倒がない。俺とフレアを生贄に捧げるだけでいいのだから。


「えっと、眼鏡をした三つ編みの子でだいたいこの時間なら食堂の隅っこで昼食を取ってるらしいけど」

「あ、あの子じゃないかしら?」


 そう言ってフレアが指刺した先、確かにノエル先生に教えられた特徴に合致する子がいた。青い髪の子って言ってたし間違いないだろう。


「うん、あの子で間違いなさそうだね」

「そ?じゃあ私が話しかければいいのね?」

「うん、お願い。男性は苦手らしいから」


 フレアと2人で行かなくてはならない、けれど男性は苦手ということで交渉役はフレアに任せて俺はさながら従者のように後ろについていく。まあ、それに公爵令嬢として教育を受けてきたフレアの方が交渉事には向いているだろう。


「ごきげんよう、あなたがストーリアさんでよろしいのかしら?」

「えっ…フレア様…?あっ!は、はい!私はストーリアです!ど、どんな御用でしょうか!?」

「そんな緊張しなくていいわよ、魔法科としてあなたにお願いしたいことがあってこっちのアルクさんとお邪魔したのだけれど」

「えっ…アルク様…?」


 そう伝えられたストーリアの目がこちらを向く。うん、フレアに話しかけられて全くこっちに気付いてなかったみたいだな。目があったのでお辞儀ぐらいはしておこう、こっちがお願いする立場だし。


「…い、いやあああああああああああ!!!???」

「「は?」」


 俺がお辞儀から頭を上げた直後、ストーリアは食堂を走り去ってしまった。今まで食べていた昼食は取り残され、一目散に、風のように、一瞬で、交渉、決裂。いや交渉始まってすらいなかったけど。


「…どうするのよ、これ。私達が2人で行けば協力してくれるんじゃなかったの?交渉にすら入れなかったけど」

「…ノエル先生に文句言っとくか。まさか交渉にすら入れないとは」


 教員室に向かいノエル先生にクレームを付ける。2人でいったら悲鳴を上げて逃げて行ったんですけど?なに笑ってんですか!交渉にすら入れなかったじゃないですか!!


「ごめんなさいね、そこまで重症だと思わなくて。そうね、放課後に少し時間をくれるかしら?私がストーリアさんを教室に呼び出すから2人は逃げ道を塞いで貰える?」

「え、監禁…?」

「少しの間話をするだけよ。まず逃げられないようにしないと2人が話をできないでしょう?」

「まあそうですね…、魔法科の打ち合わせがあるので皆に事情を説明したら向かう形で大丈夫ですか?」

「ええ、そのぐらいの時間は稼いでおきます。少し遅れるぐらいで丁度いいでしょうし」


 放課後、魔法科の皆に事情を説明してノエル先生に指定された教室へ向かう。議長代理はメイに任せた。


 教室に着くと中からノエル先生の話し声が聞こえる、どうやら上手く時間を稼いでくれたようだ。教室の出入口は2つ、俺とフレアは手分けして両出入口を塞ぎ扉をノックする。


「ああ、来たわね。どうぞ、入って」

「…?ノエル先生、来たって?」

「「失礼します」」

「!?、い、いやああああ!!??」


 悲鳴と共にストーリアは逃げ道を探すが出入口には俺達がいるため逃げ場はない、俺かフレアを正面突破するしかないわけだがまあ魔法使いでもない12歳の女の子にそれは無理なわけで。


「あっあっあっ…もう無理ぃ…」


 逃げ場がないことを察したストーリアはその場で意識を手放した。なるほど眠りの世界に逃げたわけね。


 …めんっどくせぇ!!

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