2.泥の中の宝探し
まず着手されたのは、川の清掃だった。
「道頓堀川清掃ボランティア」という名目で集まったのは、普段はライバル関係にある飲食店主や、仕事帰りの会社員、そして「優勝したら絶対に飛び込んでやる」と意気込む熱狂的なタイガースファンたちだった。
「うわ、なんやこれ! 原付バイクが出てきたぞ!」
「こっちは……古い炊飯器か? 誰や、こんなとこに捨てたん!」
大型のクレーンと浚渫船が導入され、川底に溜まった数十年の汚れが次々と引き揚げられていく。自転車、看板、不法投棄されたタイヤ。そして驚いたことに、かつての優勝騒ぎで沈んだと思われる、折れた応援バットやメガホンも大量に見つかった。
栄吉は、泥まみれになりながら作業を指揮した。
「ええか! 泥をかき出すだけやないぞ。水質改善装置も設置するんや。バイオの力で大腸菌をゼロにする。飛び込んでもお腹を壊さん、プールより綺麗な道頓堀川にするんや!」
近隣の企業からも寄付が集まった。大阪に本社を置く飲料メーカーやゼネコンが、「大阪を面白くするなら」と、最新の水質浄化システムを無償で提供してくれたのだ。
清掃作業の様子は、SNSで拡散された。
《道頓堀がマジで綺麗になってる》《大阪の本気を見た》《今年の飛び込みは、一味違う予感》
冷笑的だったネットの空気も、徐々に期待へと変わっていった。大阪の人間が「本気で阿呆をやろうとしている」ことに、人々が気づき始めたのだ。




