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85.5:推し×2=キャパオーバー

 家の仕事手伝いたくないなぁ…、ずっと物語書いて生きていけないかなぁ…、ベルデ学園の芸術科に入れたらそれができるかな?そう思って受験したら受かっちゃった。なんか天才少女とか言われてる…、入学試験で妄想書いただけなんだけど。でもそれで受かるってことはやっぱり私天才少女なんじゃないかな!?


 そんなことを思いながら迎えた入学式当日、開式前に芸術科で集められたけど何この人達怖い…。ずっと奇声を発してる人、瞬きもせずぶつぶつ言いながら絵を描いてる人、ずっと石にノミをガンガンぶつけてる人、え、これから入学式なのに何してるのこの人たち、怖い。怖すぎる。同級生これなんですか…?やだぁ…。


「ふえぇぇ…」


 ベルデ学園芸術科は天才が集まるって聞いてたけどもう心が折れそう。作品どうこうじゃなくて、同級生が怖すぎて。でも、ベルデ学園なら魔法科がいる、魔法が見れる!英雄譚を書くなら、冒険譚を書くなら!魔法を見ておけたら妄そ…物語を書くインスピレーションになるはず!私は天才少女!それなら貴重な機会を前に心折れちゃいけない!よし!心補強できた!


「キエエエエエエエエ!!」

「ひええええええええ!?」


 ベルデ学園怖いよぉ…。家業を手伝いたくないからなんて理由で受けるんじゃなかったぁ…。あ、入学式が始まるみたい、流石に式が始まったら静かになるよね?


「じゃあ芸術科の皆さん、入場してもらいます。席は最後方で、防音結界を使って皆さんを覆うので歌唱の練習も創作もご自由になさっててください」


 わぁ、至れり尽くせりだぁ。つまり式が始まってもこの人達は静かにならないんですね…。しかも入ったらこれ席じゃなくてスペースっていいませんか?椅子が明らかに足りてないんですけど?ああ…そもそも座る人が少ないんだ、みんなスペースに到着したら好き勝手してる…。私は座りますぅ仲間だと思われたくないぃ。


 そんな心ボロボロにされる入学式、魔法科の生徒たちが入場してきた。先頭の子が今年の主席の子らしい、すごい綺麗な子…、堂々としてて、自信に満ち溢れて、品があって、本の中でしか見ないようなお嬢様、こんな子現実にいるんだぁ。


 そんなお嬢様は王様にとんでもないお願いをしていた、次席の男の子との決闘。何をかけて行われるのかは部外者の私じゃわからない。けどそんな大変なことじゃないのかもしれないと思ったのは、男の子とお嬢様の表情を見ればわかる。壇上から降りる時、呆れた顔をする男の子と、いたずらに成功したような笑みを見せるお嬢様。あ、いい、振り回すお嬢様と振り回されながらも付き合う男の子すごくいい、エモい。


「決闘…見に行かないと…」


 魔法を使えるエモい2人の決闘、見ないわけにいかない。魔法も使うだろうし、エモい2人の決闘なんて見なかったら後悔する、だって未来の天才作家少女ストーリア(仮定)の糧になるから!


 そう思って会場から出てすぐ決闘場に向かって最前列を確保した。私は小柄だから前に入れてほしいと言ったらみんな入れてくれた。ありがとうございます!ありがとうございます!


「すごい…」


 魔法に詳しくない私でも2人の凄さが分かった。派手な魔法の打ち合いなのかな?って思ったらそんな単純なものじゃない、2人とも剣をぶつけあいながら、魔法をぶつけあいながら、男の子の方は時折武器も変えながらあの手この手で戦っている。


 強そうな魔法を使ってるのは女の子、男の子の魔法はそんなに強そうに見えない。けど女の子の魔法が当たらない、全部避ける、全部防ぐ、剣戟をしながら回避してる。あれどうやってるの…。


「今年の魔法科新入生はやべぇな…」

「聞いたか?あの次席の子、Cランク冒険者らしいぞ。しかも魔法は初級しか使えないらしい」

「は!?あの年でCランク!?初級魔法しか使えないのに!?」

「あっ…あのっ!私にもその話聞かせてもらえませんか!?」

「お!?おう!?ああ、芸術科の子か」


 隣で話をしていた騎士科の人たち、漏れ聞こえた内容があまりにも物語にしか思えないので思わず話しかけてしまった。男の人は苦手だけど、それ以上に内容が気になる!


