79:ガーランドの結婚式
この作品を読み進めて多くのリアクションを付けてくださる方がいらっしゃいました、あなたが神か?読んでいただけるだけでありがたいのにリアクションまでしていただけるのは望外の喜びです。本当にありがとうございます。
リアクションや評価、ブクマを頂いたら感謝を伝えることにしていますが、そういうものがなくとも読んでくれている方には感謝の念が絶えません。
ステンに到着してから数日、ガーランドとマチルダの結婚式当日がやってきた。ガーランドは今ステンの冒険者ギルドで副ギルドマスターとしてギルドマスターのジュリアスを補佐しその仕事を学んでいる。1年ほど学んだらステンのギルドマスターになり、ジュリアスは別の支部に向かうらしい。
フレアの参加は急遽ではあるものの、この世界の結婚式は教会で神に愛を誓った後別の会場で立食パーティーをするという慣習、そのため事前に人数分の料理等が用意される現代式の披露宴等とは少し違う。つまり前日までに参加するとわかっていれば問題ない。なのでガーランド達には昨日のうちに挨拶とフレアが参加する旨は俺から伝えておいた。
そして教会での式もつつがなく終了し、会場を移して冒険者ギルドの食堂を貸し切っての立食パーティーだ。ステンのギルド関係者だけでなく王都のケイン本部長なんかも来ていた。
「ガーランド、マチルダ、結婚おめでとう」
「おう、坊主、ありがとな」
「アルクくん、ありがとう」
ガーランドは半年前とあまり変わらない、でも少し疲れ気味かな?慣れない仕事で大変なのだろう。マチルダはすっかり髪も伸びて綺麗な大人の女性という感じだ、口調も素のマチルダそのまま。まあ結婚式なのに冒険者モードでいたらおかしいけど。
「あとこちらが昨日話したフレア・レイン嬢。ガーランドと手合わせしたいからって来た戦闘狂のお嬢様」
「ただいまご紹介に預かりましたフレアと申します、総武のガーランド様のご高名はかねがね」
「これはご丁寧に、ガーランドといいます。私めとの手合わせを願っていただけるとは光栄です」
「ガーランドが敬語だと…!?」
「ふふっ、ガーランドさん、この半年の間にジュリアスさんからすごく叩き込まれたのよ?貴族と接する機会も多いから礼節ぐらいは覚えろってね。最初の頃は家でも敬語とタメ口が混ざって面白かったんだから」
「マチルダ、坊主にあまり俺のイメージが崩れるようなことを教えるなよ…」
「アルクくんからしたらあなたが敬語使ってる時点でイメージなんて崩れてるわよ」
すっかり夫婦の距離感で話す2人、仲良きことは美しいかな。それにしてもこの敬語教えたのジュリアスなんだ。いやギルドマスターやってるんだからそのぐらい出来るんだろうけど、本当になんで外見だけがあんな世紀末モヒカンなんだ…。
「とりあえずフレア、挨拶もしたからガーランド相手は普段の調子でいいと思うよ。その方がガーランド自身も楽だろうし」
「あらそう?ガーランドさん、態度を崩しても構わないかしら?」
「坊主がそう判断したってことは互いにその方がいいんだろ?俺も敬語はあまり慣れてねえしな」
「じゃあアルクと接する時の調子でいかせてもらうわね」
「おうおう、その方が助かる。で、俺と手合わせしたいって本気か?坊主から俺のことは聞いてるんだろ?」
「アルクどころか色々な所からね、家は軍務を司る家だから。手合わせしたいっていうのも本気、強者との手合わせは楽しいし、強くなるには一番の近道だもの」
「へぇ…、お嬢様にしては肝が座ってんな」
「アルクくん、実際のところフレアちゃんはどのくらい強いの?」
案の定ガーランドは気楽に接することができて、かつ戦闘狂なフレアのことが気に入ったようだ。そしてマチルダの疑問も最も、貴族には有名なフレアの強さも流石に地元民でもない冒険者には知る由もない。
「俺と対等かフレアの方が少し上ぐらいかな?」
「あら、決闘に勝ったのはあなたじゃない」
「戦いは必ず強い方が勝つわけじゃないのはフレアも分かってるでしょ。それに俺は戦いが上手いタイプ、フレアの方が強いタイプ」
あらゆる勝負毎において、強いと上手いは違う。ゲームで言うならステータスが高いのが強いタイプ、スキルが高いのが上手いタイプ。フレアは魔法や剣術といったあらゆるステータスが高い、俺は戦いの運び方や場を整える方を得意とするタイプ。
「アルクくんでそう評価するの…?」
「わかるよマチルダ、信じられないよね。まして一緒に旅してたマチルダなら余計に」
マチルダがフレアを見ながら信じられないものを見る顔をしている。マチルダは一緒に2年間旅をして俺の訓練を目の前で見ていたわけで、そんなマチルダからしたら完璧なお嬢様にしか見えないフレアがそこまで強いというのは驚愕だろう。
「坊主がそこまで言うってのは楽しみだな、時間と場所は明日の正午にここの訓練場でいいか?そこまで強いってなら冒険者連中にも見せてやりてえ」
「ええ、問題ないわ」
「ついでだ、坊主もなまってないか見てやる、嬢ちゃんとの後にやるからな」
「まあそんな気はしてたよ」
「2人ともがんばってね」
これに関してはフレアのことがあろうがあるまいが、どうせガーランドと再会したらそうなるだろうなと思っていた。俺の師匠は弟子に厳しいのだ。
「そういや坊主たちはいつまでこっちにいるんだ?」
「来週末の馬車で王都に戻るよ」
「ならその間は2人とも俺が稽古つけてやる。昼飯食ったらここにこい」
「いいんですか?」
「え、ガーランド仕事はいいの?」
「昼過ぎはほとんどの冒険者が依頼に行ってるからギルド側も仕事は落ち着いてんだよ」
「あ、そうなんだ」
「こんなこと言ってるけど、昨日までかなり無理して仕事を前倒しして終わらせてたのよ?アルクくんのための時間を作るんだって言って、自分の奥さんほったらかしで」
「マチルダ!?なんでそういうことをバラすんだよ!?」
ガーランド、流石に男が恰好つけた所を奥さんにバラされるのは可愛そうすぎる…。俺の師匠は奥さんに弱かったみたいだ。
「まあ、うん。ガーランド、俺達のためにありがとう。他にも挨拶したい人いるだろうし俺達はいくね?」
「おう…」
こういう時はあまり言及せずそっとしておくのが武士の情けというやつだ。流石に同じ男としてここを追撃するような鬼畜ではない。




