96:また会う日
2年半ぶりの再会、なんでここにとか、どうして今とか、キャロルはどこだとか、フレアはどこだとか、色んな疑問はあるけれど、唐突な再会に混乱する中でなんとか会話を続けようと言葉をひねり出す。
「久しぶり、えっと…綺麗になったね」
「ふふっ…ありがとうございます」
なんだ綺麗になったねって、褒めるにしてももっとあるだろ。1回切り替えよう、久々とはいえずっと文通はしてたんだから、そのぐらいの気軽さで接すればいい。ほら、身長と共に長さを伸ばしたさらさら流れ艶めく金髪、別れた時から輝きを増して本人の意思を感じさせる蒼く澄んだ瞳、初めて会った時から感じていた彼女の柔らかで安心する雰囲気、それらを意識しすぎず普段通りにすればいい。
…無理だ意識するってこんなの。というか見慣れるために成長したプリムをしっかり確認したせいで余計に意識する羽目になったわ、逆効果。
「あっと、フレアとキャロルとここで合流する予定だったんだけど、何か聞いてる?キャロルとは面識あるって手紙で言ってたよね?」
「ええ、キャロル様には姉様と一緒に仲良くして頂いてましたから。お2人は後から合流すると言っていました、それと姉様から手紙を預かっています」
「手紙?」
「はい、こちらです」
アルクへ
私達はメイ達と合流することにしたからプリムのことはお願いね。今日の閉会前に、魔法科で空き教室に集合することになっているでしょう?その時連れてきてくれればいいわ。
ps.ここまでのお膳立てはしたけど、あなたがすべきことはわかるわよね?
「あいつらハメやがったな」
「なんて書いてあったんですか?」
「別の友人と合流するからプリムをよろしくってさ、閉会前に魔法科で集まる時に連れて来いって。そこでの合流を後から合流って言うなら嘘はついてないね…」
「姉様…、そんな勝手な…」
姉が人との約束をすっぽかして勝手してると聞き苦笑するプリム、その表情に仕方がない人だなという愛情が滲んでるのはプリムの優しさと、フレアがそうした理由を察したからだろう。
「だからってわけじゃないけど、プリム、俺とデートしてくれますか?」
フレアに言われたからじゃなく、ただ俺がプリムと一緒に学園祭を回りたい。そういう気持ちを込めてプリムを誘う。ただの学園案内とかじゃなく、デートとして。
「はい、喜んで」
プリムはにっこりと微笑んで俺の提案を受け入れてくれる。フレアがお膳立てした以上、ダメな可能性は低いとわかっていても流石に緊張した。緊張してることをバレたくないからあっさり誘ったけど。
「よかった、それじゃあ行こうか」
そう言って俺はプリムに手を差し出し、彼女の手がその上に重ねられる。会場内はお客さんで賑わっていて、学生達も魔法科以外は15歳以上が多いため当然俺達よりも大きい人が多い。ある程度の人数が居ればいいが2人きりでは簡単にはぐれてしまう。
そうならないようにしっかりとお互いの手を握る。少し恥ずかしいけど、まあデートと言った手前もあるし?うん、エスコートの延長延長!だから緊張するな俺、手汗よ出るな。
「プリムはなにか気になるものある?」
「屋台料理というものを食べたことがないので、アルク様のおすすめがあれば食べてみたいです」
「おすすめかあ、たこ焼きなら屋台の味の定番だし、2人で分けやすいからそれにしようか」
帰ったら夕食を食べるだろうからおやつ程度の量で済んで、屋台の味といえばこれ!というものならたこ焼きが適している。あとはりんご飴あたりのデザートで軽食は十分だろう。
そう考えてプリムを連れてまずはたこ焼き屋さんへ、移動している間に流石に気持ちも落ち着いてきたので並んでいるついでにプリムに色々聞くことにする。
