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65:dancing in the noonlight

先ほどみたらブックマークを2名ほど登録していただけてました。本当にありがとうございます。読んでくれてる人がいる、なにより気に入ってくれた、続きが気になると思ってくれた人がいるんだというのは励みになるとかいう次元じゃなく嬉しいのでありがとうございます。

 本格的に講義も始まり、今から選択科目のダンスの講義だ。俺は基本フレアと共に行動し、科目によってシークやメイ、キャロルと合流する。しかしフレアは流石公爵令嬢、とても顔が広く教室間の移動中に話しかけられることが多かった。


 それには当然同級生だけでなく先輩も多く、幾度となく完璧令嬢モードのフレアを見ることになったのだが、本当にすごかった。どんな話題にも即座に対応し、礼を失さないタイミングできっちり話を切り上げる。これが社交界で培われた会話術かと端から見ながら俺はうんうんとうなずいていた。


「では先輩、彼も待たせていますのでそろそろ失礼させて頂こうかと」

「ああ、例の彼ね、今度私にも紹介してくれるかしら?」

「ええ、機会がありましたら喜んで、それでは失礼します」


 そう、実は俺は予め先に行かず近くで待っていろと脅されている。その理由がこれだ、話を切り上げる時の理由に困らない、昼休憩前や放課後でも使える理由だから楽とのことだ。


 令嬢のそばにずっと男がいるのはいいのか?と逃げようとしたが決闘でお気に入りだと噂されてる時点で今更、講義の免除具合が近い者同士が共に行動するのは魔法科の常、男女で行動することでフレア狙いの男避けの効果もある、まして俺がプリムに求婚したのは有名で、将来の義姉弟と見られるから俺にとっても外堀を埋める効果があるとのこと。


 えっ…一緒にいるだけのことにそこまでの裏を用意してるの…、政治ってこわ…。


「待たせたわね、じゃあ行きましょ」

「構いませんよお嬢様、にしても本当に顔が広いな」

「公爵家の長女なんだから当たり前でしょ、むしろ私を探して挨拶に来ないといけない先輩とかは可愛そうなものよ」


 軍閥に属する家の子はフレアを探して挨拶に来なければならない立場、同級生なら魔法科として集まった時にすればいいが先輩たちはそうもいかない。あまり遅れると礼儀知らずとなってしまうのだから確かに大変だ。


「おっ、アルクとフレアもきたな!」

「ア、アルるん、フレっち、おはよう!」

「メイっちぎこちなーい!アルるーん!フレっちやっほー!」


 教室に到着すると既に3人は到着していた、メイはまだぎこちなさが抜けてないな、これが抜けるまではアルるん呼びは継続だ。


「ねーねー、明日からお休みじゃん?せっかくだし5人で王都で遊ばない?」

「私はいいわよ?」

「俺も問題なし」

「あー、俺達は流石になあ」

「必要な物買ったら結構お金使っちゃったもんね…」


 貴族組は問題なし、だが平民組はそうはいかなかった。確かに引っ越し直後で冒険者としてバイトが出来るのもまだ先、王都で遊ぼうにもお金がないか。俺が奢ってもいいけどそれはよろしくないし、けどせかっくなら遊びたいしなぁ。


「よし、じゃあシーク、メイ。バイトしない?」

「「バイト?」」

「そ、今日の放課後リースの仕事手伝ってほしいんだよね。リースも講義が始まったところで大変だろうし」

「マジで!?いいのかよ!」

「うん、スティング家としての依頼だし、ちゃんと遊んだうえで余裕持てるぐらいの給金は渡すよ」

「でも…そんなの申し訳ないというか…」

「気にしなくていいよ、リースが俺の世話だけじゃなく学生生活を楽しめるようにしたいってのは家の総意だったから必要に応じて雇うつもりだったし、今回たまたまそれが2人になるだけだから」

「そういうことだったら…お願いします!」


 2人のお金の問題も解決し、俺達は休日の相談をしていると女性講師が教室にやってきた。講義が始まり、最初はダンスの簡単な説明、なぜ社交界ではダンスが大切なのかなどが解説され、基礎的なステップの練習を行った。


「では初回講義の記念に、せっかく魔法科の主席と次席が受講してくれていますので、お手本をお見せいただいてもよろしいかしら?」

「「えっ?」」


 初回だから基礎的なことぐらいだろと思ってたらいきなり踊るの…?


