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76 対雷虎戦術

「これからこのパーティーで雷虎を倒しに行くのだけど、あなたたちはどんな戦い方ができるの?」

エリスはゾイル、タマキンに尋ねる。

「幻影魔法で敵を混乱させるニャ」

「雷虎がどんな戦い方をするかによるが、俺は剣で戦う。お前たちは?」

ゾイルは人間2人を値踏みするかのように観察する。

「私は炎の魔法を用いて遠距離で戦いますわ」

「私は神力を使った槍術です」

ゾイルは戦闘時の配置を考える。

「近接二名に遠距離二名。サタン様はどちらも可能か……」

バランスとしてはちょうどいいが、近接戦の二人には課題が残る。

サタンも同じ課題を感じていた。

「勇者とゾイルは、雷対策をしなければ切りつけるどころか近づくこともできないだろうな」

サタンは対策を思案する。

「雷虎に近づく方法なんですが、神力の保護で何とかならないでしょうか?」

勇者はサタンに提案する。

「確かに、神力は魔力に優位性があるが……ダメージをゼロにできるわけではないぞ?上級魔族ほどの魔力量の場合、多少の神力の保護を貫通するだろう。それにゾイルは神力扱えないし」

タマが尻尾を膨らませる。

「近づいた瞬間、丸焼けにゃ」

勇者は唇を噛む。

「じゃあ……どうすれば」

沈黙が落ちた。

サタンは視線を地面に落とし、草を指で弾いた。

一本の葉がふっと宙に舞い、数歩先で――弾けた。

ぱちり、と微かな火花。

勇者が目を見開く。

「……雷?」

「残滓だ」

サタンは草原の先、雷雲のかかる遠い山を見た。

「雷虎は体内で雷を生むだけではない。周囲の大気や物質に帯電させ、それも利用している。奴の周囲そのものが、雷の巣だ」

インドラから教えてもらった知識を共有する。

エリスがはっとする。

「膨大な自身の魔力を周囲にまき散らせ、その魔力が雷に変化しているのだわ……空間が導体になっている」

「そうだ。つまり雷虎から発する雷を防ぐだけでは足りないってことだ」

勇者が首を傾げる。

「防ぐ、じゃない?」

サタンの口元がわずかに歪む。

「逃がす」

彼は指を一本立てた。

「雷は“通る道”があるから対象を焼く。ならば、その対象を俺たちではなく別の場所へ流せばよい」

エリスが息を呑む。

「……避雷?」

「近いな」

サタンはゾイルを見た。

「お前の剣だ」

ゾイルの視線が上がる。

「……剣?」

「雷は最も通りやすいものへ向かう。ならば、意図的に“雷が落ちる道”を作る」

エリスが疑問を呈する。

「雷を受ける役を用意するの……?」

勇者の顔が青ざめる。

「ま、まさかゾイルさんに刀で受けろって……」

「違う」

サタンは首を振る。

「受けるのではない。“導く”んだ」

彼は地面に杖の先で円を描いた。

「先ほどのゾイルの斬撃――《界断》は、空間の境界を切る。ならば任意の雷の通り道も切れる」

ゾイルの目がわずかに細くなる。

「……雷の流れを、変えるのですね」

「そうだ。雷と我らの間の“導路”を断つ。周囲の雷は行き場を失い、別の場所へ落ちる」

勇者が息を呑む。

「そんなこと……できるの?」

ゾイルは少しだけ考え、短く答えた。

「……やってみる」

サタンは満足げに笑う。

「それでよい。勇者は神力で身体を守れ。完全ではないが、残滓程度なら耐える。エリスは帯電の魔力を観測し、雷が来る瞬間を告げろ」

タマが小さく鳴いた。

「タマは?」

サタンはちらりと見下ろす。

「……離れていろ」

「にゃっ」

風が強まる。

遠くで、低く雷が鳴った。

雷虎のいる山の方向の雲が、ゆっくりと黒く渦を巻き始めていた。



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