95:ボディガード
「とりあえず俺達の担当分はこれで全部かな?」
「そうね、大丈夫だと思うわ」
「じゃあ教室へゴー!」
朝の公演が終わり、騎士組3人で手分けして担当の軽食を買い漁った。お化け組の2人にはメイが水魔法で冷やしておくことが出来るのでクレープなどのデザート系を、俺達は後から合流するし、俺とフレアが火魔法で温度を保てるので、焼きそばやタコ焼きなどの暖かいものの担当だ。美味しくご飯を頂くための魔法、魔法の最も有意義な利用方法である、うん。
「シーク、メイ、お待たせ。お昼にしようか」
「おう、おつかれ。今日の公演は客ヤバかったな」
「私達の方も増えてたけど、騎士組の方は桁違いだったね」
「屋外ステージだから対応できたけど、キャロるんが居なくて室内公演の予定だったらどうしようもなかったね」
「ふっふーん、私の魔法に感謝せーい」
「キャロルが魔法で調子に乗ってるのは初めて見たわね」
今日は王も視察に来る2日目。ベルデ王が来るとあたって観光客も多く、多すぎる観光客に対応するために、初日は夕方ぐらいには終わった学園祭も少し遅くまで開催される。そして俺達の演劇は魔法での派手な戦闘シーンや、舞台がシーンに合わせて姿を変えていく様子などが話題となったらしく、まあ信じられないぐらいお客さんが来た。
屋外訓練場に土魔法で特設したステージだからこそ、客席を増やすための対応が取れた。まさか開演前に土魔法使いみんなで客席作りをすることになるとは。
「うまっ、やっぱ焼きそばは屋台の味だな!」
「アルクって屋台の食い物本当に好きだよな」
「確かコルンと会った時も色々食べていたのよね?」
「味覚にはね、楽しいって味もあるんだよ。屋台の味はその楽しい味が強いから美味しいんだよ。キャロるんはわかるでしょ?」
「みんなで食べたほうが美味しいよねー?」
「ねー」
「えっ、そういう話だったかな?」
なにを言ってるんだメイ、みんなで食べるのも、屋台で食べるのもどっちも楽しいんだから同じ楽しい味の話だよ。
空き教室で食べているので昨日とは違い並びなどを気にせず、のんびりと雑談をしながら沢山の食事を楽しめる。コルンちゃんの名前が出たので話題はフレアの妹達のことへ、そうなると当然話題はプリムに及び、まあ芋づる式に俺にも影響が及ぶ。
「来年はプリムちゃん入学してくるんだよね?アルクはどんな気持ちなの?」
「どんな気持ちと言われても…、その時にならないとわからないとしか」
文通をしていたから気分的には久しぶりという感じはない、けれど実際2年半は会ってないわけで、どう成長してるかも何も知らないから、本当に会ってみないとどんな気持ちになるか想像もできない。
「プリムもアルクと別れてからあの子なりに色々考えて頑張ってたから、アルクの期待を裏切るような成長はしてないわよ」
「医学を学んでるって手紙には書いてあったかな」
「ええ、ベルデ学園でも2年次転科で医学科に行くつもりみたい」
「お医者様になんのかよ、すげえな」
「リムちゃんなら白衣の聖女様とか呼ばれそうだねー、昔からお淑やかで可愛い子だったから。フレっちよりよっぽどお嬢様って感じで」
医学科は中級以上の光魔法が使えれば無条件で転科できる。骨折など重めの怪我もすぐに治せる中級以上の治療魔法は魔物が存在するこの世界においてかなり重要なものだからだ。だがプリムの使える魔法は初級、つまり医学科に通えるだけの学力があると転科試験にて示さなければならない。
「実際フレアから見てプリムは転科試験合格できそう?」
「そうね…、お父様が専属の講師も付けたし、あの子は頭もいいから大丈夫だとは思うわ。もしよかったらアルクも勉強を見てあげて」
「えっ、俺が?」
「冒険者をやってた分、アルクの方が人体には詳しいじゃない」
「ああ、そういうことか。わかった」
これあれだ、暗にお前の前世の知識も可能な部分で教えろってやつだ。まあ俺が知ってる程度の医学知識なら問題ないだろう、医学の発展はリスクよりもリターンの方が大きいし。
「今日はこの後自由行動にするんだよな?」
「そうだね。メイ、シークの面倒はよろしくね」
「私せっかく王都にきたのにシーク係は終わらないのね…」
「いやメイに面倒見てもらう必要はねえよ!?」
「自分の事を過大評価するのはやめなさい、シーク」
「シーくんはメイっちいなかったらどうせ問題起こすじゃーん、やんちゃなお客さんもいるんだし」
やんちゃなお客さんって…、まあ実際そういう人は例年いるので、教師陣や王都の衛兵も学園内で見回りをしてくれてはいるわけだが。
「そういうことだからアルク、あなたも公演が終わったら訓練場のトレーニングルームに来てくれるかしら」
「そういうことって、もしかして」
「ええ、私とキャロルのボディガード、よろしくね?」
「アルるんよろー!」
「…仕方ないかぁ」
暴漢に襲われるぐらいならフレアが居れば十分だけれど、2人はまあ100人が100人認める美少女。つまり2人一緒にいることは仮想敵を考えれば逆効果。だって俺の役割ナンパ避けだもの。自由行動だったはずが結局グループもなんも変わらないか。
「ああそれと、昼の公演はベルデ王が見に来るから心の準備していてね」
「「え!?」」
突然フレアからもたらされた情報に驚く俺とキャロるんの当事者2人。ちょっとまってそれ朝作り変えた客席とステージを王の警護前提にまた変えないといけない!?
