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ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~  作者: 鳥助
第二章

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12.守ってくれる人

 左を見ると知らない路地。右を見ても知らない路地。後ろを見たら、今まで来た路地。


「ど、どっちに進めば!」


 出張後に近道して帰ろうと思ったら、道に迷うなんて……私の馬鹿! 早く帰らないといけないのに、こんなことになるなんて!


「と、とりあえず……左に……」


 身を縮めて左の路地を進む。狭くて、物がたくさん置いていて、歩きづらい。しかも、人が路地の壁にもたれ掛かっているし、なんだか怖い雰囲気だ。


 もしかして、悪い人に囲まれて、身ぐるみを剥がされたりとかは……。いやいや、まさかそんなことはないよね! そんな都合よく――。


「おい、姉ちゃん」


 前方の角から突如として現れた男性が路地を塞ぐ。なんだろう? と、思っていると、その男性はナイフをチラつかせていた。


 それだけじゃない。後ろにも気配がして振り向くと、二人の男性が路地を塞いできた。


「いいもん着てるじゃねぇか。金目の物と一緒に置いてきな」


「ついでに遊んでくれると、嬉しいなー」


 こ、これは……フラグ回収早すぎでは!? 私、何も悪いことしてませんよ!? 善良な一般聖女だというのに、どうしてこんなことにっ!?


「えっと、あの……私はホコリなので、お構いなく……」


 そそくさとホコリの真似をして通り過ぎようとすると、行く道を腕で塞がれる。


「何、逃げようとしているんだ? 逃がさねぇって言っているんだが」


「いやっ、私には何もありませんから! 構うだけ時間の無駄ですよ! ただの部屋の隅にあるホコリ程度の価値しかありませんし、それに――」


「何をごちゃごちゃ言っている? こっちに来い!」


 その時、手首を掴まれグイッと引っ張られる。その力に抗えずに体が傾き、地面に崩れ落ちてしまった。ひ、非力すぎる……。


「おら、立て!」


 また、強引に手を引かれた時――。


「何をしている!」


 聞きなれた声がして振り向くと、そこにはフィオナ様が立っていた。鋭い形相でこちらに近づき、私の手を掴んでいる男の腕を背中に回した。


「いででっ!」


「リアナに手を上げるとは、その罪……その体で払ってもらおうか?」


「うるせぇ!」


 すると、ナイフを持っていた男性がフィオナ様に襲い掛かった。ナイフを突きつけるが、簡単に避けられる。そして、その腕を掴み、簡単に地面に叩きつけた。


「うわぁ、何だこいつ! に、逃げろ!」


 一人の男性が逃げると、もう一人の男性も逃げ出した。それを見て、捕まっている男性も不安に思ったのか、フィオナ様の腕を振り払い、路地を駆けていった。


「逃げられたか……。だが、今はリアナが大事。リアナ、怪我はなかった?」


 しゃがみこんで私を覗き込んでくる。私、助かった? そう思うと、途端に体の力が抜ける。


「あ、ありがとうございます。怪我はありません。でも、どうしてフィオナ様がここに?」


「教会に行ったら、リアナが出張から帰ってくるのが遅いと教えてもらった。だから、心配になって来たの」


「そ、そうですか……。本当に助かりました」


 フィオナ様が来てくれて、凄く安心した。傍に誰かがいると萎縮しちゃうけれど、フィオナ様はそれがない。どうして、そんな気持ちになるか分からないけれど、なんだかそれが嬉しく思える。


 ふわふわとした気持ちになっていた時、フィオナ様が近づいてきた。そして、私を優しく抱きしめた。


「えっ!? えっ!?」


「良かった……本当に何もなくて。もし、何かったら……」


 体に回る腕にギュッと力がこもる。柔らかくて力強いその腕、密着した体の温もりを心地よく感じる。


「フィオナ様……だ、大丈夫です。フィオナ様が守ってくれましたから」


「守ることは出来ても、恐怖を感じさせてしまったね。そんな思いをさせたくないのに……」


 なんとか取り繕うが、さらに抱きしめる力が籠ったように感じた。本当は逃げ出したいくらいに恥ずかしいのに、なぜか心が落ち着いている。


 フィオナ様に助けられたから? だから、密着しても大丈夫なの? ……自分の気持ちが分からなくなった。普通はこんなこと、受け入れられないのに……。


 しばらくその温もりに包まれていると、自然とフィオナ様が体を離す。ちょっとだけ、名残惜しく感じたのは……どうして?


「今度はそんな怖い思いをさせないように、私がリアナを守るよ。だから、助けが必要な時は呼んで欲しい。必ず助けるから」


 その言葉に心に残った不安が消えていくようだ。私なんかのために、そこまで気にかけてくれるのは何故? ただの祝福係なのに……。


 でも、そう思われるのも悪くない。だったら、私は何を返せるのだろうか?


「だったら、フィオナ様に助けが欲しい時は私がまた助けますね。私の力なんて微々たるものですが、それでも何かしてあげたいです」


 真っすぐにそういうと、フィオナ様は驚いた顔をした。それから頬を赤く染めて、はにかむように微笑んでくれた。


「これだと、お互いに助け合う形になってしまうね。……だけど、それもいい。なんか、特別な感じがする」


「と、特別ですか? いや、そんな……私がただ、返したいを思っただけで……」


「いや、特別だよ。そう思える相手は大切な人じゃないと出来ない。リアナは私を大切な人だと思ってくれているってことでしょ?」


「うっ! いや、そんな、私如きが、フィオナ様を大切だなんてっ!」


 フィオナ様は大切な人だけど、個人的に大切な人ではないというか! いや、これは失礼だ! だったら、大切っていう? 私如きがそんな事をいうのはっ!


「ふふっ、また百面相をしている。リアナは本当に可愛いね」


「いや、私に可愛いっていう言葉を使うと、言葉が腐っちゃうような! もっと貶してください!」


「そういう趣味なら付き合うけれど?」


「す、すいません! そういう趣味じゃありません! 普通で、普通でお願いします!」


「じゃあ、普通に口説いても良いってこと?」


「うー、あー、いー……それはっ……」


 なんで、そんな話しになった!? まさか、最初からこの流れを狙っていたとか!? 策士、策士すぎる!


「じゃあ、帰り道がてら私に口説かれても良いってことで、いいね?」


 圧の強い笑顔で言われると、何も言わずに頷いてしまった。……何故そこで頷く、私ぃぃっ!

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