3 ネコマタ、ネズミ退治する。にゃーニャー
ネコマタたちは、ケモミミ派遣の従業員です。ケモミミさんたちにはそれぞれの得意分野があるのですが、ネコマタたちは主に身軽さと反射神経、そして何よりも可愛さと幸運をを派遣しているのです。
「ネコマタたち、凄く運いい。ラッキーネコ、いるだけでみんな幸せ。」
だそうです。
「今日の依頼、ネズミ退治。頑張る」
ネコマタたちはエイエイニャーと鳴きました。ネコマタとはとてもすんごいネコなので当然ネズミなんて楽勝です。
さっそくお仕事先であるダンジョンに行ってみると、剣や棒を携えた一団がいました。遅れたわけではありません。まだ指定された時間にはなっていません。彼らのほうが早いのです。
ネコマタたちは頭と耳と尻尾をぺこりと下げて、初めましてとよろしくお願いしますのにゃーニャーをしました。
集団の中でひと際たくましい男が、「自分たちはネズミ退治の依頼を受けた傭兵で、依頼主を待っているのだ」、と言いました。顔に反して優しいそうな振る舞いでした。
依頼人を待つ間、幸運にあやかろうと傭兵たちがネコマタたちをもみくちゃにされました。ほんとを言うと触られるのは好きではありませんが、これもお仕事です、我慢します。お一人につき頭を三撫で、尻尾をひとさすり、肉球パンチをご所望までは許します。ただし無許可、回数オーバー、セクシャル区域への接触はNGとなっております。
指定された時間をたっぷり過ぎて、依頼主がやってきました。でぶっとして、どすっとして肥えた男です。要するにでぶデブどすドスということなのです。
彼は依頼書を見せて詳しい内容を話します。最近ダンジョンを根城にしているネズミがすぐそこの街にやってきて盗みや落書き、無銭飲食をして住人を困らせているらしいのです。
とても数が多くてすばしっこいため街中で捕まえきれないので、ダンジョンに乗り込んで一網打尽にするとのことです。
ネコマタたちは幸運のマスコットとして、後ろで見ているだけでいいそうです。
てっきり直接捕まえる依頼だと狩人の血をたぎらせていたのに、がっかりです。
というわけでやってきましたネズミーダンジョン。湿っぽいけれど、意外に整備されていて淡い明かりが灯っています。どうやらネズミたちはキレイ好きのようです。
「ちゅ?」
ダンジョンの入り口に早速いました、ネズミです。9匹います。ただし普通のネズミではありません。ネコマタの次の次くらい可愛い女の子にネズミの耳と尻尾が生えていて、全員が同じ顔をしていました。
「我はネズニンであるー。忍者ネズミなのだー。最強なのだ―。いたずらして人に迷惑かけるの最高なのだー。生きがいなのだ―」
ネズニンは突然の侵入者にも動ぜずに実力と性格と趣味が畜生であることを宣言しました。
依頼主は自分たちがネズミの悪行に困っていること、そのため討伐に来たこと、それが嫌ならすみやかにこの契約書にサインしてこのダンジョンから立ち退くことを要求しました。ついでに自分たちには幸運のネコ様がついているから抵抗は無駄だといいました。
「なんだとー返り討ちだー」
と叫びながらネコマタたちに襲い掛かります。
かなりの素早さで、傭兵たちは剣や棒を振るいますがかすりもしません。あっけなく身ぐるみはがされて逃げ出してしまいました。――いえ、一人だけ無事でした。ネコマタたちと話した傭兵たちのリーダー格の男です。傭兵さんは重い剣を自在に振り回してネズミの攻撃をしのいでいます。
「ちゅちゅちゅ、人間など恐るるにたらずー」
肥えた依頼主はネコマタたちの後ろにサッと隠れて言います。
「さぁネコ様やってください」
さっきと言ってることが違いました。なんだかずいぶん都合がいいです。
「こいつネコだー」「ネコ怖い―」
9分の2匹が言いました。一匹だけは勇猛果敢に、
「普通ネズミはネコに狩られるさだめ……だが、忍者ネズミはネコより強い。これが常識ー。ものどもかかれー」
しかし、相手が悪すぎます。クロマタはネズミの攻撃を軽々とかわして、魔法ネコパンチ(爪なし)を繰り出します。
「ばたんちゅー」
