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88:取材(デート)

「そんで、デートシーンってことでやってほしいこと一覧がこれと」

「はい!メモに書いてある内容をこなしてください!私は少し離れて見守ってます!」

「…本当に脚本を書くのに必要な取材なんだな?決してストーリアが見たいだけじゃないよな?」

「や、やですねぇ…そんなわけないじゃないですか…」

「こっちの目をみろカプ廚、メモを見たフレアなんて固まってるんだぞ」


 デートシーンの参考にということで入れたこの予定だが内容がまあバカップルのイチャイチャが多い。戦場で出会った2人のデートなんだよな?なんでこんなバカップルの距離感なんだ。以外とそういう耐性がないらしいフレアは真っ赤になって固まってしまっている。


「フレア、恥ずかしいならちゃんと断った方がいいよ。ここまでやるとは思ってなかったでしょ?」

「…いいえ、私は公爵令嬢よ、一度交わした契約を違えたりしないわ」

「いい心意気だと思うけど腕を組んだりあーんしたりのレベルに真っ赤になってるフレアで耐えられる?」

「私が見た恋愛劇はこんなに距離感が近くなかったからここまでやるとは思ってなかっただけよ…!」

「いや、そんな不意打ち食らったからってなる赤さじゃなかったけど…」


 本を読むぐらいなら鍛錬をしたいフレアの事だ、おそらく見た恋愛劇も貴族としての付き合い、貴族令嬢に見せられるレベルの純愛劇だろう。つまり想定していたデート取材はそのレベル、バカップル仕草をやる羽目になるなんて想定していなかった。


「大丈夫だって言ってるじゃない!ほら、さっさとやるわよ!最初は腕を組んで街中の散策でしょ!」

「ちょっ!フレアそれじゃ腕組んでるんじゃなくて腕引っ張ってるって!!どころか関節極まってる!落ち着け!一回止まれ!!」


 勢いで誤魔化すつもりだろうフレアは俺の腕を極めながら引っ張っていく、痛いって!!腕を組んでの散策だぞ!暴漢の連行シーンじゃねえって!カプ廚も満面の笑みで見てないで止めろ!止めてください脚本家様ぁ!!


「フレア様、それだとちょっとイメージと違うのでアルク様少し後ろから腕を組む感じで…」

「あっ…そ、そうなの。わかったわ」


 流石にこれを続けるのは違うと気付いたのだろうストーリアが止めてくれてなんとか俺の関節が解放される。痛かった…マジで痛かった…。


「フレア…、とりあえず落ち着いた?」

「え、ええ。悪かったわね」

「腕を組んで歩くと言っても出来る範囲で大丈夫だから、エスコートされる時と変わらないぐらいで大丈夫だよ」

「そうなの?」

「えっ、いやもっと体を密着させ」

「大丈夫だよね?ストーリア?雰囲気がつかめれば問題ないよね?」

「ひぇっ…だ、大丈夫ですぅ…」


 こちとら実害出てんだ嫌とは言わせねえぞ。カプ廚を調子に乗らせないためにも釘を刺しておく、出来る範囲でやる、なんでも言う通りにはしねえぞ。


「ほら、気を取り直して行こうか、フレア。お手をどうぞ」

「え、えぇよろしくね、アルク」


 そうして俺は腕を差し出し、フレアが手を軽く絡ませる、この程度なら貴族同士のエスコートだ。ストーリアもいるし、知り合いに見られても学園祭に向けての取材と素直に理由を言えばいい。


「とりあえずこの状態で少し歩いたら喫茶店に入ろうか」

「次はパフェを食べさせあうのよね…」

「そうだね、流石に誰かに見られたら面倒だし個室があるところにしよう」


 当然だが王都には貴族が多く住んでいる。どんな業種でもVIP室や個室などを備える店舗はあるものだ。


 いつもみんなで遊ぶ商店通りをフレアをエスコートしながら歩くのは少し新鮮な気持ちだ。デートのように歩けとの脚本家様のオーダーがあるのでいつもなら気にしない店も話題に上げながら、何度か利用したことのある個室のある喫茶店に入る。


