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87:脚本家ストーリア

 無事?いや絶対この先無事じゃなくなるんだけど、ストーリアの協力を得ることはできた。詳細を詰めた条件はこうだ


 2つの演目をやるにあたり、1つの脚本はストーリアが書き下ろす。もう1つの脚本はストーリアが推薦した物語の中から魔法科生徒が選び、前者の主演は俺とフレアが演じる。またこの脚本については芸術科文芸専攻の生徒ストーリアの出し物という扱いにすること、学園祭に作品を出したかどうかはストーリアの評価にも関わってくるので当然といえば当然だろう。


 それらの条件を、ストーリアの紹介がてら空き教室で出し物について先に話し合っていた魔法科生徒達に伝える。俺とフレアが取材に協力する件については皆には説明しない、カプ廚の玩具にされるの目に見えてるし、面白がった同期達に悪用されかねない。…既に協力者本人が悪用するのは確定してるけども。


「というわけで無事こちらのストーリアさんから協力を得られました。図書館で候補の物語は持ってきたから皆でどれを演じるか決めましょう」

「内容がわからないのですけど、今決めるのですか?」

「ええ、こちらの脚本は魔力操作が苦手な子に担当してもらおうと思っているの、魔力操作の練習も必要だから。あらすじや作品のポイントなんかはストーリアさんが教えてくれたから、それを見て選んで頂戴」


 同期の女の子の質問にフレアが答える。魔法を使うにはその属性に適正を持ってなくてはならない。どれだけ魔力操作が苦手でも舞台演出に必要な適正を持っている子がその子しかいないならばその子がやるしかない上、多重発動が出来るかどうかによって必要人数も変わる、当たり前の話だが何を練習するにも脚本は早く決まった方がいいのだ。


「俺達からお願いしておいてあれだけど、ストーリアはどれぐらいで脚本書けそう?」

「きゅ、休日に取材できたら来週の前半には書き終わるかと…。ノエル先生に渡して台本の形になるのは来週末じゃないですかね?」

「あ、結構速いね」

「はい!妄想の種はいっぱいあるので!」

「…」


 もう嫌だこのカプ廚…。書くべきは物語であって妄想じゃねえのよ…、しかもその妄想対象の半分は俺なわけで…。


「それじゃあ一つ目の演目はこれで決定でいいかしら?」

「「「異議なーし」」」


 簡単な魔力操作で十分に演出が可能とストーリアが判断した物語の中から演目一つ目が決定した。家族とお化け。とても安く売られていた家に引っ越してきた家族が、そこに住み着くお化けに面白おかしくいたずらされるホラーコメディ。


 おばけに襲われる!と恐怖したところに繰り出されるしょーもない被害の落差、魔法を用いることによるいたずらの自由度など演劇初心者でも十分に観客を楽しませられるだろうというのがストーリアが候補に挙げた理由だ。


「今日はこのぐらいで解散にしましょう。この物語をストーリアさんが舞台用に編集、ノエル先生が台本にしてくれるわ。来週配役や役職を決めることにして、皆さんは各自アルクさんの助言に従って魔力操作の練習をお願いします」


 演劇を行い、魔法で演出をすると決まった段階で俺は皆に適正に合わせた魔力操作の訓練法を伝えてある。人によってはペアで訓練をしてもらったり、他者との魔力干渉を意識した練習も取り入れている。


 魔法科での打ち合わせは解散し、俺、フレア、ストーリアは休日の約束だけして解散。ストーリアが脚本を書くにあたって、どんな情報が欲しいのか、戦闘やダンスなど実際に目にしておきたいものはあるかなどをすり合わせて予定を組み、それができるよう教室を抑えておいたり必要な手続きを済ませておく。


 そういった事前準備、手続きを済ませて迎えた休日。俺とフレアがカプ廚の玩具になる日がやってきた。


「まずは戦の情報だよね?」

「はい!2人の出会いは戦場でって決めてるので使えそうなシチュエーションないかと思いまして」

「というわけらしいけど軍事に詳しいフレアはなにかいいアイデアある?」


 図書館で3人、本を借りるにもどの本を借りるかは問題なので方針を決めるための相談、軍事関係ならばフレアが家柄上既に学んでいるのでフレアにアイデアを求める。


「そうは言っても戦場なんて前線は乱戦だし、特定の個人と個人が認識しあってる状態で会うことってあまりないわよ…?」

「創作だからそんな現実感なくていいんじゃない??なにか都合がよければ起こりうる状況ない?」

「奇襲とかならまだ一騎打ちに発展しうるかしら…?」

「それじゃあ奇襲に関する資料を少し見てみたいです!」


 フレアの意見を参考にストーリアが希望した資料を探し、貸出手続きを済ませて図書館をでる。情報の精査などはストーリアでないと出来ないし、他にもやっておくことはあるのであとはストーリアにお任せだ。


「次は訓練場だね」

「普段通りの鍛錬を見せればいいのよね?」

「はい、できれば手合わせも見せて頂ければ!」

「手合わせは普段からやってるけど魔法戦闘と通常戦闘どっちがいい?」

「魔法戦闘でお願いします!」


 昼前にストーリアの希望にこたえての鍛錬。戦闘シーンが必要な以上手合わせは当然見ておきたいだろうし、魔法を演出に用いれるなら魔法戦闘を見たいというのも当然だろう。


「これが終わったら昼食食べてデートシーンもあるから軽めにやろうか」

「全力でやらないと参考にならないんじゃない?」

「フレアが全力でやりたいだけでしょ…。それに舞台上じゃ全力で出来ないでしょ、舞台壊れるって」

「ま、仕方ないわね」


 少し不満そうなフレアだがまだストーリアが取材を希望するシーンがある以上あまり体力を使いたくないし、舞台上で中級魔法なんて発動したら舞台が壊れてしまうし、それを参考にしてもしかたないという訳で軽めの鍛錬と軽めの手合わせ。


 ストーリアは武術の経験もなく、当然鍛錬なんてしたこともないのでどういう流れで鍛錬が行われるかを知らない。そのために一連の流れを見ておきたかったらしい。


「どう?こんな感じでいつもやってるけど参考になった?」

「はい!すごくいい絡みでした!」

「…」


 お前が見るべきは俺とフレアの絡みじゃなくて鍛錬と手合わせだろ。それを見たいという話だったろうが。

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