86:交渉
評価を新たにつけていただきました!本当にありがとうございます!一個一個、読んでくださった方から頂いた反応への感謝を忘れず、書いていきます。
幕間含んだら前回が100エピ目でした、節目100エピ目があれ!?という気持ちになったけどまあプロットも書かずに流れで書いてる俺が悪い。
「アルク…、あなたいくらなんでもそれは…」
「話が一向に進まないから仕方ない、俺は悪くない」
気絶しているストーリアを椅子に座らせ、土魔法で作った石枷で椅子に固定する。これで逃げることはできない、というかいい加減に話を進めたい。
「じゃあストーリアを起こすから、基本はフレア交渉お願い」
「…これじゃ交渉というより尋問ね」
「はい起こすよー」
そういって俺は光の初級魔法、マインドクリアを発動する。これは精神的な異常を回復する魔法で気付け薬のように使えたり、闇の精神攻撃魔法を回復したりとゴーストや呪い関係の依頼をこなすなら必須となる魔法だ。
「うん…?あれ、ノエル先生は?…フレア様?」
「おはよう、ストーリアさん、お話できるかしら?」
「え、はい…。あれ!?なんですかこの石枷!?動けない!?」
「ちょっと逃げられたら話進まないから拘束させてもらってるよ」
「ああああ!?アルク様ああああ!?あぁぁぁ…」
「また気絶しようとするなよ!話進まないだろ!?」
気絶直前のストーリアに再度マインドクリアをかける、気絶なんてさせてあげないよ?
「はっ!!うぅ…」
「はぁ…、フレア、俺は少し離れてるからよろしく」
「はいはい、ストーリアさん大丈夫?ちなみに拘束したのはあいつだから恨むならあっちを恨んでね」
「えっ、普段親しみやすいのに実は鬼畜系なんですか…?もしかしてこの感じでアル×フレ…?え、待って待っていつもはお嬢様に振り回されてるのにいざって時は鬼畜系押せ押せ王子様ってこと…?何それ属性のマリアージュ?噓でしょ狙ってる?」
「アルフレ?属性?何を言ってるの?」
「フレアー、知らなくていいことだからさっさと話進めてー」
「?、まあわかったわ。ストーリアさん、実はあなたにお願いしたいことがあるのだけどいいかしら?」
「あっ…、はい!な、なんでしょうか…?」
やっと話ができる状態になったストーリアにフレアが事情を説明する。学園祭で演劇をやるから演目を2種類用意したいこと、魔法を使った演出を活かしたいこと、その脚本をお願いしたいということ。
「脚本ですか…?でも私お芝居の脚本とか書いたことないですよ…?」
「ストーリアさんが書いた脚本は私がお芝居用に構成しなおすから大丈夫よ。それにストーリアさん、これはあなたにとっていい機会なの」
「ノエル先生?」
隣で聞いていたノエル先生がストーリアに耳打ちする。なんの話をしているんだろう。
「というわけだけどどうかしら?」
「やります!」
「「え、はや」」
交渉も何もない、ノエル先生の耳打ちだけでストーリアさんの助力が得られてしまった。俺もフレアもあまりの早業にあっけに取られている。もしかして脅した?
「ストーリアさん、ちゃんと条件を伝えないとダメよ?」
「あっ、そうでした。お話お受けしてもいいですけど…、2つほど条件を出していいでしょうか?」
「何かしら?言ってみて」
「お2人が取材に協力してくれること、お2人が主演を務めることの2つです!」
「取材の協力は問題ないわ、むしろお願いする立場の私達は協力すべきでしょう。主演は構わないけど片方の演目だけでいいかしら?」
「…そうですね、先ほどお聞きした目的も考えればそこは妥協します」
「2人ともちょっと待ってもらっていい?」
「?、どうしたのよアルク」
まとまりかけた交渉に待ったをかける、先ほどのストーリアの独り言、ノエル先生の耳打ち、そこから提示された条件。これらを踏まえると俺の懸念は当たっていたことになる。その懸念が当たっている以上、なぜこの条件が出されたのかにも悲しいことに想像がつく。
「ストーリア、取材の協力って俺達に何させる気?それとどんなシナリオを書くつもり?」
「…」
「あら」
「?」
目を逸らすなストーリア、バレちゃったみたいな顔するなリリィ姉、フレアは…まあわからないままの君でいてくれ…、公爵家を敵に回したくない。
「おいなんか言えよ、カプ廚」
「なんのことですか…?私はお2人の決闘を見たことがあるので舞台映えする戦闘が書けるなーと思っただけですよ??」
「その言い訳をしたいならカプ廚呼びをまず否定しろ」
「うぅ…、貴族の尋問怖いです…。でも鬼畜系アルク様をこれだけ浴びれるなら…!」
「変な覚悟決めないでくれないかなぁ!?」
変な所で開き直ると図々しいなこいつ!?マジで何されるかわからないし、カプ廚妄想の玩具になるつもりはない。
「ストーリアさんは本当はどんな脚本を書こうと思ったのかしら?」
「そのぉ…、フレア様とアルク様主演で恋物語を…。戦場で敵同士だった姫騎士と騎士が恋に落ちるとかお2人なら映えるだろうなあって…」
「ああ、私達の剣術が欲しかったのね。別に変な所はないじゃない、アルク。演劇で恋物語なんて定番だし、そのために剣の腕が欲しいなら私達を主演にというのもわかるわ」
「フレア、因果が逆だ、剣の腕が欲しいから俺達なんじゃない。俺達が欲しいから剣の腕を必要にしたんだ」
「私達のファンって言ってたんだから剣の腕に惹かれてファンになったのなら同じことじゃない?」
「違うんだ、剣の腕に惹かれてるわけじゃないんだよ…」
「じゃあ魔法かしら?まあどちらでもいいけれど、ストーリアさんがダメとなると他の芸術科の子に頼むことになるわ。ノエル先生、誰か候補はいますか?」
「いないわね、芸術科の子でまともに会話出来る子の方が貴重だもの。ストーリアさんは芸術科常識人筆頭よ」
「あの人達と一緒にしないで欲しいです…」
嘘だろ、ストーリアでもかなりの変人なのに常識人筆頭かよ。というかまともに会話できることが貴重って何。
「それに他の会話出来る子も正直協力してもらえるかがわからないわね。文芸専攻の子で他に会話が成り立つ子はずっと部屋から出ずに書いてる子と、筆がノッたら速いけどそれまで何もしない期限付きの依頼に向かない子よ?」
「会うことが出来ないか、そもそも脚本が出てこないかの2択かよ…」
「実質ストーリアさん1択ね…。どうするのアルク、私はあの条件で構わないけど?」
「…はぁ。演劇やるって時点で詰んでたかぁ」
「え!じゃああの条件でいいんですか!?」
うわぁ…すっげぇいい笑顔してるじゃん。ずっと欲しかった玩具を買ってもらえた子供のように目をキラキラさせて無邪気の欠片もない邪気だらけの瞳。
「もう…いいよ…」
この先どうなるか察しがついてる俺、分からないからこそ危機感に欠けるお嬢様、生徒へのいたずらが成功した教師、既に妄想にトリップしてる少女の4人で行われた交渉は、俺の諦念によって締結した。




