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80.5:ステンでの一日

序盤を読み直して、言葉遣いやら表現やら、書き直しした所が消し切れてなかったりとか直さないとなーってところが多いので直さなきゃ…(語彙力)

 アルクがAランク冒険者、総武のガーランドの結婚式に出席するために長期休暇の間はスティング領の領都ステンに帰ると聞き、王都に残ってなんていられないとアルクには黙って決行された突発ステン旅行。ガーランドさんとの手合わせをするという目的を果たしただけでなく、王都に帰るまでは稽古をつけてくれることになった。アルクと友人で本当によかったわ!


「フレアー、そろそろ出かけるよー」

「わかった、今行くわ」


 ステン旅行に来たものの、別にステンは観光地というわけではない。私のような有名冒険者と戦ってみたい人間にとっては総武ガーランドが居たり、ギルドマスターが炎獣ジュリアスだったりとそういう人目当てで来てみたかった場所ではあるけれど。


 そんなステンに到着してから王都に帰るまでの二週間、ガーランドさんだけでなくジュリアスさんとも手合わせをしてもらい、稽古をつけてもらい、アルクに街を案内してもらうのが基本になった。今日はアルクがよく使ってるという本屋へ向かう、店番の子がかなり本を読みこんでおり客の好みからオススメの本を教えてくれるという。


「そういえばアルクが本を読んでるところって見たことないんだけど?」

「そりゃ普段フレアが一緒にいるのに読まないでしょ、俺といる時に鍛錬せずに読書させてくれるの?」

「…させないわね」

「でしょ?」


 私は読書があまり好きではない。好きな本はあるけれど、別に探してまで新しい本に出会おうとは思わない。プリムはよく本を読んでいるからその点2人の気は合うだろう。一目惚れのくせにそういうところもなにか感じたのかしら?


「そういえばアルクはガーランドさんと戦う前と最中って何を考えてたの?」

「あー、フレアがガーランドに言われてたこと?」

「そう、私は戦術を組み立てる経験が少ないからそこがなってない、アルクを見習うように。自覚はあるわ、魔法でも剣術でも大抵の相手は圧倒できてしまっていたもの」

「勝てていた、じゃなく圧倒出来ていたっていうのがフレアらしいね。戦術は強い相手に磨くものだけど、レイン公爵とか軍の人じゃ忙しくて手合わせの機会も少ないだろうし」


 アルクとガーランドさんの模擬戦、2人とも互いの手の内を知っていて、にも関わらずガーランドさんの意表をついて反撃を放つアルク。ただの初級魔法で、その組み合わせ、使い方、タイミング、武器の選択、持てる手札の全てを駆使して冒険者の頂に食らいつくその姿。見学していた冒険者達は私の模擬戦の方が凄かったと盛り上がっていたが、それは魔法の派手さに、ガーランドさんの二刀流に惑わされているだけだ。


 私も、ガーランドさんも、ジュリアスさんも私とアルクどちらの方が技量が上かなんてはっきりわかっている。アルクの言う分類、上手いタイプ、まさにその手本だった。


「んー。まずガーランド相手に今までに使った連携と、その連携にどう対応されてたかを思い返して、まだガーランドに見せてない新しい魔法戦闘の連携を作るかなあ。そうしたらその連携をガーランドに刺すにはどの連携をどの順番で使うかを大まかに考えて、模擬戦中はガーランドの対応を見ながら適宜順番を入れ替えたり、ガーランドの体調とかに合わせて戦術変えたりかな」

「体調とかに合わせて?」

「この前の模擬戦だったらガーランドは書類仕事で目が疲れてたみたいでさ、ほんの少しだけ反応が遅かったから、俺の動作を速める風魔法を動きの主軸にしたかな」

「…あれで反応が遅かったの?」

「まあ…、俺がガーランド相手に慣れてるからなんとか気付けたレベルだからね」


 風魔法を用いた高速戦闘の中でそれに気づく、確かにガーランドさんと長年一緒にいたとはいえ、アルクはどういう洞察力をしているのだろう。


「それをあれだけの魔法戦闘中に見極めて考えてるの?」

「そこはほら、俺の魔法は初級だから制御楽だし、そんなに意識せず操れるから」


 そういってアルクはいくつかの魔法を発現させる。当たり前のように複数属性を、それこそ手足のように自由自在に。初級だから制御が簡単?属性の違う魔力は反発し合って同時に扱うには繊細な操作が必要なのに?初級魔法は制御が簡単だが、それを複雑怪奇なほどに困難な扱い方をしてるのはアルク自身だろうに。


