51:入学路
書ける時に書く、書いたら上げるのペース、すごく気楽にできていい。これから書く学園編書き終わったらとりあえず自分がこんな話を読みたいなあと思ってたところまでは書ききれるのでいったん完結扱いにはできそう。その気になれば全然続きは書けるけれど、一旦完結扱いにして書きたい時に書くシステムにした方が気が楽なのでそこを目標で!
リリィちゃんに礼儀作法やダンス、音楽を超特急スパルタコースで仕込みなおされ、冒険者の粗野な世界に染まりかけていたCランク冒険者アルク・スティングは無事にスティング伯爵家子息アルク・スティングの姿を取り戻した。今の私は優雅ですわぁ。…関西弁みたいになっちゃった。
そんな貴族の姿を取り戻した俺は、ベルデ学園入学のため、リースと共にベルデ王国の王都ベルディンに向かう馬車群の一台に乗っていた。この馬車は国が用意したもの、ベルディンから地元に帰る卒業生たちを送り、そのままベルディンに向かう新入生を拾って帰る形だ。おかげでエリック兄さんとも再会できたし、少しだけ話す時間も取れた。兄さんはすっかり身長も伸びて多くの女の子にきゃあきゃあ言われていたことが想像に難くない好青年になっていた。兄さんはCランク冒険者となっていた俺に驚いていた。
どんな平民も、貴族も学生という平等な身分になる以上、入学前から多少なりと交友を深められるように、また家の権力を笠に着ることのないように同じ馬車で送迎されるのだ。まあそれでも誰でも世話役を1人付けて良いという、誰にでも許された権利に見えて実質貴族か大商人ぐらいでないと不可能な制度があったりと、完璧に平等だとは言いにくいが。
「なあなあ!もしかしてアルク・スティングってあんたか!?」
「ん?そうだけど?」
「ちょっとシーク!?貴族相手にやめなさいよ!?」
「ああ、貴族とか気にしなくていいよ。同じ学生になるわけだし、畏まられるほうがやりにくい。なんなら冒険者やってたからもっと無礼講な感じだったし」
外を見てのんびりしてたら突然明るい男の子に話しかけられ、知り合いっぽいしっかりしてそうな女の子がたしなめている。他の貴族だとヤバいかもしれないけど、俺相手なら別に素で接してもらえればかまわない。
「君はシークって言うの?そっちの子は?」
「ああ、そうそう!俺はシーク!んでこっちのうるさいのがメイ!」
「うるさいってなによ!アルク様が優しかったからいいけど大変なことになってたかもしれないんだからね!?」
「アルク様が平民でも親しみやすいし冒険者やってたなんてスティング領じゃ有名だったんだし大丈夫だろ?」
「ははっ、そう言ってくれるのはありがたいけど、他の貴族だと怒る人もいるかもしれないから注意はしたほうがいいね」
どうやら同じところで育った二人なのだろう。地元で同い年に魔法使いがいるとなれば仲良くもなるか。
「それでさ!アルクがCランク冒険者だってのは本当なのか!?ステンでそんな話を聞いてさ!」
「ああ、まあ本当だよ、といっても数か月前からだけどね」
「うっわマジかよ、学園行く必要あるのかそれ…?」
「んー、まあ知りたいこと、勉強したいこともあるし、その辺理解したらもっと強くなれそうだしね」
「アルク様はもっと強くなりたいんですか…?」
「まあ事情があるからね」
まあその事情をここで言うつもりはないし、どうせ将来的にバレるだろうから言う必要もないだろう。
「アルクが冒険者ランクを買ったんじゃないか、みたいに言ってる人もいたけどアルクのその感じだと買ってないんだよな?」
「まず前提としてランクを買うなんてことは出来ないんだけど。それにシステム的に買う意味がないね。正当な理由なく活動しなければランクは下がるし、実力もないのにランクを上げて難しい依頼受けても自分が死ぬだけだし」
「そりゃそうか。なあ!俺卒業したら冒険者になりたいんだけどさ!どうしたらいいかとか教えてくもらえねえか!?」
「シークは冒険者になりたいんだ?」
「だって面白そうだろ?色んなとこ行って、色んな冒険して!」
「シークは昔からそうよね…」
うーん、冒険者だからってそんな冒険冒険!ってわけじゃないし、色々な所に行くなら当然路銀が必要で、それを稼ぐために地味な依頼もするから思ってたのと違う!ってなりそうだけど…
「冒険者も色々世知辛いけどねえ…」
「そうなのか?」
「冒険したかったら路銀がないといけないし、そのために真面目に依頼こなしてても冒険者ってだけで粗暴者に見られるよ?」
「えぇ…なんか夢がねえな…」
「B以上になればシークが憧れるような冒険生活もできるかもしれないけどね」
ガーランドやサラはそんな生活もできるだろう。やろうとするかは別として、2人ぐらいのトップクラス冒険者なら煌びやかな冒険者活動なんかもできそうだ。
「まあ卒業まで3年あるんだし、第一目標にはしておいて、どうするかはゆっくり考えたらいいんじゃない?」