「皆さんも目指すべきイメージがあった方が理解しやすいでしょうし、それにアルクさんも経験は少ないけど結構踊れるって弟から聞いていますよ」

「え、先生リリィちゃんのお姉さんなんですか」

「ふふっ、そうよ」


 なんということだ、リリィ姉がこんなところに。言われてみると確かに目元とかがよく似ている。


「私は構わないけどアルクは嫌?」

「まあどうせいつか見られるんだし遅かれ早かれでしょ、俺も構わないよ」

「そ、じゃあ行きましょうか」


 俺とフレア、2人で教室の中央に歩みを進める。お互いに向かい合い、踊る体勢に入ろうとしたところでリリィ姉から待ったがかかった。


「あ、ごめんなさいね。アルクさんはフレアさんを誘うところからお願いします」

「え?」

「講義でも伝えましたけど、誘い文句は男性の教養、知性、想いを伝える大切な所ですので」


 フレアを貴族語で誘うのは構わない、別にみんなやることだ。だけどたった1人で全員に見られながらそれをするのは違うんじゃないですかね…?


「どうしたの?早く誘いなさいよ?先生も皆も待ってるわよ?」


 こいつ…!ニヤニヤと人が困ってるところを楽しそうにしやがって!そっちがそのつもりならとびっきりの貴族語使ってフレアにも恥ずかしい思いをしてもらうぞ!!


「…薔薇のように麗しい愛しの姫よ、どうか私と一曲踊っていただけますか?」

「…愛しの姫って何よ」

「…ダンスに誘われるぐらい慣れてるだろ、赤くなってないで早く応えろよ」

「気心知れた友人から誘われた経験なんてないわよ…、男友達なんてアルクが初めてなんだから…」

「そうかよ、で、踊っていただけますか?愛しの姫?」

「ええ、喜んで」


 俺達もあれをしなければならないのかと青い顔になる男子、きゃあきゃあと黄色い声を上げる女子、気恥ずかしさから真っ赤になる俺達。思った以上にフレアに刺さったらしい俺の自爆特攻は、リリィ姉にも満足いただけたようで、静かなメロディが俺達を包み込む。


 フレアと踊るのは貴族の男女の物語、姉の婚約者に惚れてしまった妹と、そんな彼女を愛してしまった婚約者。政略結婚により結婚した男と姉はただ事務的に夫婦を演じ、ただ事務的に子供を成す、社会的に満たされ、心は満たされない。婿養子だった男にこの家は寒く、跡継ぎも出来たとなれば用済みとされていく。


 そんな彼に唯一優しかった妹は、辛くとも、ひたむきに政略結婚としての役割を果たそうとする男に惚れてしまう。そんな自分に気付いて身を引こうとする妹、唯一優しかった相手にすら距離を取られ、遂に倒れてしまった男は、様子を見に来た妹に、弱り切った自分をさらけ出してしまう。


 横恋慕はいけないと思いながら、けれど愛する人の弱ったところを見ていられない妹は、唇を合わせて本心を伝えてしまう。隠れた逢瀬を続ける2人、そして2人目の子を授かった姉はもう男は用済みであると、さらに跡目争いになりかねない妹は邪魔であると、共に家から捨てる決定を下した。


 姉の勝手によって男は失敗したと評価され、実家に戻ることは出来なくなった。実家に捨てられた男と妹、多くの物を失った、けれどその中で手に入れた大切な相手と、誰も知らない村の片隅で静かで幸せな生活を送っていく。


「2人ともよかったわ!」

「で、フレア、講師は認めてくれてるけど俺のダンスは合格?」

「…まだまだね、プリムの配偶者になりたいならもっと精進しなさい」

「うわぁ、やっぱ公爵家ってなると要求が高いなあ」


 そうして第一回のダンスの講義が終わった、キャロルなんかは十分に上手かったと言ってくれたし、メイは曲に込められた物語を教えたら感激してやる気を出していた。シークはあれをできる気がしないと今からでも講義を免除にできないか学内規則を漁っている。


 シーク、残念だけど平民の君はダンスは必修科目だ、免除されることはないよ。

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