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第4話 幼馴染に監禁された

……意識が浮かぶ。


頭が重い。


まぶたを開けようとしても、思うように力が入らなかった。


「……ん……」


ようやく目を開くと、見慣れない天井が視界に映る。


ここはどこだ?


というか僕はなんでここにいる?


「起きた?」


聞き慣れた声が耳に届く。


ゆっくり視線を向けると、目の前に美咲がいた。


「おはよう、蒼真。」


まるで恋人を起こすような優しい声。


その笑顔を見た瞬間、僕の意識は一気にはっきりした。


「美咲……ここはどこだっ!」


「地下室だよ。蒼真をここに連れてきたのは初めてだね。」


「何を言ってるんだよ!」


起き上がろうとする。


だが、動けない。


「え?」


両手を見る。


古い鉄製の手錠のようなものでベッドに固定されていた。


足も同じだった。


「な、なんだよこれ!」


「暴れないで。」


美咲は優しく僕の頭を撫でる。


「まだ少し薬が残ってるから、急に動くと危ないよ。」


「外して!」


「やだ。」


即答だった。


「逃げちゃうもん。」


「当たり前だろ!」


「どうして?」


美咲は本当に不思議そうな顔をした。


「私、蒼真のことを一番大切にしてるのに。」


その言葉に、思わず息をのむ。


「盗聴器を付けて、警察までついてきて……こんなの普通じゃない!」


「普通じゃない?」


美咲は少しだけ考え込む。


「好きな人のことを知りたいって思うのは、おかしいことなのかな?」


「蒼真は知りたいって思わないの?私は知りたいと思ってるよ。」


「蒼真の食事内容も生活リズム、交友関係、それにおはようからおやすみまで全部私が管理したいと思ってるよ?」


その瞳には迷いがなかった。


本気でそう思っている。


それが一番恐ろしかった。


「そうだ。」


美咲は何かを思い出したように立ち上がる。


机の引き出しから、一冊のアルバムを取り出した。


「これ、見て。」


ページを開く。


そこには小学生の頃の僕。


最初の一枚は美咲とのツーショット。


運動会。


遠足。


卒業式。


中学生になった僕。


高校に入ってからの僕。


どの写真にも、僕は気付いていない。


全部、隠れて撮られたものだった。


「……これ全部。」


「うん。」


美咲は照れくさそうに笑う。


「宝物。」


ページをめくるたび、僕の背筋は冷たくなっていく。


「今日のお昼、何食べたとか。」


「何時に寝たとか。」


「好きなお菓子とか。」


「全部書いてあるよ。」


写真の横には、小さな文字で細かい記録まで残されていた。


僕の知らない僕の生活が、そこにはあった。


「ねぇ。」


美咲はアルバムを閉じる。


「これだけ好きなのに、まだ付き合ってくれない?」


期待に満ちた瞳が、僕を見つめる。


「……ごめん。」


その一言で十分だった。


部屋の空気が静かに冷えていく。


美咲は数秒黙ったあと、小さくため息をついた。


「そっか。」


「じゃあ、もっと好きになってもらえるように頑張るね。」


その笑顔は優しい。


けれど、その言葉は逃げ道を一つ残らず塞ぐようだった。


そして美咲は部屋の電気を消し、ドアの前で振り返る。


「今日はゆっくり休んで。」


「まって!最後にこれだけ聞かせて!」


「家にあった盗聴器は全部外した。なのに美咲はどうやって僕の居場所だったり行動を知ったの?」


「気になるんだ?じゃあ教えてあげる。」


「蒼真のスマホにはね、私がこっそり入れた監視アプリが入ってたんだよ。だいたい蒼真がスマホを持って三日くらいたってからね。」


「だから蒼真があの時不自然に家中を歩き回っていたのもわかったし、今日警察署に行こうとしたのもわかったんだよ。」


美咲は不気味な笑みを浮かべた。


「それじゃあ……明日は、もっと楽しいことしようね。」


ガチャリ。


鍵の掛かる音が、静かな地下室に響いた。


暗闇の中、僕は拘束されたまま天井を見つめる。


逃げ場なんてどこにもない、完全な密室。


もしかして、僕はずっとこのままなのだろうか……?


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