「ふぇぇ…私こんな所に入っていいんでしょうか…?」

「いや、ストーリアに見せるために来てるんだから入らないと意味ないでしょ」

「学生服ならドレスコードは問題ないわよ?」

「そういうことじゃないですぅ…」


 喫茶店といっても個室を備える貴族向けの店、上品な店構えに客層も富裕層ばかり、ストーリアの家は王都の隣街に店を構える中間層らしくこういった店には縁がないらしい。


「アルク様、フレア様、お連れ様、ようこそいらっしゃいました」

「個室をお願いします、3名で」

「かしこまりました、只今案内いたします」


 店員に案内され、2階に用意されている個室に通される。


「とりあえずパフェを頼まないとか、俺はチョコレートパフェにしようかな、フレアは?」

「そうね…ストロベリーパフェにしようかしら」

「わかった、ストーリアは何がいい?」

「え、私もですか?」

「?、取材なんだからストーリアも食べるでしょ?何が役に立つか分からないだろうし」

「うぅ…でもお高い…」

「こういう場は俺が出すから気にしなくていいよ」

「えっ…?」

「男女で食事をするときは男性は会計を持つことで甲斐性をみせる、私達女性は当たり前だと思わずに感謝して男を立てる。貴族の社交はそういうものよ」

「ふぇぇ…、物語で書かれてることって現実でもあるんですねぇ…」


 グループでいるときなら特に気にすることはない慣習だが、今は3人しかいない上で男は俺1人、そうなるとこの慣習を気にしないといけない。男性は会計を持てないようならその程度の金も出せない甲斐性なしとして家に傷がつく。女性はそれを当たり前のように扱ってしまえば感謝もできない乞食娼婦と見下される。貴族の誇りが、という柄ではないけど家が悪く言われるのは流石に申し訳ない。


「それじゃあ…せっかくなのでデラックスゴージャスパフェで…」

「マジでお前開き直ると遠慮がないな!?」

「くっ…ふふっ。甲斐性みせないとね?紳士さん?」


 呼び鈴を鳴らし、店員に注文を伝える。はい、チョコレートパフェとストロベリーパフェ、それと…デラックスゴージャスパフェで…。それとパフェに合うおすすめの紅茶を3つお願いします…。


 少し雑談がてら演劇について相談しながら待っていると注文したパフェと紅茶が届けられた。デラックスゴージャスパフェでっか…。


「それじゃあお互いに食べさせあえばいいんだよね?ほら、フレアあーん」

「えっ!?そんないきなり!?」


 俺は早速用事を終わらせにかかる。こんなカプ廚の欲望にまみれたイベントはさっさと終わらせるに限る。


「いきなりと言われてもさっさと終わらせないとストーリアを喜ばせるだけだよ?フレアも流石に気付いたでしょ?」

「まぁ…メモを見てストーリアが厄介な子ってことはわかったわ…。アルクはこれを懸念してたのね」

「なら早く終わらせたほうがいいのもわかるでしょ、パフェも溶けちゃうから美味しいうちに食べよう」

「そ、そうね…、早く食べないと勿体ないわよね…」

「だからほら、あーん」


 真っ赤になってないで早く食べてくれ、恥ずかしいのはわかるけど見てるのはストーリアだけ、というかこれをするためにここに来てるんだから。


「ふーっ、いくわよ!」

「いや気合入れすぎでしょ。ほら普通に」

「あ、あーん」


 とんでもない勢いでパフェに食らいつきそうだった所を諫められたフレアは、気を取り直して俺が差し出したチョコレートパフェを口にする。フレアがパフェを飲み込んだところを見計らい、メモに書いてあった台詞を言う。まあ俺もこれ普通に気になるし


「どう?美味しい?」

「…わかるわけないじゃない、こんな食べ方で」

「緊張しすぎだって、まあ自分で食えばいいか。うん!美味いな!」

「なっ…あなたそのスプーン!」

「ん?ああ、別に俺は気にしないよ、フレアは気にするかもしれないから先に食べさせたわけだし」


 意外と初心なことがわかったフレアだ、関節キスなど気にするかもしれないからまだ口を付けてない最初の一口をフレアに食べさせた。交換用のスプーンはあるけど、わざわざ店の仕事を増やすこともない。


「なっ!?私だって気にしないわよ!ほら、私のパフェも食べなさい!」

「んぐっ!?」


 いやその反応は気にするやつの反応だし、スプーンを人の口に思いっきりつっこむんじゃない危ないだろ!


「ストロベリーパフェは美味いけど危ないからそのやり方はやめてくれ。というか完全に気にしてるじゃん、無理せずスプーン変えたら?」

「気にしないって言ってるじゃない」

「はぁ…、フレアがそれでいいならいいよ」


 フレアが意固地になってしまった以上、言っても意地を張るだけだ。ならまあそういうことにして気が済むまで付き合ってやるしかない。こんなところで負けず嫌いを発揮する意味はないんだけど、フレアだから仕方ないか。

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