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58:冒険者ギルド本部

 王都の白銀、その街中に聳え立つ赤レンガの荘厳な建物。ベルデ王国冒険者ギルド本部、その冒険者向け施設の一つ、そこで俺は今、宴会をしていた。


 あんな挨拶をして入っていけばノリの良い冒険者が


「おうおうおう、兄ちゃん、ずいぶん威勢がいいじゃねえの、悪いことは言わねえから家に帰りな!(学生さんがどんな御用ですか?怖い人に絡まれるかもしれないよ?帰ったら?)」


 と絡んでくれるので


「舐めんじゃねーよおっさん、俺はCランク冒険者のアルク・スティング、未来のトップ冒険者様が本部に顔を出してやったんだ(心配無用です、私はCランク冒険者のアルク・スティングといいます。今日は挨拶に伺いました)」


 と返すと


「はっ!舐めた態度とったことを後悔させてやるよ!面貸しなぁ!(それは頼もしいけど、本当に心配の必要がないか気になるから少し実力を見せてくれない?)」


 と誘われるので


「上等だオラァ!(よろしくお願いします)」


 と後を着いていけば訓練場で喧嘩祭り(模擬戦)が発生する。


 今は喧嘩祭りが終わって実力を認め合ったみんなで大宴会。先ほどのはいうなれば冒険者語を用いた面接の申し込みだ。命懸けで行う冒険者業、初めてギルドに訪れたら実力を確認して貰い、そこでやっていけるか、パーティーを組んで命を預けられるかを見定めてもらう。


 冒険者が拠点を移し、さっさとその土地に馴染みたい時に行う、ちょっと手荒で、実力に自信がないならやってはいけない通過儀礼。こいつなら冒険者として一人前だと認めて貰えるし、ノリのいい面白いやつだと仲間認定してくれる。


 いやまあ便利だけど何だろうねこの文化。……後でフレアにもやらせよう。


「君がアルク・スティングくんでいいのかな?」

「そうですが、どちら様ですか?」

「ああ、ごめんね。僕はここの本部長をしているケイン、よろしくね」

「本部長でしたか、よろしくおねがいします」


 宴会中の俺に話しかけてきた薄い青髪の温和な男性、粗野な者が多い冒険者ギルドに全く似合わない人物は本部長だったらしい。やっぱり本部だとマネジメント能力とかが重要なのだろう。


「ガーランドから君の話は聞いていましたがいきなりこんなことをする子だとは思いませんでしたよ」

「いやー、一度やってみたくて。それに3年間王都で過ごすなら早めに打ち解けたいじゃないですか」

「だからってこれをやる人はなかなかいないけどね…。みんな楽しめたみたいだからよかったけど」


 そう言って宴会を楽しむ冒険者たちを眺め、ケイン本部長は苦笑する。みんな食って、飲んで、馬鹿やって、俺が仲間に加わったことを喜んでくれている。


「そうそう、僕がきたのはアルクくんがなんの用事で来たのか知りたくてね。まさかこのためだけに来たわけじゃないんでしょ?」

「顔出しと自分の事情等の登録ですね、学生ですので緊急依頼なんかも対応できない可能性があるので」

「その手続きをしに来てくれたんだね、助かるよ。書類は今持ってこさせるから少し待っていてほしい」


 Dランク以上の冒険者は魔物の大量発生などの異常が発生した場合、緊急依頼として強制で討伐に参加させられることがある。そのためギルドには冒険者の滞在情報や冒険者ごとの事情などが登録されている。


 俺はCランクなので緊急依頼の対象内、しかしここにいるのは学業に勤しむためだ、緊急依頼で遠征して単位が足りなくなりました、とか笑えない冗談でしかない。それを防ぐために自分の事情や活動方針などをギルドに申請、登録しておく必要がある。


「事情はそれでいいとして、活動方針なんかも決まってるのかい?」

「軽く小遣い稼ぎや友人の補佐でもしようかと、冒険者志望の子がいるので」

「新人の補佐に君が入ってくれるならこちらとしても安心できるね」


 王都では学生魔法使いが冒険者になるのはよくあることだ、言ってしまえばアルバイトのようなもの。王都で遊ぶお金のために平民の子などは冒険者としてお小遣いを稼ぐ。当然危険な魔物と戦ったりはさせないし、教導役も付いたりするわけだが。


「ああ、書類がきたね、話してもらった事情から…、こことここの項目にチェックを入れてサインしてくれるかい?それで手続きは終了だから」

「わかりました」


 言われた箇所の内容を確認してチェックとサインをしケイン本部長に手渡す。これで冒険者ギルドでやっておかないといけないことは終了、本部長とも顔合わせできたし上々だろう。


「じゃあ宴会も楽しめたので俺はそろそろ帰りますね」

「ああ、そうだね、遅くならないうちに帰るといい」

「おいおいアルクもう帰るのかよ!まだまだ夜はこれからだろ!?」

「そうだそうだ!お前のせいでこんな宴会してんのに主役が帰ろうってのか!!」

「学生なんだから流石にそろそろ帰らないとまずいんだって!」

「お前なら学園に通う必要なんてねえだろ!このまま退学して冒険者になっちまえよ!」

「「「そうだそうだ!!」」」


 冒険者たちがやんややんやと騒ぎ立てる、完全に後先考えない由緒正しい酔っ払い冒険者だ。


「あなたたち…学生さんを困らせるんじゃありません…」


 ケイン本部長が怒りをにじませ、静かに告げる。瞬間、骨まで凍り付くような寒気が()()()()()()()()発せられ、気付いた時には率先して騒いでいた3名の冒険者が凍り付いていた。


 えっ…、あの…、完全に氷に覆われてるけどあれ死んでない…?あ、長時間じゃなければ大丈夫と…。長時間だとダメなんだ。長時間だと頭がおかしくなると…、それ酸欠の後遺症だよね…?


 …待ってなんでそうなることを知ってるの、この人?もしかして、やった…?


「頭は冷えましたか」

「「「はい!本部長!」」」

「アルクくんは学生さんなんですからちゃんと寮に帰らせますよ?」

「「「はい!本部長!」」」

「アルクくん、うちの冒険者たちが申し訳ない」

「…ああ、大丈夫です。…気にしてないので」


 うん、酔っぱらった冒険者たちがあんなことを言い出すのなんて迷惑でもなんでもない。それよりも一瞬で冒険者たちを凍らせた本部長の魔法のほうが気になるというか…。


「そう言ってくれると助かるよ、じゃあ気を付けて帰ってね」

「はい、ありがとうございました…」


 礼を伝え、冒険者ギルドを後にする。


 暗くなってきた帰路を歩きながら、俺は出会った頃にガーランドが言っていたことを思い出していた。我の強い冒険者は強いやつの言うことじゃないと聞かないと、だから支部長は実力が大事だと。


 そんな支部長を取り纏めるトップ、ケイン本部長がマネジメントなどの経営能力だけで選ばれてるわけがなかった。


「ギルド本部、怖いなぁ…」


 ギルドが、というか、ケイン本部長が

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