「そうだよシーク、焦る必要なんてないんだから」
「うーん…」
そう言われてシークは考え込んでしまった。まあ片鱗とはいえイメージと現実の違いを教えられて悩んでしまうのもわかる。
「学生さん達!馬車から降りないでください!!」
「なんだぁ!?」
「えっ、なに!?」
突然、御者のおじさんから大声で指示が飛ぶ。ああ、これはあれだ、去年あたりに俺も経験したからわかるわ、サーチを使うとやっぱりいるもん、魔物。前を進んでいた護衛の冒険者を乗せた馬車の辺りで戦ってるわ。
「ああ、二人共大丈夫だよ。リース、他のみんなをお願い。俺は行ってくる」
「かしこまりました。やはり行かれるのですね?」
「まあ、戦力は一人でも多い方がいいからね」
そういって俺は馬車を飛び降りる。御者のおじさんは慌てているがそこはリースが説明してくれるだろう。被害を出さないためには迅速な対応、ってことでいつもの脚甲と魔法を用いた高速移動で戦線に参加する。
「Cランク冒険者、アルク・スティングです!手伝います!」
「マジか!?噂の天才少年が乗ってたのかよ!助かる!」
味方が混乱しないよう、大声で全員に伝わるように身分を明かす。毎年学生たちを送迎する馬車の通り道、そもそも魔物の出現が自体が稀だ、そんな馬車の護衛任務では恐らくDランクパーティー、よくてCランクだろう。
参戦すると戦っていたのはグラスバイソン。あー、これグラスバイソンの大移動とぶつかっちゃったやつだぁ…。大移動中は気性が荒くなっており、目につくものみな餌にするような勢いで襲ってくる。ある程度の被害が出ると逃げてくれるが逆に言えばそれまでは襲ってくる。
突進力が高く、力も強い、群れで来られるとCランクパーティーでも構成によっては壊滅する。このパーティーも運がないな…。
「俺が切り込むんで皆さんは馬車の守りをお願いします!」
「は!?あの中に突っ込んでいくのかよ!?」
「俺はそうじゃないと戦えないんで!それじゃ!!」
グラスバイソンへの対策その1、上級魔法で遠距離から群れを壊滅させる。学生にそれをさせるのは危ないのでなし。その2、遠距離から突進される前に中級魔法で倒す。冒険者パーティーの魔法使いがストーンランスでやっているが流石に群れ相手では手数が足りてない。その3、突進される前にこっちが突進する。そう、俺です。
高速移動とその脚を止めずに攻撃し続けるための日本刀での切り捨て、グラスバイソンの群れを幾重にも幾重にも、縦断して、横断して、切り分けていく。突進の準備をしている間に、こちらが突進して駆け抜ければグラスバイソンは向きをかえて準備をし直さなければいけない。そうやって切り捨てていたら、ついにグラスバイソンの群れは諦めたらしく、逃げ出し始めたので俺も馬車の方へと戻ることにする。
「怪我人はいませんか?」
「あ、ああ、助かったよ。俺達はDランクパーティーの波風だ。援護に入ってくれたおかげで前衛二人が軽く怪我したぐらいですんだ」
「そうでしたか、初級ですが治療魔法が使えるので治療しましょうか?」
「全適正持ちって噂は本当なんだな。護衛は続くし、治療してもらえるならありがたい。いくら払えばいい?」
「別にお金はいらないですよ、護衛が怪我して十分に実力を発揮できなければ困るのは護衛される俺ですから」
「君の強さなら全く困らなそうだけど…」
「流石に俺1人でこの人数守れませんって。初級しか使えない俺なんて所詮白兵戦特化なんですから」
そう言って俺は波風のリーダーらしい弓使いの男性に案内され、前衛の戦士2名の治療をする。うん、骨にひびは入ってるかもだがそのぐらいなら初級でも十分に治せる。戦士なら痛みにも慣れてるだろうし、俺が治療すれば十分に実力を発揮できるだろう。
「ありがとうな、兄ちゃん。魔法戦闘なんて初めてみたが初級魔法しか使ってないのにあんなすげえんだな」
「いや…、あれこのお兄ちゃんがすごすぎるだけと言うか…。学園卒業時点でもあんな精度であんな同時に魔法使いこなす人みたことないよ…」
波風の戦士の治療をしていると魔法使いの男性からそんなことを言われる。ベルデ王国で冒険者をやっている魔法使いなんてそりゃ学園の卒業生、ようするにOB、俺からみたら大先輩である。
「先輩のストーンランスも素晴らしかったじゃないですか、しっかり突進しそうなグラスバイソンから仕留めてましたよね?発動も早くて一撃で倒せる威力もあったし、判断も的確で学園でも優秀だったのでは?」
「先輩って…そうかもしれないけど冒険者としては君のほうが上じゃないか。でも、うん、君ぐらいの使い手から認めて貰えるのは嬉しいね」
治療も終え、波風の4人と軽く情報交換、もし同様に襲撃があった場合の打ち合わせだけ済ませて再度馬車には出発してもらう。俺が乗ってた馬車も来たので御者のおじさんに軽く挨拶だけして俺は客席に飛び乗った。
「ただいま、リース」