 主席の子はフレア・レイン公爵令嬢。お嬢様だと思ってたけど公爵令嬢だったの!?上級魔法も使えて剣術も天才的な完璧お嬢様。うわあ、自信に溢れた人だとはおもったけどそれだけ天才なら自信は溢れて止まらないだろうなあ。


 次席の子はアルク・スティング伯爵子息。なんでも入学前にも関わらず冒険者として活動していて少し前にCランク冒険者になったらしい、全適正という天性の才に恵まれたけれど、初級魔法しか使えないという才能があるのか無いのかわからない子。


「あの2人の剣術は騎士科の俺達から見ても異常だな。男の方なんて剣術だけじゃない。槍術も、弓術も、拳闘術も修めてるみたいだ」

「どっちもあの年で魔法戦闘が出来てる時点で優秀なのに、別属性の多重発動が当たり前、しっかり効果的に魔法を使ってる。天才なんて域じゃ収まらねえな」

「ふええそうなんですね…」


 戦いの専門家からみてもやっぱりすごいんだあの2人…。そりゃそうだよね、素人の私からみても凄いもん。


 そうやって騎士科の人に色々教えて貰いながら見ていると男の子の方が決闘に勝利した。騎士科の人達は魔法を使えないからこそ、武術という点で高い技量を見せた2人を気に入っているみたいだった。武術を修める大変さは知っている、努力をしたからこその技術、ただ魔法という才能に恵まれただけで威張るような嫌な魔法使いとは全く違うと言っていた。そういう人もいるんだ…。


 そんな決闘から少し経って、今日はダンス講義の初回。なにかインスピレーションに繋がるかもしれないから受講してみた。そんな講義にフレア様とアルク様がいた。2人は貴族だからダンス初級は選択科目なのになんで受けたんだろう?あ、同級生と一緒に受けたんだ、いいなぁ…、私の同級生はアレだからなぁ…。


 そして講義時間が残り少しとなった所で、2人がダンスのお手本を見せてくれることになった。それはすごい助かる、話で聞いただけじゃイメージしにくいし、実際に見れた方が私も創作に活かしやすい!


 ノエル先生の指示で始まった2人のやり取り、アルク様が甘い言葉でダンスに誘って、あの自信にあふれてたフレア様が顔を真っ赤にして照れている、え、何それ可愛い。美人なのにそんな可愛いってずるい。アルク様も照れてて少し対応がぶっきらぼうになってる。え、何それ尊い。


 2人のダンスは凄く綺麗だった、時に激しく、時に穏やかに、曲に合わせてステップを踏む。ああ、これがダンスなんだ、曲のモチーフになっている物語は読んだことがある。それがダンスになるとこうなるんだ、すっごく面白い。けど私はそんなダンスそのものよりもフレア様とアルク様の2人に夢中だった、みんながダンスの感想を言い合ってる中で、2人は先ほどのダンスの出来を話し合ってる。フレア様は明らかに照れ隠しでアルク様のダンスを褒めない、アルク様は素直に受け取ってうーんと考え事をしている。え、エモ。


 よし決めた、2人を推そう。フレ×アルか、アル×フレか、まだ悩むけど一作かけそう。えへへ、いい妄そ…作品が書けそう!


 あれ、ダンス講義ってそういえば今後みんなと踊るんだよね…?ってことは私がアルク様と踊るってこと…?


 …解釈違い!解釈違いだよ!フレア様とアルク様がその組み合わせ以外で踊ってるのも見たくないもん!


「ダ、ダンス講義、受けるのやめようかな…?うん、そうしよう」


 もうダンスを見るっていう目的は果たしたし!芸術科は芸術に関することだと言えば大抵のことは許されるって教授いってたし!大丈夫大丈夫!


 そう決めてノエル先生に事情を話したらすごい笑われた。うぅ…私には大事なことなんですぅ…。


 学園生活における私の推しが決まって、2人が学園内で一緒にいる所を遠くから観察して妄想…創作の糧にすること半年。食事をしている私の元に突然フレア様がやってきた


「ど、どんな御用でしょうか?」

「そんな緊張しなくていいわよ、魔法科としてあなたにお願いしたいことがあってこっちのアルクさんとお邪魔したのだけれど」

「えっ…アルク様…?」


 言われて横を見るとそこにはアルク様がいた、え、なんで?なんでフレア様とアルク様が一緒に私の目の前にいるの!?どうして?わからない!綺麗!かっこいい!尊い!エモい!う、うあああああ!!


「い、いやあああああああああああ!!!???」


 私は逃げた。無理無理無理無理キャパオーバーだよぉ!突然エモ属性の上級魔法とか処理しきれないよおおおおお!

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