「プリムは今日どうして来てたの?レイン公爵の付き添い?」
「それもありますが、来年から通うことになるので下見を兼ねてですね。姉様も去年は父様の付きそいで学園祭に来ていましたよ」
「あ、そうなんだ。もしかして今回来るのってあらかじめ決まってた…?」
「まあ…、そうなります」
「言ってくれればよかったのに」
「実は姉様から口止めされまして…、それに」
「それに?」
「私も驚いたアルク様を見てみたいなーなんて…えへへ」
「…」
なんということでしょう、プリムさんには意外といたずらっ子な一面があるらしい。恥ずかしそうに微笑んで誤魔化してる。かわいい。
「あ、でも姉様がアルク様をこんな風に呼び出すというのは知りませんでした。普通に姉様達も一緒に周るものだと思っていたので…」
「プリムもハメられた形かぁ」
「策士策に溺れちゃいました」
照れてるプリムがかわいいのでフレアのことは許すことにした。プリムは今日はレイン公爵の付き添いをしなければならなかったため、明日はレイン公爵、プラム夫人、コルンちゃんと本格的に学園祭を回る予定らしい。
「コルンちゃんも来てたんだ」
「はい、1人だけお留守番も可哀そうなので」
「そうなるとクラミーさんも…?」
「クラミーは…、会場の皆さんにご迷惑をおかけしかねないので…」
だいぶ優しく言ってるけどその表情はご迷惑おかけすることを確信してるよね?こんな人混みの中にいたら一体何が起こるのか怖いもの見たさはあったけど、公爵家の判断を信じよう。
そうこうしていると俺達の番が回ってきて、たこ焼きを一舟購入する。つまようじを2つ貰っているので2人で分けやすい。
「たこ焼き食べたことないんだよね?すごく熱いから気を付けてね」
「でも熱々なのが美味しいんですよね?」
「まあそうだね、俺はその方が好きかな。こんな感じで、はふっほふっ」
たこ焼きを1つ口に入れ、とろっと溢れる生地に舌を熱されながら、口に空気を含んで冷ましていく。水魔法で少し冷ましてもいいけど、たこ焼きと言ったらやはりこの熱々とろっとした生地だろう。
「せっかくですし挑戦してみます、猫舌ですけど!」
「えっ…?猫舌でそれは無謀!」
止める前にもう口に含んでしまった。たこ焼きは猫舌じゃなくても熱すぎて食べるのが大変な食べ物、熱々が一番美味しいけど猫舌の人間がそんな思い切っていってしまったら…
「……っ!!んーーーーーっ!!」
「そりゃそうなるって!早く呑み込んで!魔法で治すから!」
指示に従って急いで飲み込んだプリムの口内を水魔法で冷やして、治療魔法で治していく。プリムにもできるけど俺がやった方が患部を確認してできるため確実だ。
「熱かったです…」
「猫舌なのになんで一気にいったの…」
「美味しそうにされてたので…」
初めての屋台、どうせなら一番おいしい状態で食べたかったらしい。気持ちはわかるけど、結構無茶な冒険するなこの子。
「落ち着いた?次はちゃんと冷ましてから食べてね?生地を割って空気を入れれば冷めるのも早くなるから」
「はい…、流石にあそこまで熱いと味を感じるどころではありませんでした」
その後温かいぐらいに冷ましたたこ焼きをプリムは美味しそうに食べていた。うん、それぐらいがいいよ、やっぱり味がわかる状態じゃないと。
その後プリムの希望でデザートにチョコバナナを食べ、弓の射的で遊び、くじ引きや金魚すくいならぬ人魚すくいなどをして遊んだ。この世界における人魚とは頭部の模様が人面に見える金魚の魔物である、キモイ。前世でいう人魚はマーメイドと呼ばれている。ちなみに冒険者ギルドが買い取ってくれるため1回の挑戦で一定数すくうことができればなんと収支がプラスになる、三店方式かな?
あ、すくった人魚はリリースでお願いしまーす。




