63:講義登録
学生達だけでなく、王を筆頭とするこの国の重鎮も見ている状態で行われた俺とフレアの決闘。魔法科新入生の主席と次席が入学初日から決闘をするということで学園中の話題になり、学園中を野次馬にした、俺にとって願ってはいても迷惑なことに変わりはなかった決闘。なんであんな大勢の前で決闘を…。
そんな決闘は、公爵家令嬢が将来有望な人物を引き立てるために、自分の権利とその身の2つを使って実現させた、御前試合という少年のための舞台だったという噂が流れていた。
なんで加害者が慈悲に溢れる聖女みたいな扱い受けてんだよ!!フレアが考えがあるって言ってたのはこれかよ!?酷いなあいつ!公爵家の政治こえーよ!
「アルク、魔法科でやりたいことがあるって言ってたわよね?何をしたいの?」
「魔道具の研究をしたいんだよね」
「うえー、せっかく講義の大半免除されてるのに研究するのかよ、アルクは」
「シークもアルク様を見習って真面目に勉強しないとね」
今俺達は受講する講義の申請中、シークとメイに貴族視点でどういった知識は持っておいて欲しいかを伝え、2人の受講方針に参考意見を与えて、俺とフレアは自分がやりたいものの他は何を受けるかを相談する。
シークとメイが俺に講義のことについて話を聞きたいというのでどうせならとフレアを巻き込んだ形だ、相談をするうちに2人も大分フレアに対して打ち解けている。
俺とフレアは実技試験の結果から大半の講義を免除されている。それに加えて先日の決闘騒ぎのおかげでこれだけ実力があるのならと追加で講義が免除され、受ける意味のある講義が減りすぎて逆に困っている状態だ。
「魔道具の研究ってまた面倒なことやりたがるのね」
「まあ師匠からの勧めだし、必要だからね」
こちらに来る前にサラから勧められたのが魔道具の研究だった。俺の魔法は頭打ちで、これ以上強くなるにはどうしても外部の力が必要になる。けれど魔道具は高価なためとても気軽に試せる物ではない、ならば学園の魔法科魔道具専攻に進み、学園の金と学生の時間で研究に集中しようというわけだ。
「ふーん、まあアルクが魔道具関連の講義受けるなら私も受けるわ」
「フレアは魔道具で強くなるとかは好きじゃないんじゃない?」
「まあ今まではそうだったけど、出来ないと困ることもあるってあなたに教えられたしね」
「俺対策かよぉ…」
決闘で俺がフレア相手に取った作戦、あれはフレアが風か水の適性があったら採用できない作戦だ。気付かれた瞬間に風で空気を流される、水で体を冷やされるという解決をされて終わってしまう。
才能があるからこそ、フレアは自分の長所を伸ばすだけで圧倒的な強さを手に入れていた。それこそ出来ないことがあっても関係ないほどに。その自信、自負の隙を突いた作戦、フレアが出来ないことを魔道具でカバーし始めたら本当に付け入る隙がなくなってしまう。
「俺達は流石にその講義受ける余裕はねえな…」
「私たちは必修だけでほとんど埋まっちゃうもんね」
平民出身の2人は当然免除される講義などなく必修講義の嵐だ。貴族出身者なら選択となるダンスなんかも平民では必修となる。
「まあダンスは私たちも取るから一緒に受けられるわよ」
「え、俺も取るの…」
「貴重なみんなで取れる講義なのに取らないつもりなの?」
「その言い方はずるくない?」
女性であるフレアにはわからないんだ、貴族語で女性を誘わないとならない男の気持ちが。
「アルク、俺からも頼む。この前馬鹿にしたのは謝るから道連れになってくれ」
「アルク様のダンス体験会、友達からきいて羨ましいと思ってたんですよねー…」
「シーク、正直なのは君の良いところだけど交渉に関してはメイを見習った方がいい、脅しに関してはフレアを見習うといい」
「は?」
あっつ!?バレないように人の首筋を焼くな!講義外での魔法攻撃は校則違反だぞ!!