ネズミは一瞬でやられてしまいました。魔法ネコパンチ(爪なし)とはネコマタ専用の魔法の肉球で相手を吹き飛ばし気絶させる、けれど絶対にけがをさせない強くて優しい魔法なのです。特にネズミとサカナには効果抜群です。
「ひるむなー、みんなでかかれば怖くない―」
残りの忍者ネズミたちはいっせいにかかります。
が、間に割込む人影がありました。傭兵さんが剣の腹でネズミたちを吹き飛ばしたのです。
「なかなかやるではないかー。なら本気を見せてやるー……ネズニン集合ーーーー‼」
掛け声が終わると、ドドドドと地響きがしました。なんとダンジョンの奥から大量のネズミが来るではありませんか。
大量のネズニンは指をワキワキさせながら「数の暴力だ―」とハモりました。
常識的に考えて、クロマタと傭兵さんと肥えた依頼主の三人では絶望的な状況です。
そんな中、シロマタさんがやれやれとでも言いたげに、にゃ~とあくびしました。余裕たっぷりです。
風が吹き荒れました。次の瞬間、風の中心に白くてモフモフした生き物がいました。それはとても大きな白いネコでした――いえ、尻尾が二本あるネコマタでした。頭の上にはクロマタがしがみつくように乗っています。それぐらい大きいのです。ふにゃけた顔つきはまぎれもなくシロマタさんです。これが本当の姿なのです。
大きいシロマタさんは取り囲んだネズミたちを、電光石火の勢いでテシテシベチンッと倒していきます。けれど一人だってケガをさせないように優しくです。
あっという間にネズミたちは全滅(無傷)しました。
シロマタさんの頭の上でクロマタが自慢げに言います。
「普通ネコは忍者ネズミには勝てない、だけどネコマタは忍者ネズミにも勝てる。世界の常識」
それみたことかとネコマタたちはにゃーニャー喝采をあげました。
気絶したネズニンの山はポシュッと消えて、一匹だけが残りました。
「実は全部分身なのだー。ネズニンは孤高の存在なのだー。毎日少しずつ分身したのにー」
無念そうに言いました
「ざまあみろ、糞ネズミ。さあ契約書にサインを」
依頼主はやたら偉そうにいいました。かくしてネズミは捕まり依頼は達成、とはいかないようです。
「こんな横暴だ―、このダンジョンは放置されて荒れていたのをネズニンが一人できれいにしたんだぞー。確かに街でいたずらはしたけど、それだけだぞー」
そんなことは初耳です。ネコマタたちと傭兵さんは顔を見合わせました。この依頼はギルド経由の依頼です。確かな信用調査を経ているもののはずです。
依頼主は明らかに動揺しています。いったいどういうことでしょう。
ネコマタたちは後ろから声をかけられました。その男は街から走ってきたようで息を乱しています。その男を見て依頼主はびくりとしました。とても怪しいです。
「その男は詐欺師です。本当の依頼は隣にある別のダンジョンでネズミの魔物を駆除することなのですが、盗んだ依頼書で皆さんを騙し、住人のネズミーを追い出すことでダンジョンを不当に手に入れようとしているのです。」
汗だくの男は説明しました。
肥えた男は逃げ出そうとして転んだところを傭兵さんにとりおさえられました。この男は依頼書の窃盗と詐欺の罪で連行されるそうです。
「ふははー、悪は潰えたり―、ざまーみろー」
ネズニンは言いましたが、街でいたずらを繰り返していたのは事実です。罰として本当のネズミ退治を手伝うように言われて、がっくりしました。
この後ネコマタたちと傭兵さんとネズニンの三人組はネズミ退治の依頼を達成して、街の酒場で夕飯です。迷惑料もかねて報酬はたっぷりです。
「ネズニンさん、一緒にケモミミ派遣ではたらく?」
ネズニンの分身能力を生かせばきっと大活躍間違いなしです。
「やるのだー」
分身したネズニンが一斉に答えました。
「傭兵さんも、はたらく?」
傭兵さんはケモミミでないことと、すでに次の依頼うけていることを理由にお断りしました。
飲み食いしながら、クロマタは言います。
「今日もおつかれさま、です。にゃー」
シロマタさんは賛同するようにニャ~と鳴きました。




