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59:入学式

 入学時試験、その翌日のオリエンテーションも終了し、今日は入学式だ。騎士科、魔法科の在校生によるパレードが参列者や新入生を歓迎し、従者科の生徒達が受付などの運営を行っている。


 この国にとってベルデ学園は軍事、学問両面の要だ。軍、内政、外交、そしてこの国、それぞれのトップ。名だたる重鎮たちが参列者として出席するため警備も厳重、普通の学園の入学式とはわけが違う。


「やべえよアルク、緊張してきた」

「シークにも緊張する人間らしさがあったんだね」

「アルクは俺をなんだと思ってるんだよ」

「アホの子」

「普通に酷くねえ!?」

「まあ、ふふっ、間違ってないからね」


 魔法科はまだ会場に入らないためシーク、メイと適当に雑談しながら呼ばれるのを待つ。各学科の新入生達が学科ごとに呼び出され順に入場、最後に俺達魔法科が呼び出され、最前列に着席する。新入生が全員12歳で身長が低い学科だというのもあるし、入学生の挨拶は魔法科の主席生徒が行うことになっている。


 式典が始まると学長挨拶、在校生挨拶、参列者挨拶と前世でもよくあった挨拶構成、参列者挨拶の最後、国王であるベルデ王が玉座から新入生、そして学園への期待を述べ、最後に魔法科主席生徒が学園への挨拶、そして王への宣誓のために呼び出される。


「魔法科新入生主席、フレア・レイン」

「はい」


 俺達の代での新入生主席はフレアだ、火と土の2属性で上級魔法を使え、剣の腕も一流、公爵家の教育により座学でも文句なしの英才。もしフレアを超えて主席になったやつがいたらこの世代は奇跡の世代とか言われるだろう。


 フレアが学園に入学できる感謝を、これから先達から学べる幸運を、研鑽に励むという決意を述べ、国を支えられる人材となることを王に宣誓する。


「今後、貴殿らの将来に期待する。主席生徒、フレア・レインよ、研鑽に励むにあたり、願いはあるか」


 これは主席の座を勝ち取った新入生への王からの激励、将来有望な生徒に可能な範囲で王が願いを叶えてくれる言わば学年トップのご褒美だ。だいたいが学業に役立つものだったり、訓練や調べもののための施設利用許可だったりするが。


「でしたら一つ、お願いしたいことがございます」

「申してみよ」

「式典終了後、決闘場の利用をお願いしたく思います。」


 …?フレアお嬢様はなにを王様に頼むつもりだい?決闘?決闘とかいったね君?いやな予感がするよ?参列者席にいるレイン公爵も頭を抱えているよ?


「決闘場の利用だと?誰か決闘したい相手がいるというのか」


 決闘、貴族の間で譲れない何かを争うための行為。揉めてこじれた権利関係の裁定だったり、名誉を侮辱された時などに名誉回復のために行われたりする行為。模擬戦とは違う、本気で相手を打ち倒すための戦い、そうそう起こることではない。

 

 けれど決闘場が学園にあるのは、決闘が発生した時、死んでしまったり不可逆な傷を負わないように、特殊な回復結界の張られた場を用意し、憂いなく本気で戦えるようにするためだ。当然そこまでの施設、よっぽどのことが無ければ利用許可なんて降りない、給食の残りのプリンを争って決闘します!とか言って使わせてもらえるわけがない。


「はい、主席は私ですが、国のため、将来有望という意味では私を超えると思われる少年がおります」

「ほう、その少年の名は」


 嫌な予感というのは得てして当たるものだ、まして俺はガーランドに連れられて勘を鍛えるための旅をした。戦闘勘とかそういう類のものではあるが、これは鍛えたその分野、なんか戦闘になりそうだなという気配である。


 まあ鍛えたからわかったという訳でもない。シークとメイも俺の事見てるもん…、勘を鍛えてなくても察するよね。


「魔法科新入生次席、アルク・スティングです」


 俺も頭を抱える、レイン公爵、天を仰いでいますけどこれはあなたの教育の成果ですよ。どんな教育したんですか。


「ほう。アルク・スティング、こちらへ」

「っ!はい!」


 流石に王に呼び出されて前に出ないわけにいかない。全くもって予想していなかった展開、確かにフレアは戦闘狂だがつい一昨日剣でやりあったばかりじゃないか。


 即座に王の前に進み、跪く。王に不敬を働こうものなら入学ではなく入獄することになる。1文字違いどころか子音がaからoになっただけなのに行く先が大違いだ。


「面を上げよ」

「はっ!」


 王から言われ顔を上げる。彫りの深い威厳ある顔、獅子のような印象を与える強い視線、こちらを見透かすかのような青く透き通った瞳、生え際が少し後退し広めな額。…発毛剤が欲しいって噂はこれかぁ。


「我としては主席の願いであり、また国の明るい将来となれば見てみたいと思うが、アルク・スティングは決闘を受け入れる意思はあるか?」

「王がお望みとあらば」


 こーれ実質脅迫です。王様から見てみたいんだけどやってくれない?って言われて断れますか?無理だよそれは入獄コースだよ。フレアこれを狙ったな…?


「感謝する、アルク・スティング。ではフレア・レインの願いを聞き届けよう、式典終了後、ベルデ学園の決闘場を用いて、フレア・レイン、アルク・スティング両名による決闘を執り行う。審判はそうだな、コンラート・レイン、軍の長たる貴殿が担当するがよい。娘の決闘だからと贔屓はすまい?」

「当然でございます、陛下」


 レイン公爵が美しい所作で王命を受ける。少し苦い顔をしていたけどあなたの教育の賜物なんですからきっちり巻き込まれてください。責任取れ。


「学園長、委細は任せる。せっかくだ、我も楽しませてもらおう。少し学内で休ませてもらうぞ」

「はっ!お任せください、陛下!」

「うむ、では2人とも下がってよい。よい決闘を期待しているぞ」

「「はっ!」」


 2人、王の前を後にする。なーんで王様の前になんか行かないといけなかったんですかね。席に戻りながら、小声ではあるものの抗議はしておかねばならない


「フレア、何考えてるの本当に」

「あら、王に顔を覚えてもらう機会をあげたのよ?感謝してほしいわ」

「本音は?」

「全力のアルクと戦ってみたかった!」


 うわぁいい笑顔。その笑顔を向けられて恋に落ちない男はいないと思うよ、宣戦布告じゃなければ。

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