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89:脱稿

「ふぅ!いい妄想が書けましたぁ!」


 取材に協力した日から数日、魔法科で話し合いをしている空き教室にとてもご満悦のストーリアが書いた物語を持ってきた。妄想とか言ってたけど物語ってことにした、させてくれ。


「じゃあノエル先生にそれを渡しに行こうか」

「うへへ…これをアルク様達が演じてくれるんですよね!」

「…そうだね」


 中身を見る前から不安にさせないでほしい。ヤバそうなところはノエル先生が台本にするときに直してくれると信じるしかない。


「フレアもいく?」

「私は皆との話し合いを進めておくわ。だからアルクは脚本の方をよろしくね」

「まあそれもそうか、じゃあみんなのほうはお願い」


 俺はストーリアを連れてノエル先生の元へ向かう。この時間なら教員室にいるはずだし、教員室にある複写の魔道具を借りれたら今日中に皆がストーリアの書いた物語を渡せるだろう。


「ノエル先生、ストーリアが脚本を書けたみたいなのですが今お時間ありますか?」

「あら、アルクさん、ストーリアさん、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。これなんですけど最初に複写の魔道具をお借りしていいですか?」

「ああ、どうぞ。魔法科のみなさんの分も必要だものね」


 複写の魔道具、ようするにコピー機だが、迷宮で発見され、あまりにも便利なために研究、複製が超特急でなされたらしい。水と土という2つの魔石を使う上に制作に高い技術を要するためかなりお高めな魔道具だ。


「とりあえず1部だけ先に複写して先生に渡すのでストーリアと確認お願いします」

「わかりました」


 そう言って俺はコピーを取ってノエル先生に渡す。脚本の確認や認識のすり合わせは2人にしかできない作業、そして複写の魔道具を動かす魔力タンクが今の俺の役割だ。


「おー、なんだかんだ芸術科の生徒と芸術一家出身の先生なんだな」


 脚本をぱらぱらと確認しながらノエル先生はストーリアに適宜質問を飛ばしていく。それに対する答えは普段のストーリアからは考えられないぐらいはっきりしていて、演出の目的、構成の狙いなどを論理的に説明している。


 …嘘だろお前理論派かよ。どういった演出で観客の感情を動かすか、どのような順番で感情を揺さぶればもっとも有効なのか、そして観客の受ける感動は最大化されるのかをノエル先生相手に臆することなく伝えている。


「ストーリアさんの言うこともわかるけど!フレ×アルの方がみんないつも見てるから解釈一致じゃない!」

「はー!!これだからノエル先生は分かってないんですー!アルク様の鬼畜属性のギャップとそれにたじたじなフレア様のよわよわ乙女のギャップが堪らなくエモいんですぅー!その貴重な姿を知ってる私は布教する義務があるんですぅー!!そんなこともわからないからノエル先生は芸術科卒業したのに教員止まりなんですー!」


 …みんな見てるから辞めてくれないかなぁ?というかノエル先生まで何言ってんの?先生達の俺への視線が居たたまれないんだけど?コピー終わるまで俺ここから動けないんだけど?ストーリアも最後の一言は多分ノエル先生にとってかなりの地雷だから辞めて差し上げて。


「はっ!世間の厳しさもしらないガキが言うじゃないのよ!あんたも芸術科で揉まれればちったぁ現実の残酷さもわかるわよ!」

「へへーん!12歳で入学できた天才少女の私ならそんなことになりませーん!アル×フレが至高なのは心理なんですぅー!」

「もう2人ともやめてくれないかなぁ!?真面目に脚本の仕事してくれません!?喧嘩してないでさぁ!ノエル先生も大人なんだから12歳とガチ喧嘩しないでください!というか登場人物は架空の人物で俺とフレアじゃないでしょうがぁ!」


 もうやだこの2人!協力を申し込む相手間違えた!創作と現実の区別は付けてください!


「…大人気なかったわね、主役のアランとヒロインのフレイの話だものねこれは」

「そうですね、アランが鬼畜系でフレイが初心な乙女というだけです。アルク様とフレア様は関係ありません」


 俺に怒られた2人は気を取り直して脚本の確認作業に戻る。片方は現役、片方はOGといえ芸術科である以上拘りで衝突することは避けられなかったのだろう。いや先生は大人なんだから仕事として割り切ってほしいけど。


「アルクさん…お疲れ様です…」

「ニコラ教授…、2人がすいませんでした」


 教員室にいたニコラ教授が俺を憐れみの目で労ってくれる。でも魔法科の要件でお騒がせして申し訳ありませんでした…。


「アルクさんが悪いわけではないので心苦しいのですが…、今後先ほどの件を2人に話させるときは空き教室を使っていただくようにお願いします…」

「…まあ、そう、ですね」


 そりゃうるさいよ、あんな衝突されたら。そして衝突しない保証がないよ、2人が芸術科な以上。


「必要なコピー終わったんでノエル先生がよければ教室に戻ろうと思うんですけどいいですか?」

「ええ、簡単な確認はできたし細かいところは明日ストーリアさんに確認するわ。講義が終わったらストーリアさんはここまで来てもらっていいかしら?」

「はい」

「あ、ニコラ教授が怒ってたんで空き教室でやってくださいね」

「…ストーリアさんがきたら場所を移すわ」


 用事も終わったのでストーリアと空き教室に戻る、同期のみんなに脚本を渡して、今日明日で読んでおいてもらわないとならない。台本になったものが来るとは言え事前に読んでるかどうかで理解度は変わってしまう。


「ただいまー」

「お前が主演をやれシークぅううう!!!」

「だれがこんな罰ゲームやるかってんだてめえがやれブラッドぉおおおお!!」

「「じゃあああああんけえええんぽおおおん!!」」

「おっしゃあああああああ!!」

「うあああああああああ!!」


 教室に入ったら同期の土魔法使いブラッドとシークがすごい剣幕でじゃんけんしてた。なにこれ


「フレアなにこれ」

「家族とお化けの配役決め、配役を決めてからだと日和るからって、先にいたずらの内容決めたのよ」

「なるほど、その結果だれも主演をやりたがらないと」

「だから負け上がりのじゃんけんトーナメントをやったわけ」

「それでシークが負け続けたと」

「そういうこと、一家の大黒柱シークがうまれたところよ」

「ちなみに一番エグいいたずらは?」

「女の子になに言わせるつもり?」

「下ネタってことかよぉ…」

「発案はシークよ」

「自業自得じゃねえか」


 絶望にうずくまるシーク、主演回避に沸き立つブラッド、歓喜の叫びをあげるBL喫茶集団。ああなるほどそういう方向ね。どうせシークが腐男子をハメようと策を弄して策にハマったやつだこれ。


 …バカだなぁ

ブラッドくんはシークがアルクの次に仲良くしてるガタイのいい男の子、シークと同じくアホの子です。貴族だけどアホだから分け隔てなく誰とでも仲良くするタイプ、貴族の責務とかよくわかってない、とりあえずみんなが楽しければいいと思ってる、間違いではない。

同期がどうしても絡む話だし名前だけ出てくるタイプの子はこんな感じにあとがきで補足いれようかなと

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