「フレア様はやっぱりダンスもお得意なんですか?」
「ええ、出来ないと家に傷がつくもの」
「それなのに俺達と一緒にダンスの講義受けてくれんのか?」
「せっかく友人と一緒に受けられるなら受けたいじゃない、それにアルクの腕前も気になるしね」
「え、俺?」
「プリムと結婚したいなら相手として恥ずかしくない程度には踊れてくれないと困るもの」
「あ、はい…」
あまりにも完璧な理論、一部の隙もない。
「じゃあ講義の時はダンスを教えてくれ、家でも教わったけど流石に時間がなくて最低限だし」
「ええ、そのつもりよ。だからちゃんと誘ってくるのよ?」
「わかってるよ、どうせ参加者からある程度誘うことになるだろうし、フレアとメイは誘うさ」
「えっ、私もですか?」
「知り合いの方が誘いやすいし、シークも最初はメイとフレアを誘うだろ?」
「まあ最初はなー」
4人で気になる講義の話をして、だいたい受ける講義は決まってきた。俺とフレアは免除されてる講義が多すぎてほとんどの講義が一緒になってしまった。
「フレアとほとんど被ったな」
「私達は受ける意味のある講義が少ないもの」
免除されている講義は受講しても単位にならない、結構な時間の無駄になるし、フレアは中級魔法の講義も免除、俺は中級魔法の講義を受けても使えない。こんな感じでまあ時間の有効活用を考えたらほとんど被ってしまった。
「なあ、そういや冒険者講習この4人でパーティー組まねえ?」
ベルデ学園の人気講義冒険者講習、冒険者の基本、魔物の知識やダンジョンの知識を学び、実際に冒険者ギルドで依頼を受けたり、ダンジョンに入る実習もある。そしてこの講義を修了すればEランクの冒険者資格が与えられ、生徒は休日等にバイトに勤しむことが出来るわけだ。そしてこれは魔法科1年は必修科目、俺は免除されてもいいのではと思ったのだが、とある理由で免除されていない。
「あー、ごめん、無理」
「なんでだよ」
「いや、俺Cランク冒険者だから講義に参加した上でむしろ講師側をやれって言われてる」
「は?」
「つまり単位やるから講師を手伝ってねってこと、実習の時には1人でも監督側が多いほうが安全だろ?」
「あー、アルク様がどうしてこの講義免除されてないんだろうと思ったらそういうことなんですね」
「フレアも実習中は使える魔法とか制限かけるから」
「なんでよ!?」
「いやフレアが魔法使ったら他の生徒の実習にならないだろ…」
「ああ…それは仕方ないわね…、めんどくさいけど…」
今朝の登校時、俺達の学年担任になっていたニコラ教授から伝えられた要望。経験、知識、実力があり、簡単な怪我ぐらいなら治せる俺は、この講義を受け持っている教師からぜひ補助員として使わせてほしいとの嘆願があったそうだ。ただ生徒の時間を学園の都合で奪ってしまうのはいかがなものか、ということで俺にちゃんと単位を付与し、俺が許可すればという条件で提案された。
まあ受けられる講義数減りすぎてたし、元々シーク達が冒険者として休日に活動するときは様子を見ようと思っていたから俺はこれを快諾、講義は取るが講義は受けない謎のポジションが誕生した。
「ええ、じゃあどうすっかなー」
「とりあえず3人で組んであと1人誘ったら?」
「その1人に悩むんだろうがよー」
3人で組んで前衛2の後衛1、魔法科は後衛がほとんどなので誘う相手には困らないだろう。
「んー、じゃあ私の友人を誘っていい?」
「お、それならいいぜ!フレアの友達なら悪い奴じゃないだろ!」
「私も大丈夫です、どんな方なんですか?」
フレアの提案に2人は快諾を示す、最初に組むパーティーだ、ある程度見知った顔の方がいいだろう。
「侯爵家の子でね、明るくていい子よ。礼儀にもうるさくないからシークが居ても大丈夫でしょ」
「その方が俺も助かる…」
「シーク…」
公爵令嬢を前にしても緊張が解ければ礼儀なんて吹き飛んでしまうシークくんは礼儀に厳しい人とはパーティーを組めなそうだ…。その辺りメイをもう少し見習ってほしい、ただメイももっと俺達相手なら砕けてくれていいとは思うけど。
「じゃああの子友達多いし、今から声をかけに行きましょうか」