「そんな何言ってんだこいつみたいな目で見られても…。ほら、目的地に着いたよ」


 アルクに案内され到着した書店、店内は少し薄暗くて、けれど陰鬱な気分にさせるのではなく、落ち着いた、人を安心させる雰囲気をしている。


「結構上品な店なのね」

「家族でやってるんだけど、調度品なんかは奥さんの趣味らしいよ。その割に奥さん自身は結構快活な人だけど」

「へぇ、こんなに落ち着いた雰囲気なのに」

「おもしろいよね。あ、いたいた。エメラ、久しぶり」

「アルク様?お久しぶりです。そちらの方は?」

「この子はフレア、俺の友達。前に話した俺の師匠と戦ってみたいって言って帰省についてきた戦うことが大好きな子。フレア、この子が昨日話した本に詳しい子。エメラに聞けば絶対気に入る本を教えてくれるから」

「よろしくね、エメラさん。といっても私はあまり本を読むほうではないのだけど」


 アルクから紹介された白銀の髪の女の子。綺麗な白い肌、透き通った翡翠の瞳、小鳥のような可愛らしい声も相まって、同性の私でも庇護欲をくすぐられる。落ち着いた雰囲気はプリムに近いかしら?もしかしてアルクってこういう子が趣味?


「よろしくお願いします。読みやすい本もありますので、きっとフレア様も気に入るものがありますよ」

「今まで読んだ本や聞いた話で気に入ったのがあればエメラに伝えれば良い本教えてくれるよ。俺は少し店内見て回ってくるからエメラにいい本がないか相談してみたら?帰りの馬車とか暇だしね」


 そう言って、アルクは私達のそばを離れていく。初めて店に来る人間を店員に任せて離れるって、少しはエスコートをしようという気がないのかしら?まあせっかくだし言われた通りにはしてみるけれど


「エメラさん、そういうわけだから何かオススメの本はあるかしら」

「そうですね、好きなお話とかありますか?物語じゃなくてもいいので」

「物語じゃなくていい?」

「はい、歴史でも、偉人の逸話でも、友人の日常の失敗なんかでも」

「ああ、そういうこと。それなら冒険者の話かしら?」


 そしてガーランドさんやサラさん、ジュリアスさんの話、有名な冒険者の話から私が好きな話をかいつまんで話す。エメラさんは静かに私の話を聞いて、話の終わりに一つ、二つの質問をしてくる。それに答えると少しだけこの場を離れ、本を2冊ほど持って戻ってきた。


「フレア様の好みを考えるとこの辺りがオススメになります。こちらはかっこいい英雄譚で、こちらがコミカルな冒険譚、あまり本を嗜まれない方でも読みやすいですよ」

「そう?それじゃあ英雄譚の方を読んでみようかしら。アルクの読書時間を奪ってたみたいで悪いし」

「そうなんですか?」

「あいつとは鍛錬ばかりしてるから。まあ対等に鍛錬できる相手がお互いしかいないせいもあるけど」

「はー、フレア様も優秀な方なんですね」

「私もってことはアルクの強さってステンでも有名なの?」

「最初は衛兵さん達がアルク様は凄いって言ってたんですけど、皆が凄いって言いだしたのは半年前からです。12歳でCランク冒険者なんて!みたいな感じで」

「ああ、確かに肩書があるとわかりやすいわね」


 その話をきっかけにエメラさんとアルクの話で盛り上がる。2人がどう知り合ったのか、私とアルクの出会い、私達が過ごしたアルクとの日々、私達を繋げた共通の友人の話題。そしてわかってしまった、エメラさんが私と同じだということ。アルクに惚れて、けれど諦めた人間だということ。


 理由はわかる、アルクは貴族でエメラさんは平民。絶対に結ばれないというわけではないが、魔法使いの素質に遺伝性がある以上、魔法使いではない平民と貴族が結ばれることは非常に少ない。そこには魔法使いではない子供が産まれるというリスクが存在するからだ。例えアルクが独り立ちしても、スティング領跡取りの予備である以上、そのリスクは軽視できない。


 エメラさんはそれをわかっている、受け入れている。彼とのことを綺麗な思い出として語っている、終わったこととして語っている。そんな姿がもどかしく感じて、そのもどかしい姿が今の私だと見せつけられてるような気がして。けれどそうなってしまう気持ちが、考えが理解できてしまうからこそ、その背中を押すことはできない。だって彼女は私だ、彼を想い、想うからこそ自分の想いを諦めるしかない、隠すしかない。


「ねえ、エメラさん。エメラさんさえよかったら私と友達になってくれない?私のことはフレアで構わないわ」


 背中を押すことはできないけど、寄り添うことはできる。彼女は私なのだから、私は彼女なのだから。いいえ、そんなの欺瞞、私が寄り添って欲しいだけ、ままならない初恋の重さを一緒に支えてほしいだけ。


「私がフレア様のお友達…ですか?」

「ええ、ステンにいるのにアルクとばかり行動するのもね。王都に戻ってからは手紙を送るわ、どうかしら?エメラ?」

「それじゃあ、こちらこそよろしくお願いします、フレアさん!」

「呼び捨てで構わないのだけど…、まあエメラの性格的にその方がやりやすいならそれでいいわ」


 そうして、ステンという思いもよらない土地で、貴族でも魔法使いでもないけれど、他の誰よりも私のことを分かってくれる友人が出来た。

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