「姪の出し物だからって無理矢理組み込んだみたいね、暗い人混みの中で警護がしにくいって宰相は反対したみたいだけど」
フレア達の母親であるプラムさんはベルデ王の実妹、つまりフレア達はベルデ王の姪っ子ということだ。にしても姪の出し物を優先して宰相に苦労をかけるとか…
「そりゃ反対するでしょ…、もしかして客席作り変える必要ある…?」
「よろしくね、魔力量的に今のうちにあなた1人でやってもらうしかないけど」
「嘘だろおい…。フレアちょっと警備担当の人紹介できる?今からもう作業始めよう」
「まあ仕方ないわね。そういうことだから行って来るわ」
「「「いってらっしゃーい」」」
教室を出て、教員室で王の視察スケジュールを聞き、警備責任者を捕まえ、訓練場まで付き合ってもらい意見を聞きながら客席を警備しやすいように作り変えていく。朝のうちに知っておけば2度手間にならなかったのに…。
「そう言われても私が聞いたのも朝の公演直前なのよね。皆は公演中に魔力使うから魔力が足りなくなってしまうし」
「自分の魔力が多かったことを恨むのは初めてだよ」
そうして客席を作り変え、ステージの位置を変更し、警備責任者の満足と感謝を貰って、少し早めに演劇の準備を済ませた。せめてものうっぷん晴らしに準備にきた同期達にベルデ王が来ることを教えてみんなの反応を楽しんでおく。そうだよ八つ当たりだよ、まあ心の準備もしておいてもらわないとならないし。
そして御前公演が始まった。皆少し硬いけれど不意打ちで御前公演です!とか言われるよりはよかったのだろう。特にミスらしいミスはなく、魔力操作が得意なメンバーを集めていたおかげで制御を間違えたりもせずに、なんとか無事公演を終えることが出来た。
「マジで急に言うのは止めてほしかったな」
「本当にね、アルクは客席の作り変えもまたやったんでしょ?主演なのにお疲れ様」
「ケイトもお疲れ、じゃあ俺はフレアに呼ばれてるからもう行くよ」
「フレア議長に男子一同からって文句言っておいてね」
「任せて、騎士組一同からって言っておく」
衣装を着替え、髪も元に戻したのでトレーニングルームに向かう。筋トレが出来るように様々な道具がそろえられた部屋だ、ちょうど男子更衣室と女子更衣室の中間にあるから集合場所をそこにしたのだろう。
「フレアはメイクを落とさないといけないし、まだ来ててもキャロルだけかな?」
そんな予想をしながら、待ち合わせ場所であるトレーニングルームの扉を開ける。そこには予想通りまだ1人しかいなかった。けれどそこにいた人物は予想通りの相手ではなかった。
「お久しぶりです、アルク様」
「…プリム?」
知り合ってから約2年半、綺麗に、可愛く成長した俺の初恋相手、プリムが目の前で微笑んでいた。
ケイトくんは伯爵家の長男で礼儀正しいいい子です。アルクとは同じ伯爵家の出身だしアルク本人の気質もあって気兼ねなく付き合えるのでいい距離感の友達って感じです。
んで!やっと!プリムとアルクを再会させられました!いやー、長かった。もうすぐ入学はしてくるけどその前にね。




