5.歓喜のダイブ
「六甲おろし」の大合唱が道頓堀を包み込んだ。
戎橋の上は、人々の涙と笑顔で溢れている。
「よし、一番手……行くぞ!」
栄吉の合図で、公式ダイビングのゲートが開いた。
最初に飛び込んだのは、なんと市長だった。スーツを脱ぎ捨て、下に仕込んでいたタイガースの法被姿で、彼は見事なフォームで川へ舞った。
ドッポーン!
大きな水しぶきが上がる。
「冷たーい! けど、気持ちええわ!」
水面に顔を出した市長が叫ぶ。その瞬間、川沿いにいた数万人の観衆から、これまでにないほどの大歓声が湧き起こった。
続いて、登録されたファンたちが次々と飛び込んでいく。
「おもんない街なんて言わせへんぞー!」
「大阪最高ー!」
救命胴衣を着たライフセーバーたちが笑顔で誘導し、川から上がった人々はそのまま「ビクトリー・バス」へと吸い込まれていく。
シャワー室からは「あぁ~……」という極上の吐息が漏れ、湯船に浸かったファンたちが、見ず知らずの者同士で裸の付き合いをしながら、優勝の喜びを分かち合っていた。
翌朝。
道頓堀川の周辺には、ゴミ一つ落ちていなかった。
飛び込んだファンたちが、自主的に清掃を行ってから帰路についたからだ。
SNSには、キラキラと輝く道頓堀川の写真とともに、こんな言葉が溢れていた。
《世界で一番、阿呆で最高な街。大阪》
《ルールを守って、全力で遊ぶ。これこそが大人の余裕》
《飛び込んだ後の風呂が、人生で一番気持ちよかった》
海外のメディアもこの様子を大きく報じた。
『日本・大阪では、伝統的な狂気を現代的なシステムで昇華させた。これは都市管理の奇跡だ』




